「鳥山明の世界観と、アニメーション制作側の創意工夫、そして技術的な進化が見事に噛み合った一作」SAND LAND yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
鳥山明の世界観と、アニメーション制作側の創意工夫、そして技術的な進化が見事に噛み合った一作
鳥山明作品の作品の中でも、「ドラゴンボール」ほどの知名度はなくても、凝縮された世界観が根強い人気を誇る原作マンガの映画化です。
砂漠に覆われたポストアポカリプス的世界と、背景説明を極力省いた展開など、色々な面でドライな印象を受けますが、キャラクター造形はもちろん明確かつ魅力的な上、連続したアクション(その上武器描写の緻密さがすばらしい)でストーリーを語る姿勢の一貫性が序盤からひしひしと伝わり、物語の細部がわからないという置いてけぼり感をほとんど意識することなく作品世界に没入できます。
原作は全一巻ですが、劇場公開作品としての時間に収める上で、漫画の表現手法をアニメーション映画に組み替える必要があったようで、同じ場面でも原作と本作で敢えて異なった描き方をしている箇所があるそうです。横嶋監督がどのように手を入れたのか、それを探すのも本作の一つの楽しみ方ですね。
鳥山明監督の平面に描かれた絵が立体感を持って動き回る、というだけでもなかなかの感動がありますが、その実現には近年の3DCGアニメーションの飛躍的な技術発展が下支えしていることは間違いありません。『アバター』のようにバリバリにリアルな世界を見せてくれる3DCGももちろん素晴らしいですが、本作や『THE FIRST SLAM DUNK』(2022)のように、作者の手触りを感じられるような表現手法もまた、得難い鑑賞体験をもたらしてくれるので、この方向でのさらなる技術的な進化が楽しみです!
コメントする