「ハッピーエンドとアンハッピーエンドが交錯する奇妙な味わい」ブルックリンでオペラを 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ハッピーエンドとアンハッピーエンドが交錯する奇妙な味わい
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レベッカ・ミラーは、これまでもロールモデルには絶対になり得ないような「間違ったことをしでかす人間」を描きながら、そこに暗さをあまり感じさせない抜けのよさが持ち味であり、今回も浮気や情事や束縛や妬み嫉みや貧富の格差みたいなヘビーにもなりうるモチーフを軽妙な喜劇に仕立てているのがいい。ミラー自信がインタビューで「ウディ・アレンがさんざん撮ってきたジャンル」と説明していて(その発言自体が昨今のアメリカ映画界では勇気があるといえる)、物語の帰結としてのハッピーエンドと、劇中劇であるオペラのアンハッピーエンドが二重写しになっているのは食えない作家だなあと思うが、それでもやっぱり抜けがよく、ちょっと雑だけどめでたしめでたしな力技も、味わいとして受け入れられてしまう。軽さと重さのバランス感覚の独特さという点でも、ミラーはほかに似た者のいない得難い映画作家。
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