「2度の「嫌な予感」が的中せずに、ホッとさせられる」片思い世界 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
2度の「嫌な予感」が的中せずに、ホッとさせられる
主人公たちの姿や声に、周囲の人たちが反応しない様子から、その正体は、比較的早い時期に想像できてしまう。
もしも、それを最後まで隠し通して、「シックス・センス」的なサプライズを狙っているのなら、完全な失敗作だなと思っていると、序盤の段階でちゃんと「タネ明かし」がされたので、少しホッとしてしまった。
むしろ、死後の世界を、未発見の素粒子でできたマルチバースのようなものと設定しているところは、斬新で面白い。
たとえ、他の人間には気付いてもらえなくても、3人で支え合いながら楽しく「生きる」彼女たちの姿は、見ているだけで幸せな気分になる。特に、彼女たちが、ホラー映画を観ながら、「本当の幽霊は、こんなんじゃない」と文句を言うシーンには、ニヤリとしてしまった。
その一方で、幼なじみの青年や、母親に出会っても、思いを伝えられず、ただ見つめることしかできない彼女たちの姿には、どうしようもない寂しさが感じられて切なくなる。
ところが、中盤で、生きている人間と思いを通じ合わせることができれば、死者も生き返ることができるみたいな話になると、「荒唐無稽なファンタジーになってしまうのか?」と、またもや不安になる。
さらに、児童殺傷事件の被害者の母親が、単独で犯人と会って、彼を非難するという行為は、余りにも非現実的で無謀に思えるし、犯人のキャラクターは、ただのサイコパスで、何の深みも感じられないし、犯人が母親を殺そうとした挙げ句に車にはねられるという顛末も、何を言いたいのかが分からない。
結局、死者が蘇るというトンデモな展開にはならずに、またもやホッとしたのだが、それだったら、ラジオ放送やら、出所した犯人やらのエピソードは、そっくりそのまま無い方が良かったように思う。それよりも、杉咲花だけでなく、広瀬すずや清原果耶の「残された家族」のことが気になってしまった。
いずれにしても、大切な人を亡くしたら、誰もが、その人について、「死んだ後も、元気で、幸せに暮らし続けてほしい」と願うものだろう。失われたのが幼い命であるならば、なおさらである。
ラストの、合唱コンクールのシーンでは、美しい楽曲と歌声によって、そんな願いが叶ったような感覚にさせられて、思わず目頭が熱くなった。
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