「引き込まれる展開だが現実感に乏しい」法廷遊戯 夜さんの映画レビュー(感想・評価)
引き込まれる展開だが現実感に乏しい
鑑賞後にこの映画の感想は表現が難しいなと思いました。
美鈴の最後の笑いは印象的でしたが杉咲さんの演技はいつ見ても凄い。そしてあの笑いには本当は罪を犯したのに自分を無罪にした司法を嘲笑う意味と馨を裏切ったことで本当に欲しかった清義が自分から永遠に去ってしまった滑稽さを嗤っているんだなと思うと顔は笑っていても深い悲しい嗤いでもありました。
父親の名誉回復ができれば良く、また馨の復讐は果たされたのかもしれませんが、父の転落の直接の原因である清義にももっと辛い仕打ちをしても良さそうなのにとも思います。
生い立ちから美鈴の受けた傷の深さはよくわかりましたが、側で見ていた清義だからこそ歪んだ道を行く手助けをするのではなく一緒に手を取り合って笑える人生を生きるように寄り添って欲しかったです。理想論ですが。
気になった点がいくつか。
ロースクールの学生があんなに情緒不安定で子供っぽいものでしょうか。無辜ゲームの内容も稚拙。
大学側があんな場所に大勢が出入りできるのを黙認するか。
馨は全てを目撃していたのに普通に清義と友達づきあいできるものなのか?
最も気になったのは主演の永瀬さんの話し方と演技です。
弁護士であればもう少しハキハキ理路整然とした喋り方でいいと思います。主人公なのに生の感情がこちらに伝わりにくい。そういう演出なのかもしれませんが声も抑揚も一本調子でメリハリが少ない。
北村さんと杉咲さんと絡むことが多いだけに2人に助けられて成立していた感が否めずです。
もちろんまだお若いので演技の伸びしろがたくさんあるということだと思います。
次々明かされる真実は見応えあるし北村さんの演技もとても好感が持てましたが全体を通して見るともう少し現実に近いリアル感が欲しかった!
優秀な馨ならどう動かれても命を失わない方法を思いつかなかったのかな、と今も気になってます。