「濡れ衣はとっとと晴らしましょう」碁盤斬り odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
濡れ衣はとっとと晴らしましょう
イタリアのRED LINE INTERNATIONAL FILM FESTIVALで最優秀長編作品賞を受賞したとのニュースを知り、鑑賞。囲碁の話が何故イタリアで受けたのか、調べてみたらイタリアには囲碁連盟がありトーナメントも開かれており広く親しまれているらしい、ただ、受賞の評価は「江戸時代の侍映画の伝統を忠実に体現しつつ、主人公の心の奥底にある感情を探求している」からとのこと。イタリアだけでなくフランスやスペインでも上映され高評価の様です。
彦根藩の進物係の柳田格之進(草彅剛)は碁敵でもある柴田兵庫(斎藤工)に掛け軸窃盗の罠に嵌められ、妻も亡くし浪人になり、娘(清原果耶)と江戸の長屋で貧乏暮らし。たまたま碁会所で賭け碁をした質屋の萬屋源兵衛(國村隼)と親しくなるも、またもや、50両紛失の嫌疑をかけられる。娘をかたに女郎屋から金を借りその場しのぎ、藩から来た梶木左門(奥野瑛太)と共に仇の柴田兵庫を探すことに・・、娘が女郎に出される期限が迫る中、やっと見つけた敵と囲碁勝負だから間に合うのかハラハラしました。どうも格之進という男、正義漢だが自身のことには極めて疎い、濡れ衣はとっとと晴らしましょうね。
元は落語の人情噺で映画は脚本の加藤正人さんが落語をもとに書いた小説が原作の様です、落語では柳田は彦根藩で復職し江戸留守居役として幸せに暮らし続けてハッピーエンドだが、映画での柳田は娘の結婚式を途中退席して放浪の旅に出るところでThe END。悪役柴田兵庫の登場も落語にはなくハードボイルド感を出すために加えたとのこと。
その辺が「夕日のガンマン」ぽくて受けたのかも、小説では後日談として、失職した昔の仲間に狩野探幽の掛け軸を売った三百両を配って回る旅だったようです。
私は囲碁には詳しくないのですが、星から打つとか、石の下、中国故事の𬂓貧得不(貪れば勝ちを得ず)とか数々のエピソードはおそらく囲碁好きの人には受けたのでしょう。