「良かったけど不思議なところもあり」碁盤斬り かすかべしんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
良かったけど不思議なところもあり
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とても良かったと思います。十分楽しめました。主人公を前面肯定するのではなく、見方を変えるととても嫌なヤツに見えると、敵役を通して語られるところが作品に深みを与えていました。
ただ、どうしても引っかかったのは、草彅剛演じる柳田格之進が盗難事件の疑いを向けてきた弥吉に約束させるシーンが人間心理に反しているとしか思えないところ。あらぬ疑いをかけられ、身の潔白を証明したいはずの主人公が「もし間違いだったら首を差し出す」と相手に約束させるが、あれはどう考えても不自然。普通あんな風な言い方をすれば、
「もし五十両が見つかっても俺には言うな」と釘を刺しているようなもの。
「怒らないから、五十両がみつかったらすぐに知らせてくれ」というのが、一刻も早く濡れ衣を晴らしたいと願う者の本音ではないでしょうか。
「五十両が見つかったら殺すぞ」と脅して、「はい見つかりました」と言ってくる馬鹿はいるでしょうか?まして、あの形相で本気度をみせつけてしまっては、間違いが判明しても本人にはとても言えないでしょう。
実際、見つかって知らん顔されても仕方のないところ、正直にそのことを告げに来た者に怒りをぶつけるのは理不尽にもほどがあり、とても共感を得られるとは思えません。
古典落語の筋書きだからしょうがないと言えばそれまでですが、もう少し説得力のある脚本にしてほしかったと思います。
しかし、その点を差し引いても十分楽しめる作品でした。それは無駄のない監督の演出と出演者の演技力のたまものだと評価できます。
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