「他人事じゃない」はたらく細胞 jack023さんの映画レビュー(感想・評価)
他人事じゃない
原作大好きです。自分の身体の中で何が起こっているか、普通気にも留めないでしょう?そんなところへ光を当てた本作は学習まんがとしても優秀!ぜひ文科省推薦図書として全国の小中学校図書館に全巻並べて欲しい!
今回実写映画化されるにあたって、一体映画の尺にどこまで詰め込んでくるんだろうという点が非常に気がかりで、しかし監督はあの翔んで埼玉・武内監督!絶対飽きさせない一大エンターテインメント作品に仕上げてくるだろうと期待しかなかった。
そして待ちわびた封切り当日。予想もしてなかった人体内外同時ストーリー展開におったまげた。こりゃ期待以上じゃないか!各キャラもきっちり役にハマっているし、タケちゃんの振り切った白さといったら!
しかし本作の評価されるべき点はそこじゃない...後半で日胡ちゃんが白血病で倒れるあたりからの絶望感からの見事な回復っぷり!!!同様の血液疾患を持つ患者さんにとてつもなく大きな希望を与えるものなんですよ。
実はわたしは骨髄異形成症候群と言って、骨髄中の造血細胞の突然変異でまともな血液成分が作れなくなる病気と闘っています。あれだけワラワラ出てくる赤血球とか白血球とか血小板ちゃんが人並みの半分から1/3ぐらいになっています。貧血でフラフラしながら、感染症にかかったらおしまいと主治医に言われながら生活してます。完治するにはまさに骨髄移植しかなく、今移植しなければもって1年とか言われてます。
ところが骨髄移植って、白血球の型が合致しないと成果を得るのは難しいんですよ。2つある型は両親からそれぞれ受け継ぐので一番可能性高い実の兄弟でも確率1/4。親子になるともうほとんど合致しません。骨髄バンクでも合致するのは稀なので、見つかるまでずっと待っている方も多いんです。私も骨髄バンクにはゼロでした。
そして運良く型が合えば、あるいは半分でもいいそうですけど、まずは劇中でやったように一回自分の免疫システムを放射線当てて全滅させなければなりません。そして移植後は新しい造血細胞が定着して正常に血液成分を作れるようになるまで3,4ヶ月の間クリーンルーム内で過ごさなければなりません。
その間に移植した免疫システムが自分の体を攻撃するので、様々な症状に耐えなければなりません。ひどい場合はそれで亡くなったり、退院後もずっと苦しみ続けるケースもあります。日胡ちゃんのようにスッと退院したり元の生活に戻れる保証はないんです。
中には移植せずにずっと生き残る方もたまにいるそうですが、移植を待つ間に感染症などで亡くなったり、移植したことで亡くなるケースが2割ほどあると聞いて移植に踏み切るかどうか迷う方も多いそうです。加えて移植のドナーの方にも相当なリスクと負担がかかると聞いては血縁者に頼むのも躊躇してます。
できればこのあたりまでキッチリ描ききって欲しかったですけど、それじゃ本作のテーマからかけ離れたものになってしまいますからね。無事元気になって良かったね、で幕というのが正解です。
ぜひ続編でもっともっと身体内外のドラマを描いて欲しいです。そして観られた方が献血や骨髄バンク登録をしてくださることを切にお願いします。