「憎しみを募らせた末路。」ソフト/クワイエット レントさんの映画レビュー(感想・評価)
憎しみを募らせた末路。
アメリカでは年々ヘイトクライムの数が増加していて、そんな中で公開された実にタイムリーな作品。
冒頭から漂う不穏な空気。一見普通の女性たちが開いた会合はまるでママ友たちのお茶会のよう。しかし、メンバーの一人エミリーが持ち込んだ手作りのパイには鉤十字のマークが。そして参加者から語られるのは有色人種や移民へのあからさまな憎悪感情の数々。
彼女らは一様に不満を抱えていた。しかしそれは移民や有色人種のせいではない。たしかに移民政策で経済的に苦しくなったとしてもそれは選挙の結果によるもの。文句があれば投票行動で示せばいい。移民に怒りをぶつけるのは筋違いだ。
コロンビア人に仕事のポストを奪われたのを逆差別だというのも然り。自分の努力が足りなかったんだという考えは彼女らには浮かばない。
すべてがそんな調子で、自分たちの人生がままならないのはすべて有色人種のせいだという思考回路になってしまっている。
たしかに思考停止してしまえば楽かもしれない。悔しさをばねにして努力もせずなんでも人のせいにしていればいいのだから。でもそんな調子で憎しみを募らせて生きていったところで幸せになれるとは到底思えない。
そして彼女らは自らの心の中で培った憎悪感情がもとで人生を破滅させることとなる。トラブルになったアジア人女性の家に忍び込んで悪さをしようと言い出す彼女たち、この時点でその結末が手に取るようにわかる。
ただでさえ憎悪感情に支配されて論理的思考力が働かなくなった人間が徒党を組むと始末に負えない。一人ではできない大胆な行動も集団になれば途端に気が強くなり容易く出来てしまう。単体ではおとなしいバッタやイナゴが群れになったとたん体色が変化して獰猛になり農作物を荒らしまくるように。
確かに人間はもともと群れることでお互いを守り繫栄してきた。群れることは人間の本能なのかもしれない。ただ、同じ思想を持った者同士が集まり良い方向に行けばいいが彼女らのように最悪の方向に向かうことがあるのも歴史的に過去の事件などを見ていれば明らかだ。
結局、敵を見つけては攻撃するみたいな生き方は不毛だ。憎しみを抱き続けて生きるなんてけして楽しくない。ただ、為政者の中には仮想敵を作っては分断を煽り自分への支持につなげる者も多い。古くはヒットラーや最近ではトランプなど。
トランプなんかはヘイトクライムの発信源だ。アジアンヘイトは彼の発言きっかけだから。
頭を使わず常に感情的にしか生きられないならほんとにバッタと変わらない。為政者に利用されるのがオチだ。
「彼」自身もとんでもないのですが、それをホワイトハウスに送り込む国民に驚くばかりです。
自分のレビューにも書いたのですが、一定数、この映画のような人々はいるのだと思うと、とても怖いですね。