劇場公開日 2023年5月19日

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「多ストレス社会が排他(白人至上)主義を加速させる」ソフト/クワイエット Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0多ストレス社会が排他(白人至上)主義を加速させる

2024年5月17日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

笑える

悲しい

怖い

『ソフト/クワイエット』というタイトルは、
作中、女性同士の討論の中で語られたキーワードだ。

白人至上主義の主張を声高に叫ぶのではなく、
「柔らかく、静かに」大衆の中に浸透させようと、主人公は語る。
ストーリーは真逆に進んでしまうのだが。。。

まさに、時代が要請した映画と言える。

トランプ氏を支持する人々は、きっとこのような皆さんなのでしょうね。
社会全体を覆う ”もやもや” は、富の偏りや就労機会などの不公平感だけなのだろうか?

自称「先進国」の住民は、高度に複雑化した社会の中で精神的にも経済的にも、とてつもない負担を強いられている。
朝は、信号だらけの道路を小走りに駅に向かい、
昼は、地下鉄網を乗りこなして得意先まわり、
夜は、エアコンのきいた部屋でNetflixを見る。

当然、社会的なコストをみんなで負担している。
いや、意識しないところで、ちゃんとワリカン払いさせられている。
それを賄うための労働も、かなりハードだ。

◆睡眠時間が不足し、
◆心の安らぎが不足し、
◆家族の触れ合いが不足している。

本作の幕開けは、
主役の幼稚園教師エミリー(演:ステファニー・エステス)がトイレで妊娠検査薬を使用する場面から始まる。
「子供が欲しい!」、心の叫びが聴こえてくるようだ。

本作で女優たちが演じている「白人至上主義者」は、
思想的な底は浅く、というより、思想的な裏付けは皆無で、「ただの逆恨み」レベルだ。

◆実兄がアジア系女性をレイプし服役中
◆職場の後輩(移民系)が先に昇進
◆売上低迷は不法移民の万引きが原因(と思いたい)
◆本人自身、白人なのか疑問だが性格的に好戦的

全員が自己評価が高く、承認欲求が強い。
お互いにお世辞を言い合いつつも、マウントを取り合うような会話が実に面白い。

登場人物全員が、かなりのフラストレーションを抱えて生きている。
それをすべて、身近な有色人種の存在に結びつけようとする。

「黒人の子供には、自分の親が叱られているところを見せたほうが良いわ」

「そうね、そうしたほうが良いわね」

のシーンあたりは、出演者の自然な演技に感銘を受けた。

白人至上主義の本質は、
先進国であるがゆえのイライラなんだな(笑)。

あと、もうひとつ。
本作最大?のウリ、全編ワンショット。

どうなのかな…
全編ワンショットを貫く必要性はあったのかな?
それに拘ったために、後半の間延び〜幕切れにせざるを得なかったのなら、大変残念だ。

切り口◎、展開〜オチ✕
前半☆4.0
後半☆2.0

Haihai