「SF好きには物足りないが、アトラクション感覚で楽しむべきサバイバルアドベンチャー」65 シックスティ・ファイブ 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
SF好きには物足りないが、アトラクション感覚で楽しむべきサバイバルアドベンチャー
一応SF映画のような装いだが、科学的な正確さや起こり得る確率など、細かいことを気にしていると話に入っていけない。大らかな心でハラハラドキドキを楽しむのが本作にふさわしい鑑賞態度だろう。
今から6500万年前の太陽系から遠く離れた別の星系にある、地球によく似た環境の惑星ソマリス。そこには主人公のミルズ(アダム・ドライバー)をはじめ人間そっくりの知的生命体がいて、なぜか英語を話していて、地球によく似た文明があって(でも科学技術は半世紀分くらい進んでいそう)、ミルズが乗り込んだ星間探査ミッションの宇宙船が事故で進路をそれてしまい想定外の惑星に墜落、そこはミルズが普通に呼吸できる大気がある地球だった……。って、あまりに都合の良すぎる設定とあり得なさすぎる導入部分にクラクラし、それぞれが起こり得る確率を掛け合わせたらそれこそ天文学的確率だろうと突っ込みたくもなるが、気にせず楽しんだほうが有意義な時間になるというもの。
「クワイエット・プレイス」の脚本家スコット・ベック&ブライアン・ウッズが監督・脚本を務めた本作は、「クワイエット~」に通じる音も効果的に使った驚かせ方で、アミューズメントパークのスリリングなアトラクションのように刺激をもたらしてくれる。墜落事故からたった2人生き残ったミルズとコアという名の少女に襲いかかる恐竜たちは、白亜紀の化石から忠実に復元された姿(またそれに基づいて造形された従来の映画などに出てきた恐竜たち)とは微妙に異なり、オリジナリティがあって怖さも増した印象だ。ミルズと言葉がほとんど通じない少女コアのサバイバル能力が笑っちゃうほど高いのはご愛敬。本編93分という潔さもいい。
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