「色彩と映像の繊細な美しさが心に迫る作品です」夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく ちゃいさんの映画レビュー(感想・評価)
色彩と映像の繊細な美しさが心に迫る作品です
わたしは主人公青磁を演じるJO1白岩瑠姫くんのファンだったので、映画を見る前に原作を読むか迷いましたが、結局、読んでから観ました。
マスクを手放せない優等生の茜と、絵を描くことを愛する自由奔放な青磁が出会い、ほんとうの自分をお互いに見つけ出す青春ストーリー。「マスク」が物語の重要な意味を持つ小道具として表現されるので、てっきりコロナ禍の純愛をテーマにした映画なのかと思ったら、原作自体はコロナ禍の前に書かれた作品だったと知ってほんとうに驚きました。
読むだけで色鮮やかな空の色が目に浮かぶような丁寧で繊細な文章で綴られた小説なのですが、映画では、その世界観を大切にスクリーンならではの映像美を活かした作品として昇華されていました。ふたりの恋愛がベースとしたストーリーでは?あるけれど、映画を通して主に描かれているのはむしろ、高校生だからこその悩み、人間関係の難しさ、学校や家庭での生きづらさや疎外感、閉塞感のほうなのかなと思いました。アイドルを起用した映画ではそのアイドルが主演することありきで撮られた作品も多いと思いますが(そのような需要ももちろんある)、夜きみはそうではないと感じました。
感動したシーンはいくつかあるのですが、わたしが一番泣いたのは、青磁と絵の具を使って屋上に色を付けて夜明けを迎えた茜が自宅に戻ったときに、心配した義理の父を初めて「お父さん」と呼ぶシーンです。家族の中で疎外感を感じていた茜が、本気で怒鳴る父に本心から「お父さん」「ごめんなさい」と謝る茜、そして抱きしめる父と母。他人であるはずの青磁と心を通わせることで、家族の繋がりを取り戻したんだと思いました。映画でのラストシーンは原作の描き方とすこしちがうと想いましたが、それはそれで良かったです、、茜の笑顔をひっくるめてひとつの絵画として完結していたので。
主演ふたりの演技も素晴らしかったのですが、茜の父親役の吉田ウーロン太さん、親友沙耶香役である箭内夢菜さんと美術の先生役の上杉柊平さんには個人的助演男優&女優賞を差しあげたいです。
このような価値ある素敵な作品に白岩瑠姫くんが出演して、その主題歌をJO1にお任せいただけたことを心から感謝いたします。酒井監督、原作者の汐見先生、スタッフとキャストのみなさま、ほんとうにありがとうございました。青磁と茜に何度も会いに行きたいと思います。