逃げきれた夢のレビュー・感想・評価
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見事な脚本と演出‼︎
新宿武蔵野館の小さなスクリーンで更に狭小画角に関わらず心に染みる演出が見事。 長い長い間もあれ以上でもあれ以下でもないんだろうなぁ。 アーケード下、男同士の口論にまさか泣かされるとは(笑) 光石さん いい表情するなー。
もう少し続きをみたく(想像したく)なる映画
主人公の光石研を取り巻く状況、家族、仕事、親の介護、自分の病気、これは団塊の世代共通の事象。幼なじみである松重豊と北九州弁を使い、飲んで言い合い「おまえは自分勝手じゃ」といわれるシーン。これもこの世代特有で、仕事人であればあるほど体裁を気にして友人や家族を後回しにする。 どうやって生きていくかを模索する若い女性、どのように仕事人生を終えようとするか考える主人公。 吉本実憂が海外に住みたいというが、お金がなくていけない。やはり現実に生きるしかない日本を表しているのか。 前半の主人公はよく語るが、後半は次第に寡黙になり、沈黙による表現となる。 最後のシーンは、あれ、これで終わり?もう一つ展開はないの?というモヤモヤは残る。 「逃げ切れた夢」というタイトルは、主人公も女性も最後は自分の生き方に一つの答えを見つけることができたという暗示か。 光石研の地元という意味もあるだろうが、退職間近の主人公と寂れつつある北九州市の風景とがマッチしていいと思った。
1ショットの会話劇に惹き込まれる
淡々とした日常と会話劇で話が進む。 音楽も最初と最後以外はほぼなし。 ただ、とても惹き込まれる。 リアルな日常、どこにでもいそうな登場人物であるにも関わらず、非常にきれいに撮られている。そのギャップがとてもいい。 スタンダードサイズで撮られており、情報量が削ぎ落とされている分、ワンショットに映る役者が際立っている。 どこを切り取ってもポートレートのようになる、だから飽きない。 逆に言うとそれを邪魔しないようにシンプルかつ、映像から読み取る余白が多くなっている。 簡単には感想が表現できない作品だが、心に残る、これも映像体験である。 2023年劇場鑑賞75本目
光石さん戸惑うの巻
たくさんの作品の名バイプレーヤー 光石研を観に行きました 結果オーライ 同時期に「波紋」が上映中でもあり、どっちか迷いましたがこっちにしました だって彼の故郷である北九州でしょ!そして定年間近の公務員でしょ! 共演が松重さんでしょ!奥さんがノン子の坂井真紀さんでしょ! 傑作であるはずよってね。見事に日本社会現在から後期高齢にいたるまでのイメージを活写してましたよ 当事者の私でさえ、妻娘を前にした自己憐憫の独白には泣きそうになりましたもん 難しいことはさておき、日本社会が表と裏で使い分けの二重生活を強いてきたこれから高齢期に入る方々(私も含め)、逃げ切れるかドはまりするか試金石みたいな映画でした 最後に吉本実憂さんて女優さん今後の期待のホープです 彼女の演技に◎
夢っていない事に気づいた。
日々日常が忙しく過ぎていくので、定年退職後に、自分が何をしたいのか? 何をして過ごしたいのか?問いかけられた。 自分のペースと他人との距離感。定年また時間はある。焦らす向き合いたい。
夢の果て
認知症にかかった北九州の定時制の教頭が、家族や周りの人間との関係を見つめ直し、勝手に納得するだけの本当に何気ない、何でもない映画。でも、だからこそ名バイプレイヤー光石研の本意気が観ることができ、もう今更抱える夢もなく何の発展もない人間の末路が切なくも可笑しい。 ドラマ性は一切ないです。なんせ光石研演じる末永周平はこれまでナアナアに生きてきて、そしてそのナアナアの結果を享受してきたんですから。今更その状況が変わることもなければ、誰かに多大な影響を与えられるわけもない。 そんな人生からのんべんくらりと逃げてきた大多数の人間を主人公に据えているわけです。 家族にも病気を切り出せない、職場でも事なかれ主義、でも特別な何かをやろうとして空回り、そして元教え子の女の子との対話を通して何かを見出す流れは、最近リメイクもあった傑作『生きる』のようではあります。 ただ、最終的に公園を造って何かを成した『生きる』の渡邊とは違い、周平にはやはり何もないのです。元教え子とは対話を通じてお互いに何かを得たようではありますが、人生に特に明確にプラスになるようなもんじゃない。 発展性がないどころか、もうあとは本当に忘れていくだけの人間がここに来て劇的に変わる筈はなく、そういう意味ではわかりやすく啓示を得て逝けた『生きる』よりも過酷で悲惨な状況かもしれません。 周平はそんな考えようによってはかなり絶望的な状況の中、何かを残そうと必死に足掻いていきます。施設で1日呆けてるだけの父親を見舞ったり、これまで気のない感じだった教え子に親身になって歩み寄ろうとしたり、冷え切った関係の妻や娘とコミュニケーションを取ろうとしたり、幼馴染の悪友に会いにいったり。 でも、こんな何でもないような交流ですら、当の自分が何も成さない人間であるが故に全て空回りしてしまいます。それも盛大に失敗するとかでもないんですよ。可もなく不可もなく。何となく気まずいくらいの絶妙な空気にして終わり。 周平のキャラクターもそんな感じに、可もなければ不可もない。教頭というそれなりの立場ではあるけどトップではないし、もう教壇に立つこともない中間管理職という立場そのままです。 別に対人関係に問題があるわけではないんですが人間関係は表面上だけですし、悪い人ではないんですが居酒屋の若い女の子に「彼氏いるの?」とか悪気なく聞く無自覚なセクハラしちゃってるような感じ。この良くも悪くも「普通の親父」っぷりが絶妙です。 例えば周平が近所にいて、何か事件に巻き込まれてインタビューで印象聞かれたとしたら「普通にいい人でしたよ」って答えちゃうようなあの感じ。そんな本当の本当に凡人だからこそ、周平の焦燥感が余計に身に沁みて、なんか観ていて滑稽なような、居た堪れなくなるような奇妙な気持ちになります。 その真骨頂が周平が家族の前でこれまで教員職をずっとやってきたことを語り尽くし「もっとご苦労様と労ってほしい」と吐露する場面。かと思えば床にそのまま座り込み「ただ金を家に入れとっただけの人間だったのに、ご苦労様っち言えとか。求めたらいけんよな…」と急に反省する。 妻からも「あなたってそういう人だったっけ?」と言われる程に切羽詰まったような、どこかバグっちゃったかのような挙動なんですが、このとてつもなく情けない光石研の演技が傑作。 何かを成そうとして何も成せなかった人間が、何かを成そうとして必死になったからこその叫びだと思います。超情けなくはあるんですが、でも何か普通の人の心からの訴えっぽいんですよね。光石研はそれを劇的に演じるわけではなく、あくまで普通に演じきっています。名バイプレイヤーの演技の極み。 この辺りの流れ、作中でホームに入っている父親(演じるのが特に役者でもない光石研の実父というのが面白いキャスティング)に小学生の時の授業参観の思い出を語るシーンが関連しているように感じます。周平が言うに、父親は堅物でそういうことをするキャラではなかったのに、何故かその時だけ担任の先生のモノマネをして皆を笑わせていたというのです。 周平の母親は病弱で高校生の時には既に亡くなっており、そしてその授業参観の際も病気で寝込んでいたため父親が代わりに来ていた…とのことですが、多分その時の父親も母親代わりとして何かを成そうとして必死になっていたんだと思うんですよね。その結果がたった1回限りの奇妙な行動であり、そしてそれと同じことを周平も家族の前で晒すことになったのです。 そんな堅物の父親から“逃げきって”大学に入る“夢”を叶えた……『逃げきれた夢』の果てにいるのが現在の周平なわけで、あれ?俺の人生って本当に恵まれているの?って自問自答に行き着いてしまうという。 こう書くと恐ろしく世知辛くて怖い映画なんですが、別に観ている分にはそこまで絶望感はないんですよね。だって良くも悪くも周平は普通なんで。普通に行き着く先まで来たってだけなんですよ。 まあ正直面白い映画ではないです。 作中でも教え子に指摘されてたけど、所詮人間は「他人の人生に興味持たないでしょ」なんで。この普通のオッサンに何か興味があるかっつーと、俺も「別に…」ですからね。 ただ、このオッサンが将来の俺だってのは確かにあって、そして停滞と諦念の絶望ってのは年齢如何に関係なく漂っている……というのは、元教え子との喫茶店での対話からも伝わってきます。 個人的には『aftersun/アフターサン』と同じ枠の映画ですね。極々ありふれた日常の中から、このどうしようもなくなった部分を切り取っていく感性の鋭さとか感心する部分はあるし、それはもしかしたら凄いことなのかもしれないけれど、別に自分の好みでは全然ないという。会話の間の長さとかも自然体なんだけど、どうしても平坦ではある。 ただ、光石研や松重豊といった名バイプレイヤーの熟練の演技の深みが見られる分、こっちのがもうちょい好きって言える感じではありますかね。
観たい度○鑑賞後の満足度△ ほぼ同世代の男が主人公の映画だが殆ど共感出来なかった。結婚してなくて子供がいないせいだろうか。ほぼ60年間生きてきていまだに人に好かれたいなんて。松重豊の好助演だけが救い。
①光石研さんと私は同い年である。あちらの方が半年若いけれども、この歳になればそのくらいの差で若いの云々というものではないけど。 ②最近はとんと聞かないけれども、昔は「三十にして立つ。 四十にして惑はず。(不惑) 五十にして天命を知る。 六十にして耳順(したが)ふ。 七十にして心の欲する所に従へども、矩(のり)を踰(こ)えず」という論語の孔子の言葉がよく引用されたもの。 現代は昔に比べ総体的に若くなっているから、8を掛けたくらいが昔の年齢に相当するとよく言われる。例えば60歳だとしたら、昔で言えば48歳くらいだとか。 まあそれでも不惑は越えているわけだけど、40で不惑というのは孔子くらいの人ならともかく凡人にはちと早いと思う。 私は40くらいの時には惑いまくっていたもの。 でも、さすがに60を越えると嫌でも死を意識せざるを得ないし、後は死ぬときに後悔しないというか、なかなか楽しい一生だったなァと思って死んで行きたい。 ③本作の主人公もあと一年で定年というからまあ同世代。もうジタバタする歳でもないと思うけど。 ⑤主人公は(恐らく)認知症になるかもしれないから、いままで適当にやり過ごしてきた(らしい)人間関係を修復してやり直したいと思い始めたという処だろうけれども、食べたことを忘れるならともかく、レジの前を通りすぎて払い忘れるなんて事があるだろうか(食い逃げならともかく)。また、払ってないのを指摘されて財布まで取り出したのに結局払わないのはどうして?お金が入ってなかったのかしら。でも教頭先生であれは外出する時に数千円のお金は財布に入れてるでしょう。 ⑥主人公も言っていたけれど、私も子供の頃は勿論若い頃も60歳と云えば凄い年寄りで人生の酸いも甘いも噛み分けた先達みたいに思っていたけれど、自分がなってみれば“とんでもない”、確かにある程度人生経験は積んだので余程の事がないと慌てないし驚かないし「物事、なるようにしかならないわ」ということくらいはわかっているけど、肝心の中身は殆ど成長していないわ。良いことか悪いことかわからないけど。 ⑦もうすぐ中洲で(ソープで?)働く平賀さんに“どうすればいいんですか?”と訊かれて主人公は答えられなかったけれど、私も同じ質問をされても答えられないだろう(綺麗事言いたくないし)。 僕らって結局こんな風にしか年取ってないのかしら。
みんな自分勝手
認知症になった定時制高校教頭の話。 元教え子の働く定食屋で支払いを忘れて店を出てしまい、忘れる病気と告白したけれど…。 病気になったことを知り、家族や友人との関係や自分自身を見つめ直して立ち振る舞おうとする姿を見せる作品で、序盤の支払い以外で症状をみせるシーンはなし。 家族や友人に言動が何かおかしいと勘ぐられる様な空回りをしつつも病気を打ち明けず…そして病気を知っている正直ガールとのやり取りは、今までの受け流し人生へのお仕置きですかね…。 明るく振る舞ってはいるけれど、漂っている物悲しさとか哀愁みたいなものがなかなか良かった。
心に響く
全体的にここぞという盛り上がりはないが、台詞の1つ1つがとても心に響きました。人は誰もが身勝手、確かにその通りだなと思いました。そして役者さん皆演技が凄くて芝居だけでも心動きました。個人的には最後の台詞で泣けました。
中洲とギリシャ
「波紋」を観て、残念なおとーさん役を演じて光石研の右に出る俳優はいないのではないかと思ったが、本作で確信した。 それにしても、見事なまでに(表面上は)何も起こらず淡々と続く情景描写と台詞の余白の雄弁さが、波が打ち寄せるようなラストシーンの余韻のための序奏だったとは。いやもう、恐れ入りました。
これは結構な作品だ
心を揺さぶられる映画――。 最初から最後まで、ドンパチ盛り上げようとするような、気が抜けない映画ではない。 冒頭から物語中盤、後半にかけても、退屈なくらい何も起きない坦々とした展開、描写で眠くなるか、もう席を立とうか、と思わせる。それでいて、終盤に入るとどんどん引き込まれ、最後には大きな感動が押し寄せる…。 そういう作品がよい映画である。 本作もその一本と言ってもいいだろう。 中盤あたりまで、地方の定時制高校で教頭をやっている定年間近の男の日常を光石研が淡々と演じる。 親の介護や妻、娘との関係。学校で生徒との関係などなどを描くが、興味を引くような内容はほとんどない。 光石もひたすら、小さな男を演じ続ける。 定年間近で、出世とは縁遠く、まじめに働き続けた。 それでいて、家族や職場から尊敬されたり、一目置かれるような存在でもない。 自分の人生はなんだったか。 多くの中高年男性が感じる、一種の悲哀がスクリーンから伝わる。 これって、僕の心境、生活を映しているのか、と見ながら思った。 最後も劇的なものがあるわけではないが、かつての教え子の女生徒との会話から感じるものが、僕の心に津波のように押し寄せたのだ。 封切りまでちょっと間がある。 コロナ禍以降は試写室も遠かったのだが、昼間に時間が空いたので、予備知識まったくなし。光石主演の映画、という知識しかないまま、久しぶりに試写に行った。 そこでよい作品に巡り合えた。 監督はこれが商業映画デビュー作というのはちょっとした驚きだ。 21世紀の小津がここにいた、と下手なレビューが書きそうだ。
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