映画 窓ぎわのトットちゃんのレビュー・感想・評価
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戦前〜終戦の雰囲気が丁寧に描かれた傑作!
言わずと知れた黒柳徹子氏の同名小説のアニメ化作品ですが、鑑賞前は若干否定的だった。
・ドラマや映画(実写)で幾度も映像化されている。なぜ今更…?
・ポスターなどで見たトットちゃんのキャラが可愛らしすぎて時代設定にそぐわないと思った。
・主人公の声優が子役(良い場合もあるが、失敗も多い)
などが主な理由だったが、公開後に良い評判が多く、ならばと正月休みに映画館へ。
観終わってみれば、当初の懸念点は全て杞憂で、非常に丁寧につくられた良質なアニメ映画だった。
戦前〜終戦までの東京郊外の風景・風俗が非常に丁寧に描かれている。
背景の美術に嘘がないので物語に没入できることが素晴らしい。
また、数箇所ある感情やイマジネーションを描いたシークエンスがそれぞれ作画担当が違って競う様に描かれ、それぞれ素晴らしかった。個人的にはトットと泰明がプールに入るエピソードの、鉛筆のタッチで描かれた二人が空に舞い上がるシーンが良かった。
その簡略化されたり、デフォルメされたアニメ表現は、本編の背景に至るまで緻密に描かれた世界があるからこそ最大の効果を生んでいる。
そのアプローチは手書きアニメでしか表現し得ないものだ。
なんとなく観るのを躊躇している方には一言「観るべき!」
本当によい子
2024年初泣きでした。信じられないくらい大泣きしました。
メインキャラクターたちを観てるだけでも戦争がいかに当時の家庭に、子供達に影響を与えていたかは分かるのですが、それだけじゃないディテールが本当に丁寧に描かれていました。
物語もとても素晴らしく、そのメインストリームの方でも涙腺決壊させられっぱなしでしたが、確かに「生きていた」ということを総じて刻みつけていました。「生きること」に貪欲でなければいけないのかもしれないと感じました。
長く生きているからこその、伝えなければならないこと、伝えられることがあるという思いが映画という形になったこと。多くの人に伝えられる形として残ったことに感動しました。
トットちゃんの周りの大人が素敵です
窓際のトットちゃん
誰もが耳ししたことがあるだろうし、原作は多くの人に愛されている黒柳徹子さんによるご自身の幼少期の物語。
私はその書籍は未読でしたが、映画化は初めてとのことでとても気になりました。
トットちゃんはかなり突飛で変わった子。好奇心旺盛で目まぐるしい。しばしば周りを混乱に巻き込み、みんなから困った子と言われる。
そのため前の学校を辞めることになり新しい学校に転校することに。
新しい学校のトモエ学園の小林校長先生はすごく優しく、子どもたちの個性を尊重し、自主性を育てる先生。
きっと他の生徒たちも前の学校では馴染めなかった子どもたちで、トモエ学園では皆が生き生きしている。
トットちゃんの突拍子もない取り止めの無い話も全部受け止めて
ちょっと悲しげに「みんな私のこと困った子って言うの」
と言うトットちゃんに、
「君は本当はいい子なんだよ」と小林先生。すごく温かみのある優しい言葉で、トットちゃんを安心させる。
トットちゃんのパパとママもそんな天真爛漫なトットちゃんを優しく見守っていて、だからなお素直で個性あふれ、のびのびとしてる様子。
お友達のやすあきちゃんとはとてもいい関係を築けてたけど、亡くなってしまって残念でしたね。そんな葛藤も後のトットちゃんの成長を促すきっかけとなったのでしょう。
最後のお別れの時に、校長先生がトットちゃんを抱きしめて「君は本当にいい子だね」と言った時、変わらぬその優しさに包まれました。
PERFECT DAYSを観たあとだったのですが、役所さんて、声だけでも素晴らしい演技なのだなと思いました。
学校とは
おおらかさで包むための執念
大人だって泣くんだよ
人の温かさ、戦争の罪深さを感じられる
トットちゃんの周囲の人間を明るい気持ちにさせる天真爛漫さと、映画全体の鮮やかで美しいアニメーションが、観ていて心が温まる映画。
トットちゃんの級友の泰明が、トットちゃんと出会う前は小児麻痺を理由に塞ぎ込みがちだったのが、彼女との出会いによって苦手なことにも挑戦するようになる様が感動する。苦手なりに一生懸命取り組む姿は見ている人達の心を動かす。そして勇気を出して何事にも挑戦することが、その人の世界を広げることになる。そのようなことをトットちゃんに教えられた。
戦争の罪深さもひしひしと伝わってくる。
空襲によって多くの建物が破壊されたり、疎開を強いられるのは、人々の大切な思い出まで引き裂くことになる。そのような大変な時代を生き抜いた人の映画なので、ストーリー全体に重みが感じられる。当時と比べて、戦争に怯える必要も食べる物の心配もしなくていい現代の豊かさに感謝しなければいけないと感じた。
個性の尊重を戦時中から教えられた
いっぱい泣けました
歳をとったせいか、たくさん泣けた。
昭和生まれのポクでも戦争のことは経験もなく、わからないが、小学校の雰囲気、電車の切符とか、お祭りのひよことかわかる気がした。
子供のとき、多摩川園前(多摩川園という遊園地があった、東横線の駅)で母親に駅員さんに切符をもらってもらった懐かしい思い出がよみがえった。
当時はまだ、緑の電車も走っていて、扇風機しかない車両が多かった。
お祭りのひよこもいとこが買って、大きくなってにわとりになったけど、ピンクにぬられたひよこだった。
子供のころはとっとちゃんのような楽しい毎日を過ごしてたことを思い出して、涙が溢れてきた。
ただ、僕は戦争のない、食事に苦しまない、友人の死も経験してない幸せな時代を生きてきたことだったんだとつくづく思った。
となりの小学生が4,5人できていた子供たちはどう感じただろうか?
はだかでプールに入ったところで騒いでたけど、僕らの時代も裸はなかったかな?
小林先生みたいな先生
さあ なんでも話してごらん
話したいこと 全部
って言ってくれる先生に出会えて良かった
役所広司さんの声も強くて優しくて
こんな大人になれたら良いですね
ただ心がギュッてなるので
繰り返し観るのは大変かも
経済的豊さの重要性を確認する作品
黒柳徹子ファンとしては必見の作品です。
兵士や工場労働者を生産することが最重要であった昭和初期、戦前の社会。
黒柳徹子の持つ際立つ個性は邪魔者扱いされ、当時としては珍しいダイバーシティ教育の場であるトモエ学園に転校、戦争が激しくなり疎開する前までの学校生活が描かれます。
トモエ学園は、かなり裕福な家に生まれた、当時の社会でのつまはじきの子供たちが通う自由な校風の先進的学校でした。
黒柳徹子の家は演奏家の父、自宅に風呂のある洋館、朝食にパン。定期で電車通学です。
同級生もみな同じ様な生活レベルです。
当時の庶民は風呂は公衆浴場、洋食なんてごちそうです。電車で移動するなんて、お出かけの時ぐらいのものだったでしょう。
そして、社会が戦争に向かう流れの中、最近のコロナ渦と同じ様に非科学的なことも含めて強い同調圧力があったことも分かります(お気持ち最優先)。これじゃあ、個性や才能、ハンデを持つ人たちは存在を殺されてしまいますし、社会経済は壊されてしまいます。
一方、トモエ学園に通った生徒は、個性や才能を評価されて伸ばされ、障害があってもノーマライゼーションの精神で扱われたようです。そして、後々各方面で活躍したようです。
おそらく庶民にも当時の社会ではつまはじきに合う子供たちはたくさんいたでしょうが、彼らにはトモエ学園に通う財力や社会的機会は無く、個性や才能、障害への対応は握りつぶされたのだと思います。
社会が経済的に豊かになることや同調圧力を廃することを目指すべきなのは、まさにこのように個性や才能を発揮できるようにするためであり、仮に障害があってもその中で自ら幸せをつかもうと取り組めるようにすることなのだと改めて認識させられました。また、豊かになったら、その豊かさがそれらの実現の役に立っているかを確認する必要があるんだと思い至らされました。
お正月は役所広司だった
1/4の今年2度目の鑑賞映画は、トットちゃんでした。妻のリクエストで家族3人で観に行きました。
黒柳徹子さんの幼少期を描いているようですが、ちょっと個性的な、自分の興味を貫ける子が、戦前の日本でどう育ったのか、その境遇を垣間見る事ができました。
子供の可能性を信じ、大人の常識で縛り付けない両親や学校の先生たちに囲まれて様々な経験をさせてもらえたトットちゃんは、とても幸運だったと思います。
そんなトットちゃんだからこそ、麻痺の残る少年の良き理解者になれ、心を通わせられたのだと思います。少年が急逝されたシーンはとても悲しく思わず涙ぐんでしまいました。
疎開に行くシーンで映画が終わるので、いつかパート2も観てみたいです。
ところで校長先生役は役所広司さんでしたね。元旦に観たパーフェクトデイズで役所さんの演技力に感服したばかりだったのに、この校長先生役も素晴らしかった。今度はセリフもたくさんあるので、観所(聞きどころ)満載です!
ベストセラーには理由がある。映像作品としても素晴らしい。
リアルをアニメーション映画に
丁寧に練られた、少女の世界
久しぶりに、丁寧に心情表現を丁寧に描いていた作品を見れた気がした。
物語の前半に出てきた、徹子が興奮したことで、尋常小学校を辞めさせられるきっかけになったチンドン屋が物語最後で再び出てきたことで、徹子の心情の変化をより際立たせていた。
また、学校での授業のシーンなど音楽を用いて、徹子がリズムの世界に没頭していく様も、とても軽快に描かれている。
また、その描写自体、同級生の泰明ちゃんとの関係性を描く上でも、重要なファクターになっていた。
その泰明ちゃんとから、借りた本を読んで、父親が軍歌を演奏することを躊躇う流れも、またにくい。
泰明ちゃんとの関係が、父親にも響いていくのだから、脚本の構成自体が上手くできているのではと、圧巻だった。
ただ、欲を言えば、ただ、綺麗には心情を描いているが、徹子自身のキャラクターなり、何かもっと心に引っかかる何かが欲しいなとも思った。
その辺は、これからのこの監督の次回作に期待したいと思う。
やはりアニメーションは最強
どれだけ泣いたことか。泣かせる手法と言っては申し訳ないがドラえもんで経験を積んだ八鍬新之介監督は自身で言っている通り「せつなさを大事に」した演出でひよこ・出征兵・友だちの「死」という取り返しのつかない事象を「せつなさ」にそのまま結び付けて泣くしかない状況に追い込む。何といっても主役の大野りりあなが素晴らしい。子どもの声を子どもが演じる良さを最初に実感したのは「海のトリトン」の塩屋翼だが、当時彼は中学2年生であったのに対しりりあなは7歳のリアル小学生で後半は年上を演じていたわけだからそれはもう前代未聞の演技力であろう。動き始める列車の教室、プールの水中ダンス、山本くんとの雨に歌えば・・トットちゃんの妄想がミュージカルになるシーケンスがおそらくは発注したアニメプロダクションごとに画風が変わっておりそれぞれ個性的で楽しく成功している。やはりクライマックスの木登りエピソードが脚立を取りに行ったトットちゃんの脱線を含めて丸ごと丁寧に描写されていて秀逸。服を汚して帰ってきた山本君のお母さんの「困ったわね」という喜びが上手いこと描かれすぎていて憎い。大井町線の横の道を泣きながら走るトットちゃんと山本くんや兵隊とのカットバックも王道にして大胆繊細で見事。最強の映画たるアニメの巨匠がまた一人誕生した。
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