「時代演出と優れたお仕事物語」AIR エア kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
時代演出と優れたお仕事物語
ナイキといえば「エアジョーダン」というイメージがある。エアジョーダンを履いている人から靴を強奪する窃盗事件まで発生していたくらい人気があった。マイケル・ジョーダンはバスケ選手に収まらない社会的な影響力を持つ人間だったってこと。
そんなマイケル・ジョーダンと独占契約しようとするナイキの奮闘を描いた物語。ドラフト上位で指名される選手ではあったが、NBAでの実績がない選手をどれだけ評価し、社内でその評価を納得させ、どんな契約の条件を提示できるかって話。その後のジョーダンの活躍と、エアジョーダンの売れ方を知っているから破格の条件提示も理解できるが、当時の人間からすると相当の覚悟がないと出せない条件だ。そもそも当時のバスケットシューズのシェアトップがコンバース、2番目がアディダスってところが興味深い。たしかにコンバースのあのスニーカーはもともとバッシュだったな。当初のマイケルはナイキを嫌がっていたというマイナスからのスタート。
そこから家族との接触やナイキの内部でのやりとり、契約を勝ち取るまでの苦労はそりゃもう熱い。お仕事映画としてかなり楽しめる作品だ。でも、仕事だけを描いたわけじゃない。自分はどう生きるのかってことを突きつけられた気がする。そういう意味でもとても熱かった。
そして個人的にはこの時代(1984年)の演出もとてもよかった。電話やパソコンや車、服装、そして流れる音楽。特に音楽はリアルタイムで聴いてきた時代だからワクワクするような選曲だったし、「ボーン・イン・ザ・USA」の歌詞について話すシーンなんかもう共感でしかない。Run-D.M.C.とアディダスの話題や当時の映像なんかもうまく挟み込んで、あぁーこんな時代だったよねと思い出させてくれる演出が最高だった。
ちなみに、私はナイキのエアジョーダンを履いたことがない。「いつもセックスのことを夢見ている」アディダス派。それなのに、さすがにあのエアジョーダンはカッコよく見えた。売れるのもわかる。
リアルタイム世代ですね!
私もアルバム「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」はさんざん聞きました。来日コンサートに行けなかったのがとても残念です。「タイム・アフター・タイム」も聴きながら涙が出そうでした。