「侠気もタンクも、飾っておきたいカッコ良さ」SAND LAND Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
侠気もタンクも、飾っておきたいカッコ良さ
半分以上、キャラクターの本心や正体、そして筋書きの行く末が見えてしまっているのに、飽きるどころか、どんどんこの物語が好きになっていく…そんな感じでした。
原作は未読です。
◉悪魔よりワルい
人間より人間らしい悪魔が切った、「悪魔よりワルだなんてゆるされるとおもうか」と言う啖呵に、ワクワクし過ぎて困った。人が悪魔に変われば、悪魔より悪魔だ! と叫びながら、ベルゼブブとラオとシーフが人の心中の悪を潰していく快感。サタンに次ぐ高位の悪魔で、醜悪の象徴のはずのベルゼブブの名を与えられた少年が、真実と真実めいたものを見分けながら、飄々と水を巡る戦いを制していく。
展開としては、ゼウ大将軍が人々の持つ全ての悪を一身に背負って、悪らしい粘着力を見せるも、敗北を喫してしまう。国王や国王軍の悪い心も、大将軍が持っていってくれた形だった。
ただ、闇のパワーを吸い込んだ割には、ベゼルブブの変身に、やや迫力が感じられず、ここは心底、虫人間にトドメを刺されないよう、祈ってしまった。
◉アレ将軍の一瞬の沈黙
タンクが戦闘不能になりました、兵士は全員無事ですと報告を受けた時に、アレ将軍が見せた一瞬の沈黙。ラオの本心を知った、アレの戸惑いと安堵に、私の気持ちも温かく緩みました。いいんだ、何も言わなくていい…と言う、私にとっては昭和っぽい、このシーンにシンプルに感涙。
ラオの侠気と行動原理はもちろんですが、アレ将軍の決心がケレン味なく、素敵だった。
ラオと妻のセクシーテリアのミスマッチが、優しい笑いを誘ってくれて、そこも最高でした。亡くなってしまったのが、悲しい。
乾き切った世界に風穴を開けるきっかけになった、ウォーターフィンチが宝石のように美しく見えました。