「これこそがスポーツマンシップ」AIR エア 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
これこそがスポーツマンシップ
まず、1980年代のバスケシューズ業界に於いて、ナイキはコンバース、アディダスに次ぐ第3位の売り上げに止まっていたという事実に驚く。それまではバスケと言えばコンバースという時代が長く続いていたのだ。そんな悲しい状況を打開するために動いたのが、ベン・アフレック(監督と製作も兼任)演じるCEOのフィル・ナイトであり、フィルから再生のためのミッションを託されたマット・デイモン(製作も兼任)演じるナイキのセールスマン、ソニー・ヴァッカロだ。『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』(98)コンビの復活である。
映画は冒頭から凄まじい台詞の応酬で始まる。そこで若干引き気味になる観客を、ソニーが当時売り出し中の新人プレイヤーだったマイケル・ジョーダンと交渉して、ジョーダンのためのカスタムメイドである"エア・ジョーダン"を発売してバスケシューズ業界はおろか、スニーカー業界に革命を起こすまでを一気呵成に見せて、有無を言わせず高揚させていく。
ポイントは、ソニーがセールスマンとして類まれな嗅覚の持ち主だったこと以上に、スポーツを愛する心とアスリートに対するリスペクトの気持ちがあったことと、ジョーダン側を代表して交渉の席に着く母親、デロリスが、息子の才能に値する条件を堂々と突きつけてくるところ。そんなウィンウィンの関係こそがスポーツマンシップであり、スポーツ大国アメリカの繁栄の基盤になっていることが分かるのだ。
何かと白黒付け辛い時代にフェアネスの尊さを訴えかけてくる映画だ。早くもオスカーが噂されるのも無理はない。
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