「かつてない開放感。期待を超えた作品」片思い世界 みる子さんの映画レビュー(感想・評価)
かつてない開放感。期待を超えた作品
共同生活は楽しそうで、インテリアも可愛くて、三人とも美少女で(年齢的には美女だが、もう少女というしかない!仲良し同士が楽しく暮らせば、こどもに還るはずだから)。それをただ見ているだけでも十分癒やされるのだが、しっかりとしたストーリーがある。
売れっ子なだけではなく、横浜流星(べらぼうの蔦重とは似ても似つかないおとなしい青年っぷりに感嘆!)を含めた実力を備えた若手4人の競演。
しかし、こんな設定は予想外だった。可愛くて、周囲にチヤホヤされてきたであろう旬の女優さん3人が、誰からも見えない存在になってしまうとは!
私は広瀬すず演じる美咲が会社の飲み会で隣の人に無視されるところまで気づかなかった。
坂元裕二さんの脚本に惹かれて、これまでずっと見てきた。ラブストーリーでも社会性を散りばめた辛口が嘘のない感じで快い。
今回は賛否両論分かれると聞いて、失望するおそれを試すように見たが、しなかった。やはり見てよかった。
現実の児童連続殺傷事件への怒りを隠しきれない構成。許すことは絶対にできないという強烈なメッセージに震えた。犯人の手記を出す出版社への疑問も。
そして、犯人に更生はできなかったことをこんなにリアルに描かれると、日常に怪物が潜む危うさに身の毛がよだつ。
一番幼かったさくらは、なぜ殺されたか、理不尽の解明に立ち向かおうとするが、犯人に向き合うと、尻もちをつく。怪物と「幽霊」の対峙。緊張した。さくらは何を悟ったのか。
「それでも、生きてゆく」でも描かれた殺人犯の闇。理解も解決も描かれない。偶然の?交通事故で重体になった犯人の結末は明かされない。
反動で際立つのが被害者たちの無念とその親や友人の深い鎮魂の思い。生命のレイヤーがあったら、残した思いがつながれる日が来るかどうか。壮大な実験。ラジオの男の発言の真偽はわからず、3人は新たな居場所を求める。
今まで考えてこなかった世界の扉をまた開けてもらったような開放感に包まれ、平和の象徴のような合唱シーンに、ただ心が洗われていった。
何があってもこっちにいたい。いい人間でいたい。たとえレイヤーが 変わっても同じ美しさを感じていたい。