「細胞たちの働く姿に胸が熱くなる」はたらく細胞 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
細胞たちの働く姿に胸が熱くなる
体内の細胞の擬人化という突拍子もない設定を、実写映画としてちゃんと成立させているところに、思わず感動してしまった。
赤血球の働きぶりには、ドジな新人が、地味で単調な自分の仕事に意義とやりがいを見い出し、プロとして成長していく「お仕事ムービー」としての楽しさがあるし、白血球たちの活躍には、力を合わせて悪の侵略者を撃退する「戦隊ヒーローもの」のような面白さがある。特に、ワイヤーワークをふんだんに取り入れた戦闘シーンは、アクション映画との本気度が感じられて見応えがあった。
また、敵を含めたすべての細胞のキャラがしっかりと立っていて、ラスボスの白血病細胞にさえ感情移入ができてしまうところには、物語としての秀逸さも感じられる。
人間世界のドラマにしても、出来の良い娘と不摂生な父親の日常生活と、娘の初恋や難病との闘いといったエピソードが、体内の細菌たちの物語とうまく噛み合っていて、相乗効果を上げていたように思う。
ラストの、化学療法や放射線療法によって血液中のすべての細胞が死滅するという展開には驚かされたが、そんな絶望的な状況の中でも、ただひたすらに自らの使命を果たそうとする細胞たちの姿には胸が熱くなった。
爆撃後の荒廃を思わせる体内の場面には、戦争映画のような悲惨さや終末感が漂うが、それだけに、骨髄移植が成功して再生していく世界は希望に満ちているし、回復できたのは「頑張った体のおかげ」という医者の言葉が、実感を伴って心に響いてくるのである。
映画を観終わった後に、自分の体の中で黙々と働いてくれている37兆個の細胞に、改めて感謝したくなった。