「ギフトは人のためならず。」ギフト(2000) garuさんの映画レビュー(感想・評価)
ギフトは人のためならず。
身近な人間の死の前後には、なにかしら不思議な事があるものだ。 それを単なる偶然と捉えるか、何かしらのメッセージと捉えるか…。 昔、法事の席でそういう話が出ると、「私は信じない」 と頑なに否定するおばさんがいた。 合理的に解釈できないことに不安を感じるのは分かるが、果たしてそれほど恐れる事なのか。 私は、心が感じるままに受け入れたいと思っている。 霊能力についても、無限にある才能のうちの一つに過ぎないという認識だ。
この映画から教えられるのは、天から与えられた特殊能力=ギフトを自覚することの重要性だ。 それがどんな類のギフトであれ、与えられた者は謙虚に受け入れ、その力を他人のために還元する。 その誠実さがあって、初めてその人は他人からの大きな信頼を得られる。 ギフト自体は、実はギフトではなく、ギフトをどう使うかが重要だということだ。
霊能者として近隣住民の身の上相談に乗りながら、3人の子供を女手一つで育てる主人公の女性。 まず、その人柄に好感を持った。 ケイト・ブランシェットという名優の演技力なのかもしれないが、飾り気のない人柄には、何とも言えないリアリティと魅力がある。 生活に追われながらも、彼女にすがってくる悩める人たちのために、その特殊能力を使う。 寄付金という形で金ももらうが、生活費の足しにする程度。 霊能者として、他人の苦しみを受け止める役目は、生易しいものではないはずだが、彼女には、それを引き受ける包容力がある。 ギフトを与えられた者としての責任を、しっかりと自覚しているのだ。
物語は、主人公がギフトを持つが故に発生するトラブルを軸に展開する。 誰もが心のどこかで意識している「この世の不思議」を感じさせてくれる、スピリチュアルサスペンスと言ったらいいだろうか。 最後は、ピンチに陥った主人公の女性が救われるのだが、ピンチを救ったのは、彼女の特殊能力ではない。彼女を頼っていつも相談に来ていた、心を病んだ近所の男の魂だった。 要するに彼女は、恩返しされたわけだ。
キリスト教の道徳観も反映されているのかもしれない。 恐怖一辺倒ではなく、 観終わった後に温かみも感じた。 ライミ監督のセンスを感じる良作である。