「歴史が動く瞬間」AIR エア TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
歴史が動く瞬間
冒頭、ダイアー・ストレイツの『マネー・フォー・ナッシング(85)』に乗せて当時のアメリカの時事のダイジェスト映像。1984年から始まるこの物語はその頃のヒットソングをBGMに、ファッションや小道具、車等々、あの頃の雰囲気たっぷりです。71年生まれの私からしたら、ティーンズになり洋楽を聴き始め、夜更かしをしてMTVなどをTVでかぶりつきに観ていた時代。早速帰宅後にApple Musicでサウンドトラックを落として聴きながらのレビューです。
とは言え、実は私バスケは観ませんし、スニーカーも興味なし。ただ、よく聴くラジオ番組でナイキのスニーカー特集があり、エアジョーダン誕生の逸話は聴いたことがあったので、映画化されたこの作品で「歴史が動く瞬間」を観られることを楽しみにしていました。
果たして感想はどうだったかと言えば、まぁ間違いないですね。実話モノですし、今も普通に現役であるエアジョーダンというスニーカーが誕生する話なわけで、この結論にネタバレも何もないわけですが(一応、この後一部内容に触れるのでネタバレ注意にしておきます)、いわゆる「逸話」が幾つもある奇跡と、争奪戦における多数の関門を超えるためのソニー・ヴァッカロ(マット・デイモン)の行動力、そしてプレゼンテーションのつるべ打ちで、終始冷めることのない高揚感で楽しめます。そして、決め手のスピーチでいよいよ獲得…となる一歩手前におけるデロリス・ジョーダン(ヴィオラ・デイヴィス)からの「些細な」追加条件についての逆プレゼン。こんな一筋縄では行かない展開もまた「事実」であり、まさにこれこそがその後の業界をひっくり返すほどの「歴史」と言って過言でく、最後まで興奮します。
そして、キャストも豪華で「演技」と言った観点でも見どころが多いことは言うまでもありません。特に私のお気に入りは、ジョーダンのスポーツエージェントであるデビッド・フォーク(クリス・メッシーナ)vsソニー・ヴァッカロの電話越しの言い合い。初めこそ「お呼びでない」とクールにあしらうような態度のフォークに、むしろ挑発的な食いつきで応戦するヴァッカロ。段々と腹を立てながら歯に衣着せぬどころか、興奮して度を超すフォークの物言いに思わず笑うヴァッカロですが、なんだかマット・デイモン自身が地で笑ってしまっているように見えて、観ているこちらもついつい釣られて吹き出してしまいます。
スニーカーやバスケに興味がなくても、また当時を知らない若者も、臨場感や醍醐味を肌で感じる一本で楽しいですよ。お薦めです。