「理論的にあり得ないを理論的に実践してくれるSF映画」65 シックスティ・ファイブ 0UTSIDER109さんの映画レビュー(感想・評価)
理論的にあり得ないを理論的に実践してくれるSF映画
NASAではスタッフの技能試験に映画アルマゲドンを観ながら科学的にあり得ない点を指摘させるというテストをおこなっているらしい。結果、現在までに見つかった科学的矛盾点の数は1分にひとつの割合で見つかっているそうだ。本作をその理論で読み解くと、おそらく1分に10個の割合で科学的ツッコミが入ること間違いない、まさに王道のハリウッド的娯楽SF映画というにふさわしい作品である。
本作を語る上で忘れてはならないのは、実はこの作品「役者が4人」しか出ていないということ。羅生門よりも少ないこのキャストでどうして映画が作れるのか。理由は簡単で本作の主人公は人ではなく「恐竜」こそが映画の主役だということである。ジュラシックパークを彷彿とさせながら、どこかSFチックにアレンジされた恐竜たちは文字通り「主役を喰う」勢いでスクリーン上で暴れ回ってくれる。主役のアダム・ドライバーは、父と恩師を殺める悩める思春期の役柄から大きく成長し、本作では愛する家族と任務の間で揺れる宇宙船の運転手を演じている。そんな彼の相棒を演じる少女がまたいい芝居をしていて、その関係はさながらLAST OF USを彷彿とさせてくれる。まさにハリウッド的ディストピアの世界でサバイバルをする父と娘の関係である。
「The CORE」「ムーン・フォール」「デイ・アフター・トゥモロー」など、ハリウッドには昔から続く「理論的にあり得ないを理論的に実践してくれるSF映画」という一種のカルト的人気を持つジャンルが存在している。本作はそのDNAを忠実に引き継いだ作品と言えるだろう。「ああ、めんどくせえこと考えずに、なんか面白い映画みたいな」そう思っている人がいるなら間違いなくお勧めできる映画と言える。