「大人になるとは、答え合わせをすること」片思い世界 KaMiさんの映画レビュー(感想・評価)
大人になるとは、答え合わせをすること
古い民家に共同生活する3人の女性。学園ドラマにお仕事ドラマ、そして恋愛を絡めたお話が始まるかと思ったら、そういうことでしたか…!
死んだ人のゴーストがこの世にとどまる映画はたくさんあるだろうが、子どもから成長し、大人になったタイミングの女性を描くのは新しいと思った。
子どものままだと可哀そうな感じが強くなるのに対して、20代の女性だし、そしてこの役者さんたちのことだし。幽霊の特権をいかして職場へ、キャンパスへ忍び込んでいく様子が、生命力豊かにテンポよく描かれている。
クラシックのコンサートで感情を爆発させる(そして観客は映画の仕掛けに気付く)ところは鮮やかだし、3人が一緒に幽霊映画を見て本物との違いを指摘しあうのは微笑ましい。そのぶん、この人たちがしょせん幽霊でしかない切なさもひたひたとしのびよってくる。
思うに、この年代の若者は子どものころの疑問に答えをいったん出すものだと思う。この家に生まれてきてよかったのか、自分にどの程度の才能があったのか。この世とは別の世界があるのか、など。きっと3人も、この世界と自分の関係を確かめるまでは生きていたかったのだ。
幽霊にも関わらず着飾り、律儀にキャンパスやオフィスに出かける本当の意味がここにあるように思え、泣けてくる。
その意味で、ラストは同じような日常が続くのもいいのだが、3人に何らかの「区切り」を与えてあげてもよかったのかなと感じた。ファンタジーであれば幽霊として特殊な能力をもつようなアイディアもほしかった気もする。
蛇足だが、この種の不幸を描くのに無差別殺傷か震災が決まりのようになっているのは残念。この描き方ならパターンの範囲内にとどまってしまう。ネットでみかける話題以外にも、想像を広げないといけないことはいろいろあるはず。広瀬すずさんについては生い立ちも示唆されていたが、もっと3人の個性を掘り下げる方向もあったのではないだろうか。
何かパターン破りに苦心した節も見えますね。自分の葬儀を見たとか見ないとか、遺族の消息を追わないとか。視えたらどうしよう?が最初あったけど、もう慣れた!だったんですかね。
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