「悲しく切なく温かい物語」片思い世界 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
悲しく切なく温かい物語
実力派若手女優3人が主演を務めるとあって注目していた本作。けっこう期待していたのですが、公開2日目の朝の時点での評価はなんと3.4!ということでハードルを下げて鑑賞してきたのですが、そんな低評価を跳ねのけるような素敵な作品で大満足でした。
ストーリーは、12年もの間、東京の古い一軒家で本当の姉妹のように仲よく楽しく一緒に暮らし、それぞれ仕事や学業やバイトに精を出していた、相楽美咲、片石優花、阿澄さくらの3人は、大きな秘密とそれに伴う忘れられない強い思いを抱えているのだが、それを相手に伝えられないもどかしさに悩み、その思いと向き合い、折り合いをつけていく姿を描くというもの。
冒頭から、仲はいいのだけれど何か不自然な人物像や生活風景に違和感を覚えます。ほどなくその理由がわかって、ここまでの違和感がスッキリ解消します。と同時に、この切なくも優しい世界になんとなく癒されます。3人の屈託のない笑顔、家族として楽しく暮らす生活ぶり、ちょっとベタに振りすぎている面はありますが、3人の特殊な状況を思うとなんだか微笑ましくもあります。
しかし、そんな3人にもそれぞれに抱える思いがあり、それがそれぞれの物語を生み出していきます。毎朝のバスの中で見かけた昔の友達、久しぶりに再会した母親、忘れようとしても忘れられない憎い男など、彼女たちの”片思い”は、恋愛のそれとばかりは限らず、届かぬ一方通行の思いでもあります。
それは、相手にとっても同じだったのではないかと思います。突然いなくなった彼女たちに対して、周囲の人たちも決して消えることのない思いを抱き、それを伝える術もなく、苦しんでいたことでしょう。そんな相手の思いを知ったことで、彼女たちの思いは昇華したのではないでしょうか。それぞれの相手とわかり合えたとは言えないまでも、その思いは伝わったのではないかと思います。
会えないから、いなくなったからといって、その思いがなくなったわけではありません。私ももう会えない家族や友達を思い出し、彼らもきっとどこかで…と思うと、心が少し温かくなるのを感じます。悲しく切ないストーリーではありますが、3人の明るい未来を感じさせるラストに心癒されます。
主演は、広瀬すずさん、杉咲花さん、清原果耶さんで、まるで本物の姉妹を思わせるような演技はさすがの一言です。脇を固めるのは、横浜流星さん、小野花梨さん、伊藤空さん、田口トモロヲさん、西田尚美さん、moonridersさんら。
今回は上映後に舞台挨拶中継があり、主演の3人に加えて、土井監督と脚本の坂元裕二さんが登壇されました。主演の3人のトークからは、真摯に役に向き合い、丁寧に演じたことが伝わってきました。また、坂元さんの「3人で一人みたいなところがある」という言葉にハッとしました。異性への思い、家族への思い、元の生活に戻りたいという思い、このまま3人で暮らしたいという思い、消えることのない恨みや憎しみ等、きっと3人の中に全てあったことだと思います。あと、杉咲花さんの「その人の思いはその人にしかわからない。勝手に想像してもそれが正しいとは限らない。」という言葉が印象的でした。全くそのとおりです。だからこそ、“伝え合える世界”にいる私たちは、誤解のないように伝えないといけないし、相手の思いにも耳を傾けないといけないですよね。
コメントありがとうございます。
あの位の子だとやはり親を求めるでしょうからね、広瀬さん以外。死者も成長するんだ・・となればいつか消滅する日も?仏教だと他の生き物に転生したりするんでしょうが、物理学的にはまた別の世界に移って視えなくなるんですかね。
共感ありがとうございます。
死んだからといって生前の感覚とほぼ変わらない、立ってる場所が違っただけみたいな表現が面白かったですね。親族や知人からはあえて距離をとってたんですかね。