「クソッタレな貴方へ」To Leslie トゥ・レスリー ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
クソッタレな貴方へ
アカデミー賞ノミネート作品の殆どが日本に上陸し、今作も遅くはなったものの無事に日本へ。アカデミー賞との相性はすこぶる悪いですが、今作はいかほどに。
心にぶっ刺さるものがありました。主人公の難のある性格をアンドレア・ライズボローさんが見事に演じきり、自ら落ちた絶望から何人もの人の手を借りて立ち直り、特大ではないけれど、小さな幸せを手に入れるまでをきれいに描き切っていたなと思いました。
シングルマザーのレスリーが19万ドルという大金のほとんどを酒に使い果たしアル中になり、身近な人から家族にまで見放されるという自業自得ですが、辛く引きずる展開から物語は紡がれていきます。
レスリーが底抜けのないクズで、周りの人達が優しいというのもあってかそのクズさがより一層際立っていました。感謝の言葉は言わないし、嘘はつきまくるし、悪態はつきまくるしで、後半に突入するまでの好感度は地を這っていたと思います。
後半になってもその好感度は上がる事はありませんでしたが、周りの人の優しさに少しだけ感謝し出して、人としての成長をほんの少しですが感じ取れたのが良かったです。
ラストシーンでの自身の店の開業、息子との再会、バックに香る煙の匂い、小さい場面なのにこの作品の多くが詰まっていたと思います。
今作の功績は間違いなくアンドレア・ライズボローさんの熱演でした。「ルイス・ウェイン」の姉妹役で見た事はありましたが、今作での表情や仕草、行動などが本当にクズな母親を体現していてとても良かったです。
周りの人たち人たちも呆れたり、見捨てたりはしつつも、どこかでレスリーの事を信じていて何度も手を差し伸べる様子も本当に良かったです。マーク・マロンさんの優しい表情、オーウェン・ディーグさんの葛藤に満ち満ちた表情、全役者の表情に惹かれるものがとても多かったです。
音楽もとても良くて、影を落とすストーリーとは真逆のとても明るい音楽たちが映画全体をグラデーションしてくれていました。
生きることの難しさ、生きることの大変さ、生きている上で遭遇してしまう苦難や葛藤、1人の女性の人生の人生の淵を追体験しながらも、少しだけ這い上がるため一歩進む力強い物語を観ることができました。導入の胸糞さとは全然違う爽やかな気分で劇場を出ることができました。こういう力強い作品がアカデミー賞のタイトルを
もぎ取って欲しいなと思うばかりです。
鑑賞日 6/29
鑑賞時間 11:30〜13:40
座席 E-12