碁盤斬りのレビュー・感想・評価
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キョンキョンの圧倒的存在感
【追記しました】
・狐狼の血を見たのでさぞかしと思いきや、序盤から中盤にかけては意外とあっさりしてました。
・ラストの殺陣も、ご時世なのか人がバッタバッタと斬られる感じではなかったものの、本懐を遂げるくだりで若干の白石監督っぽさを感じ取れたかな?
・清貧を体現する柳田と元悪徳商人源兵衛が、碁盤を挟んで季節の移ろいの中で交流を深めるところは良いシーンでしたね。碁盤と対峙する源兵衛の心情の変遷を表情で演じわける國村隼人さん、流石の貫禄。
・時代劇には明るくないため考証はわかりませんが、蚊遣や風鈴等の小物にもこだわってるところが良かったです。刀の柄も細かい拘りがありそうです。音響にも注目?です(大きなシアター推奨)回想シーンの映像は、ひと昔の時代劇のようでしたが、技術的な違いをうまく説明できません(^_^;)
・ストーリーについては、それほど捻った脚本構成でもなく、ラストも想定内で着地。特に刺さるところもなしでした。てか人生で二度も窃盗の嫌疑をかけられる柳田の持ってなさよ…
・個人的に、疑いが晴れて、怒りのまま弥吉と源兵衛を斬り捨てようとしたその瞬間「ちょっと待ちな‼︎」と、キョンキョンがスパーーーンと障子を開けて割って入って来て欲しかった。
それを期待させるほどの圧倒的存在感。さすがキョンキョン昭和世代のスーパーアイドル!!女郎屋の女将キャラもピッタリ!
でも娘の身売りと言う最大の危機で、この物語のクライマックスなのに、結局女将キョンキョンの漢気ひとつでチャラになるんかーい!って裏拳が空を切った人も多かったはず。
そもそも除夜の鐘鳴り終わっても翌日の営業開始まで時間あるんやん、そんな悲壮感出して走らんでもええんやん。って言うか清原かやの花魁姿見せて欲しかったわ。
最後は娘の幸せを見届けたあと、兵庫の巻き物をお金に変えて、自分のせいで苦境に陥った人々への贖罪の旅エンド。
昨今、碁のルールを知ってる人はそれほど多くないはずなので、石の下とか何とかのクダリについて、ナレーションなり説明セリフなりで弥吉とか源兵衛に解説させればもう少し興味持てたかもしれません。ここは観客置いてけぼりでした。
それと、日本刀で碁盤をあんな綺麗に真っ二つにできるものなのか、疑問に思った人も多いと思います。
久々の傑作時代劇
コミなし
時代劇の様式美
原作未読だが、白石和彌監督の『孤狼の血』に感銘を受けたので本作を鑑賞。封切日の初回上映で観客は20人ほど。
彦根藩の進物番「柳田格之進」(草彅剛)は掛け軸の紛失の責任を問われて改易され、妻は琵琶湖で入水自殺してしまう。江戸に流れた格之進と娘「お絹」(清原果耶)は、貧乏長屋に住まう。格之進は篆刻作り、お絹は吉原の遊女屋の女将「お庚」(小泉今日子)から仕立て仕事を引き受けて生計を立てる。
篆刻を納品した帰りに碁会所を覗いた格之進は、こすっからい手口で勝ち誇る両替商「萬屋源兵衛」(國村隼)を見かけ、懲らしめてやれという気持ちから勝負を挑むが、あと一手というところで勝ちを源兵衛に譲る。彦根藩時代に「柴田兵庫」(斎藤工)と囲碁で勝負し、兵庫を追い詰めすぎて刃傷沙汰を招いた苦い経験を思い出したからだった。
萬屋で、質草の茶器を壊された、五百両払えといって脅す浪人者を見かけ、進物番の鑑定眼を活かし、茶器が安物だと看破して、店の窮地を救う。源兵衛は礼金を渡そうとするが、格之進は受け取らない。それでは私と囲碁で勝負して私が勝ったら礼金を受け取ってくれと申し込まれ、わざと負けて金を受け取ることもできたのに、勝負に勝ってしまう。実直な人柄に惹かれた源兵衛は、格之進と水魚の交わりを持つようになる。格之進に感化されて商いのやり方も実直になり、それがまた客の評判を呼んで店はますます繁盛。お絹と萬屋の手代「弥吉」(中川大志)は互いに好意を抱く。
格之進とお絹が萬屋の月見の会に招かれて楽しいひとときを過ごしているとき、彦根藩の後輩「梶木左門」(奥野瑛太)が格之進を訪ねてくる。あることから柴田兵庫を取り調べて、掛け軸を盗んだのは兵庫だと判明したという。格之進の妻が自害したのも、格之進の無実を証言できるのは自分だけだと兵庫に迫られ辱めを受けたのを苦にしてのことだった。兵庫は彦根藩を出奔して行方をくらませたという。
激高した格之進は仇討ちの旅に出ようとするが、そのとき苦悩の表情の弥吉が格之進を訪ねてくる。源兵衛の手元から五十両が紛失した、行方を知っているのは源兵衛と碁を打っていた格之進しか考えられないという。
身に覚えのない格之進は自刃して潔白を証明しようとするが、お絹に盗人の汚名を着せられたまま母上の仇討ちもせずに死ぬのかと制止される。お絹はお庚に身売りして五十両を作る。お庚は、お絹の心意気に惚れたから五十両を貸すが、大晦日までに返済されなければ心を鬼にしてお絹を店に出すと格之進に宣告。五十両を弥吉に渡した格之進は、左門とともに仇討ちの旅に出る——といったストーリー。
草彅さんは諦観を漂わせる主人公がハマり役だ。清原さんは貧乏長屋に咲いた一輪の花の風情だし、斎藤さんも憎々しい敵役を好演している。
ただ、城内で刃傷沙汰を起こしたら、その時点で兵庫も格之進も厳重な処分を下されたのではないかと思う。それに最後、正義にこだわりすぎる格之進のせいで藩を追われた人々の暮らしを助けるために、格之進はせっかく取り返した主君の掛け軸を売り払って金に換えようとするが、これはかなり唐突な感じを受けるし、左門がそれに同意するのも不自然だ。ハードボイルドな『孤狼の血』と違って本作は人情味のある結末だったが、これは監督が時代劇の様式美を尊重したのだろう。
馴染がなくても観やすい時代劇
前半後半両方楽しめました
前半は、柳田格之進と萬屋源兵衛のブロマンスを描いた静の映画
後半は、2つの冤罪を解決していく動の映画
草彅剛さんが両方をうまく演じていてとてもよかったです。周りの國村隼さんはもちろんのこと、イケメンなのにちょっと頼りない役の中川大志さん、清貧というイメージそのものの清原果耶さん、みんなよかったです。
すなおに、面白かったです
草彅剛の首
主演の草彅さんの役作りが若過ぎでは⁇
殺陣の練習たいへんそぅ。
登場人物の行動原理がよくわからない。
期待していたが、あまり良くなかった。
基本的に主人公の行動に一貫性が感じられない。
清廉潔白な生き方をしていると自ら言うわりには、生活のために稼いだ金を賭け碁に使って失ったり、家賃を滞納し取立屋への言い訳のため娘に嘘をつかせたり、金を盗んだ嫌疑をかけられた際になぜかその金を払おうとして娘を遊郭に売りに出したり、碁会所で果たし合いを勝手に始めそのせいで死人まで出し周囲に迷惑をかけたにも関わらず詫び一ついれずにその場から去ったり、苦労して奪還した軸を盗んだり、そして最後は失踪(?)したりすると挙げればキリがない。どれも心理描写がないので行き当たりばったりの行動にしか見えないのである。基本的に自分にしかベクトルが向いていない感じ。
その上、急にキレだすきらいがあり、情緒にも問題があるようにも見える。
武士は恥を晒して生きるよりも自ら腹を斬るか、雪辱を果たすしかないといった精神性を描きたかったのかもしれないが、町人相手に情けもなく首を取ろうとするのは武士の行動なのだろうか?そもそも武士らしい人格を持っているようには見えず説得力がないので、やはり情緒が不安定な人にしか見えなかった。
小説が原作のようだがそちらではそれらの行動の変化について心理的な描写があるのだろうか?少なくともこの映像からはそれがまったく感じられなかったのが残念。
主人公の周りの人間も不器用な人が多すぎる。もっと上手くやれば大事にならなかったような出来事ばかりで見ていてストレスを感じた。娘もあれほどひどい目に会ったにもかかわらずその元凶となった家に嫁ぐのは無理があるのでは?碁盤斬ったから全部水に流すってそんな理屈は理解できない。
あと例の碁盤斬りのシーン、斬ったあと何も起こらずに少し立ってから碁盤が割れるみたいな演出はさすがに寒いからやめて欲しい。普通に斬って二つになった様子だけ見せてくれれば良い。劇場では観客から失笑が起こっていた。てっきり昔修めた剣術流派の奥義が「碁盤斬り」で、相手を碁の目のように十文字に斬るとか、必死の状況で逆転する剣みたいなものを想像していたが全然違った。
藤沢周平の隠し剣シリーズのような浪漫を期待していたが、タイトルの回収方法があまりにも安っぽく本格時代劇には到底なりえないと思う。
と思っていたが、これ落語が元なのか。
どうりでリアリティのない展開が続くわけだ。
これは武士道なのか?
草彅剛、清原果耶、國村隼ら俳優陣の演技はよかったと思うし、中盤までは楽しめたのですが、途中からの展開に納得できなくてちょっと冷めた目で見ていたので、ラストもあまり感動しませんでした。近くの席でスマートウォッチを何度も光らせて、うっとうしかったおばさんが泣いていたのでよけい白けてしまいました・・・
まず最初で、滞納していた家賃を払うためのなけなしのお金を、一時の感情のまま失うダメさ加減にイラっとしましたが、それは一本気な武士のありさまとして受け入れはしました。しかし中盤のある場面からはあまりにも展開がバカバカしくて脚本家に腹が立っていました。いくつかを列挙すると、
①50両のことを確認するために番頭に言われるまま中川大志が草彅に話をしに行くけど、あれだけ一本気の武士に疑いをかけたらどうなるかは火を見るより明らかなのに、大旦那の了承も得ずにノコノコ言いに行くなんてありえないです。しかも街中で。脳みそないんじゃないですか?
②草彅も疑いをかけられただけで、なぜそれを弁償しようとするのか意味が分かりません。しかも愛する娘を女郎屋に預けてまで。そもそも50両返したら、盗んだことを認めることになりませんか?
③草彅が50両を持って行ったときに、中川に冤罪の時は命をもらう約束をしましたが、その時大旦那の命ももらうといい、それを勝手に中川がOKを出したのでずっこけました。いや他人の、それも命の恩人の大旦那の命を何だと思っているのでしょうか?
④女郎屋の小泉今日子は、足抜けしようとした女郎には鬼の扱いをしたのに、自分が気に入っている清原には甘いんですね。てっきり期日を過ぎたのでそこは約束通り女郎にすると思ったのに、あっさり帰すなんて拍子抜けしました。草彅も武士なのに、都合のいい時は約束をたがえてもあっさり受け入れるんですね。
⑤最後に國村と中川がお互いにかばい合う場面も結果が見えちゃってるので、茶番にしか見えませんでした。だってあの状況で映画のタイトルが「碁盤切り」ですよ。誰だってオチは見え見えですよ。見ていて「あー、はいはい予定調和ですよね」と思っちゃいました。
⑥一番腹が立つのは性悪説の塊の番頭ですが、こいつのせいでトラブルが発生しているのに、大旦那はなぜかクビにせずにそばに置いているのが不思議です。ラストの祝言でも音頭を取っているし・・・
⑦あとは碁会所での殺陣の場面ですが、なかなか草彅に刀を渡さないのは、ハラハラさせるためなんでしょうか。ほかのサンピンたちの一人が渡せば簡単なんですがね。
⑧最後に草彅が清廉潔白なだけではだめだと悟り、お金を藩にいた人たちに渡すために旅立つのだと思いますが、そもそもその人たちは草彅のせいで不幸になったのではないのに、なぜか責任を感じているのがよくわからないです。斎藤工が「お前が藩主に直訴したからだ」とか言っていましたが、いや、お前が草彅を陥れるために画策したことが原因だろうと突っ込みを入れてしまいました。
と、いろいろ書いてしまいました。脚本さえちゃんとしていたらもっといい話になったと思うので残念です。
見応えあり!ただし、囲碁・落語・江戸時代に関心がない人は辛い作品か
映画で時代劇を観るのは初めて。
今回の作品は草彅剛が、映画の時代劇初めてであることと、白石和彌監督作品、落語の演目をベースにした作品が気になったので鑑賞した。
草彅剛の時代劇はパンフレットによると舞台蒲田行進曲以来とのこと。
作品は見応えがあった。後半は時代劇でもおなじみの設定だったが、草彅剛をはじめ出演者の演技に説得力があった。囲碁のシーンは素晴らしかった。
白石監督さすが。
ただ、囲碁や吉原、落語や時代劇に詳しくない人には辛いかもしれない。
見事な作品でした。
囲碁、時代劇、落語、江戸時代に関心がある方はおすすめしたい作品です。
ちなみに囲碁の日本棋院も撮影に協力していて囲碁ファンなら御馴染みの井山三冠と藤沢女流二冠がエキストラで出演していたとの事ですが、全然見つかりませんでした。
良質の時代劇。画竜点睛を欠く
貪れば勝ちを得ず
身に覚えのない罪を着せられ、彦根藩をおわれ浪人となり、
娘お絹と二人、江戸の貧乏長屋で暮らしていた、柳田格之進。
実直な性格、そして武士としてのプライドを併せ持っている。
趣味の囲碁においては人柄が表れ、嘘偽りない勝負を心掛けていた。
そんなある日、訪ねてきたかつての同僚、旧藩士より冤罪の真相を聞き、
復讐を決意。ところが時同じくして、新たな冤罪、嫌疑がかけられる。。。
予備知識なかったけど、評判がよかったので、観に行ったが、
もっと時代劇かと思ったら、ちょっと違った。
おまけに囲碁はわからないし・・・
ただ、冤罪の真相を聞いてからの格之進の変貌には驚き。
そして、復習、仇討ちのため、旅に出るわ、娘は吉原に行くわ。
ラストでは碁盤が・・・タイトル回収~
でも、あの掛け軸はどうしたのよ、まさかエンディングの資金?
そして、ハッピーエンドかと思いきや、彼はいずこへ?笑
主人公格之進役の草なぎ剛さん、性格や表情の変化、
前半は静寂、後半は熱いものを前面に出しての仇討ち、まさに復習の鬼、
さすがでした。
娘お絹さん役の清原果耶さん、可愛らしいですね。
先日の青春18に続けての映画でしたが、すっかりファンです笑
萬屋源兵衛役の國村準さん、さすがの渋さ。ちはやふるの先生だもんな。
でも、お金をちゃんと・・・
それに、柳田さん信じているのなら、もう少し対応の仕方があったのでは。
弥吉役は中川大志さん、こういう弱々しい役もとても合うよね。
番頭さんの言いなり、そしてあらぬ疑い、ダメっぷりがばっちり。
お庚役は小泉今日子さん、久しぶりに観たよキョンキョン。
お絹さんだけひいきしてるし。
敵である柴田兵庫役の斎藤工さん、かっこいいのに、嫌な役でした。
六尺の大男、やっぱり仕込んでいたか、って。
役者さんの芝居はさすがの一言だったのだが、
ストーリーがいまいち入ってこなかった。
貪れば勝ちを得ずという言葉だけが頭に残り、
映画を観終わった後、スマホでメモに書き留めた。
・・・映画終わってから、ネットで見て知ったのだが、
柳田格之進というのは、古典落語の演目らしい。
別名として「柳田の堪忍袋」「碁盤割」とか。
なるほど。。。笑
現代にはもう無い真っ直ぐ過ぎる生き方
草彅くん、良かった!…⭐︎
前評判も良く、草彅くんと白石和彌監督ということで鑑賞。
いやいや、なかなか本格的な時代劇でした。
無実の罪で彦根藩を追われ、娘と二人(最初、清原果耶が娘なのか妻なのか迷ったのは自分だけ?)で江戸で
暮らすが碁会所で國村隼演じる萬屋原兵衛と出逢ったところからいろいろな意味で運命が動き出す。
草彅くんが清廉潔白な武士にピッタリ。
岡村隼はもちろん、中川大志はいかにもと言う役どころ、小泉今日子も良い感じ。
でも、個人的には悪役の斎藤工が面白かった。
でも、何よりも白石監督のカメラワークと照明が素晴らしい!
月見の会のろうそくや終盤の賭け碁の明かり、吉原の雰囲気などなど…すっかりと江戸の街に
いる雰囲気に浸れる。
ただ、物語は一応「敵討ち」の話しなのだか、予想通りの展開で中弛みも感じてしまい若干の
物足りなさもあるかなぁ…。
それでも見る価値あり。
「虎狼の血」を撮った監督とは思えない美しい映像。
良かった。
こんな王道の時代劇を、バイオレンス過ぎて敬遠気味だった白石監督が撮るなんて驚きだし、感動でもう胸いっぱいです。
古典落語『柳田格之進』をベースにした時代劇映画。「孤狼の血」シリーズなどの白石和彌監督にとっては初の時代劇監督作品となります。草彅は『ミッドナイトスワン』以来4年ぶりの主演映画となり、時代劇映画としては2009年の『BALLAD 名もなき恋のうた』以来15年ぶりの出演となりました。
時代劇が苦境と言われて久しい今日。主題となる義理人情や忠義、互譲の精神は、個人の幸せを求める競争社会では 「弱さ」にも感じられます。本作は型やケレン味を強調した古典的な作品とも、セリフ回しや所作を今風に崩した試行錯誤の作品とも異なります。時代劇の文法に即しながら、現代人の心情にもかなう、いい塩梅に仕上げられた作品です。
●ストーリー
とある事件のぬれぎぬを着せられ、妻を亡くし故郷の彦根藩を追われた浪人の格之進(草彅剛)は、娘のお絹(清原果耶)と江戸の貧乏長屋で2人暮らしを余儀なくされていました。実直な格之進は、かねてたしなむ囲碁にもその人柄が表れ、嘘偽りない勝負を心がけていたのです。
ある日いつもの碁会所に立ち寄った格之進は、無類の囲碁好きな商人、源兵衛(國村隼)と出会います。しかし彼の打つ囲碁に表れる誠実な人柄に惚れ込んだ、源兵衛は格之進を度々呼んでは碁に興じ、酒を酌み交わす関係となるのでした。
しかし源兵衛の家で50両が紛失する事件が起こり、格之進は番頭から窃盗の容疑をかけられてしまいます。激した格之進は武士の誇りにかけて、「金が見つかったあかつきには源兵衛と番頭の頭を貰い受ける」と言ってのけるのでした。
番頭の徳次郎(音尾琢真)から報告を受けた源兵衛は、無礼を詫びようと格之進の長屋に急ぐものの、家はもぬけのからになっていました。
実は旧知の藩士梶木左門(奥野瑛太)からかつての冤罪事件の真相を知らされた格之進は、同時に妻を拐かし、死にも追いやった両方にからむ柴田兵庫(斎藤工)を討つために旅に出たのでした。お絹は仇討ちの足かせとなったを盗んだという父の不名誉を晴らすため、格之進の知り合いの吉原の遊郭の女将お庚から、50両用立ててもらい、その身代わりとして店に身請けされてしまっていたのです。
●解説
落語の人情話を下敷きにした、あだ討ち時代劇。誇り高く激しさを秘めた武士の格之進を、草彅が風格たっぷりに抑制した演技で好演。新境地を見せてくれます。
碁会所で2人で碁に興じている中、大金盗難の疑いをかけられる。娘と長屋暮らしという身の上もほぼ落語通ですが、過去の遺恨と、それに伴うあだ討ちを絡めたところが新機軸です。
映画ではここに、格之進が藩を離れる理由となった、柴田兵庫という新たな人物を登場させています。彼も囲碁の達人でありますが、やはり碁に人柄が表れて、彼の対局は自己主張が激しく荒々しいのです。でも序盤の布石は「三連星」という、辺の星に石を3つ並べて打つシンプルな形なのがアンバランスです。
嫉妬深い兵庫は逆恨みで同僚たちを落とし込んだあげく、それが諸々の仇となって、兵庫は追われる身に追い込んだのでした。この人物像は、三隅研次監督の「座頭市地獄旅」(1965年)で、侍としては優秀だが、将棋の対局では激して我を忘れる十文字純(成田三樹夫)という、とても魅力的なキャラクターを思い出させました。
また囲碁が重要な要素となっているのも好感。実はわたしも高校時代は囲碁部。なので物語の主軸に対局シーンがからむ展開を楽しめました。特に詰碁でしかお目にかかれない奇手が伏線となり、クライマックスの圧巻を飾ることには感動しました。
近年の将棋人気と比べると、囲碁の存在感はもう一つ。勝負の展開が分かりにくく映像映えしないせいか、囲碁を題材とした映画もとんと見かけません。しかし本作では、囲碁の奥深さと格之進の複雑な内面を重ね、碁を知らなくても盤上の緊迫感が伝わる作りなのです。折しも本因坊戦五番勝負の真っ最中。本格時代劇としても囲碁映画としても、見応え十分。皆さんもこれを機会に碁会所の門を叩かれてはいかがでしょうか。
斬新な作品を撮って評価され続けてきた白石監督だけに、白石組の実力も確かなものです。精緻で緩みのない加藤正人の脚本を土台に、美術の今村力、録音の浦田和治らベテランの力量が支えました。とりわけ、歳時記を思わせる撮影が素晴らしいです。山笑う春を起点に、薫風の夏、すすきの秋、小雪舞う冬、そして、春を告げる梅の季節へ。格之進の歩みと日本の四季が響き合います。特に吉原に満開の桜を咲かせた映像は秀逸。遊郭ならではの爛漫な春を再現していました。
但し、全体的な色調が暗めなのは、当時の街や室内の明るさを意識したからでしょうか。ろうそくなどの光による室内のリアルに近い暗さと、張り詰めた演出は秀逸です。そんな障子越しの柔らかな光が、父娘のつましい暮らしを際立たせます。
さらに灯火がゆらめく月見の夜。名所を望む晴れた日の水辺、格之進と源兵衛が様々な趣向で楽しむ対局シーンも風情がありました。
演技面では草彅ばかりでなく、吉原遊郭の女将お庚役の小泉今日子、賭場を仕切る親分役の市村正親ら助演級も時代劇のイメージはないが、限られた登場シーンで存在感がたっぷりありました。
●感想
やはりなんといっても注目は、タイトルの所以となった50両が見つかったことを話し詫びるシーンです。無口な格之進が激高し、約束通りその首頂戴するとなったとき、映画ではどうなるのかご注目ください。あの緊迫感は、名シーンだと思います。
ところで窃盗の濡れ衣を着せられた格之進は、武士の体面を重んじるあまり、断腸の思いで娘を犠牲にしようとします。果たしてそれは、正しく汚れのない道だったのでしょうか。実直な囲碁に表れていたものは、格之進の融通の利かなさという負の面ではなかったのでしょうか。そんな自問をにおわせ格之進の悔恨に思い馳せるラストでした。大団円とは異なる幕切れには、白石監督ならではの鋭利さを残していると思います。
また実直な格之進の影響か、金にうるさかった源兵衛が次第に温厚に変わっていく変化も見どころです。源兵衛は後半で、壁に掛ける家訓を「不得貪勝」(則れば勝利は得られない)に改めます。これは碁の心得「囲碁十訣」のひとつです。囲碁愛好者なら、戦術が絡んだシーンが要所にちりばめられているので注目してください。
さらに殺陣や立ち回りといった派手な場面もありますが、最後は武力ではなく、頭脳戦の囲碁で仇敵に向かい、勝敗を決するところに新味を感じました。そこにドラマチックな妙手がからむとなるとなおさらです。
●最後にひと言
まな娘絹の縁談といった小津映画的なモチーフを、裏稼業の人々、アンチヒーローを得意とする白石監督が描くところが味わい深いと思いました。恥、情けといった徳が健在でホツとします。とにかくこんな王道の時代劇を、バイオレンス過ぎて敬遠気味だった白石監督が撮るなんて驚きだし、感動でもう胸いっぱいです。
新たな風が吹き込むことで、時代劇も再び活気づいてほしいものですね。
さすが白石和彌
さすが白石和彌監督、初時代劇とは思えない手堅さでこぅパーツが思ってたところにビシビシっとハマるような見事な作り。
基本的にはリアリティ重視の演出ながら、終盤のクライマックスには鈴木清順すら思わせるような画面造りもあり、やっぱり油断できない白石和彌。殺陣も劇伴も良かったよね。
ストーリーも、落語みたいに綺麗にまとまった話だなぁ、と思ってたらやっぱり落語だったのね…
落語の演目だからみんな知ってるだろうし構わない、って判断なのかもしれないけど、予告のシーンはちょっとネタバ… まぁタイトルもと言えばそうなんだけど…
キャストの芝居も素晴らしい。草彅剛の矜持、清原果耶の清麗、奥野瑛太の直実。仏と鬼の顔を使い分けられるキョンキョンも、人生を悟って変わる國村隼も良いが、一分の理があるとも思わせられる斎藤工もナイス。
全455件中、341~360件目を表示













