「足裏を揉む間もないぐらいに没入しました」碁盤斬り うさぎさんさんの映画レビュー(感想・評価)
足裏を揉む間もないぐらいに没入しました
映画は平日の真っ昼間に行くことが多いのですが、たいていがらからに空いています。真ん中より後ろの座席で、横の列に誰も坐っていないところの真ん中にどっかと座ります。おもむろに靴を脱ぎ、靴下の上から、足の裏を揉みながら映画を鑑賞します。(横列に誰か人がいればしません。)足つぼではなく、反射区と言われる平面を揉むので、素人でも十分にできます。薄っすらと汗をかくほど、からだがほかほかして効果抜群です。
ところがです。今回は、途中で足裏を揉むのを忘れてしまうほど、物語に没入してしまいました。大好きな山本周五郎や藤沢周平の小説を読んでいるような心地良さがなんともいえません。草彅剛さんの演技がまた素晴らしい。物静かな演技、激高した時の演技、こんなに芝居のできる人だとは思いませんでした。ネタバレになるので、詳しくは書きませんが、結末も文句なしです。変にこねくり回さないのがいいのです。
ただ気になったのは、最後の囲碁での決闘の大逆転のシーン。実力が伯仲しているどうしの囲碁ではまず考えられない展開だと思います。将棋であれば、大逆転は、別にめずらしいことではありませんが、囲碁ではまず考えられないのではないでしょうか。冒頭の小泉今日子への囲碁指南のところで、現実ではありえないと、伏線をはっているのでこれはこれでいいのだろうと思います。
それにしても囲碁も将棋も、賭け事から発展してきたのですね。江戸時代に幕府が保護をしたのは文化に対する造形が深い人が、幕府の中枢に沢山いたということになるのでしょうね。昭和に入って、囲碁、将棋を、賭け事から、すぐれた文化とした社会に認知させて成長させてきた、関係者の努力には頭がさがる思いです。勝ち負けも大事ですが、すぐれた文化としての一面も大切にしていただきたいと思います。柔道がオリンピックの競技になって世界の勝利主義の波に翻弄されているのを見ると、剣道、空手は絶対にオリンピック競技にしてほしいとは思わないですね。どんなものになるのか想像するだけで恐ろしい。
映画とは関係のない話にそれちゃいましたが、お勧めです。ぜひ大勢の人に鑑賞してほしいです。