「むしろたたかう細胞」はたらく細胞 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
むしろたたかう細胞
原作(漫画)はよんでません。
細胞が擬人化されている時点ですでに恥ずかしいが日胡(芦田愛菜)が白血病になってしまうと情陸風の感涙演出をぶっこんでくるので見始めていたときから浮いていた鳥肌がピンコ立ちしてきた。観衆が恥ずかしくなってしまう映画コンペティションで入賞まちがいなしの共感性羞恥心映画。
ストーリーからみて細胞をキャラ化しつつも身体について理解をふかめ不摂生をやめて大切に生きようというメッセージがあるのはよくわかる。エンタメと健康意識の啓発を両立させた原作であることに違いないと思う。ただ漫画では暴れなくても、映画は諷喩をひっぱられると、どんな顔して見てりゃいいのという話になってくる。例えば突然お腹がごろごろして出そうになるエピソードは一瞬で全容がわかるネタだし一瞬なら面白いネタだが10分くらいひっぱるし、そのウンピネタを乗り越えたら今度は全細胞で泣かそうとしてきて、特に人間サイドの俳優は阿部サダヲと芦田愛菜なので、かなりグッとくる演技をかましてくる。結果「なんでこんな細胞擬人化のエクスキューズに泣かされなきゃならないのか」という気分になってくる。しかも三木聡の映画とちがってみんな目がぜんぜん笑っていない。エンタメには違いないにしても白血病からの生還を大真面目に語っているので鳥肌を立てたままどんな顔して見たらいいのかが解らない。
YouTubeの名作短編アニメに『糖尿病になる仕組み』とか『うんこが漏れる仕組み』というのがあるじゃないですか。あれをがっつり擬人化して2時間の映画にしてキングダム風の激アツ演出されてたらどう感じますか。悲愴音楽を流しながらのNK細胞役の仲里依紗や白血球役の佐藤健の殉職シーンがもろキングダムでいちばんキツかった。なにを見せられてんだろうなこれ。
骨髄移植の「すべての細胞を破壊する」というプロセスに着目し感動ドラマ化させたアイデアは素晴らしい。が、映画にするとやっぱり日本映画になるんだな。と思った。
ところが永野芽郁が映画に新しい意味と住処をもたらした。CMと芸能活動が全滅した彼女にNetFlixから出演の打診があったという報道があった折も折、はたらく細胞がNetflix放映され「男食ったくらいで大騒ぎしやがって、あたしゃネットフリックスで生きてやるわよ」というセリフは無かったにもかかわらず、まるでそんなセリフがあったかのようにランキング一位へ躍り出た結果、この映画への共感性羞恥心が嘘のように消えてしまった。のだった。