劇場公開日 2023年8月18日

「アニメでなければ描けぬ世界があるのだ」SAND LAND たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アニメでなければ描けぬ世界があるのだ

2023年9月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

幸せ

しばらく屋外にいると黒焦げになる太陽ギラギラ紫外線のまじでヤバイ世界が到来してしまった昨今「渇水」もしかりだったが、あまりにも時勢を得て公開された今作は鳥山明大先生の2000年のジャンプ連載作品だというのだからその先見の明は恐るべし。というか手塚治虫もそうだけれど鳥山明は間違いなく2周目か3周目(ブラッシュアップライフで言うところの)であろう。というのはこの作品が大量破壊兵器保持を理由に米国が一方的に仕掛けた「イラク戦争」(2003年)を明らかに諷刺しているからである。人類は悪魔よりワルなんだからゆるされるわけがない。血湧き肉躍るドラマの基本要素が喧嘩・対戦・殴り合い・暴力であることは紛れもない事実で、戦争による大規模な殺戮合戦はゆるされなくても主人公のベルゼブブが悪い奴らを相手に暴れると「やったれ~!ボコボコにしたれ~!」という感情が湧いてきて観客にカタルシスをもたらす。戦いに大義があるかどうかは、勝者の一方的な言い草であってほぼ勝てば官軍負ければ賊軍となる習わし。独特の丸みを帯びたメカ造形が可愛らしく、戦車の対決シーンが良い。スイマーズという脇役設定も鳥山ワールドならではで、カメラが人物を中心にぐるりと回りこむカットがグッとくる。

たあちゃん