「これは武士道なのか?」碁盤斬り ガンーカタさんの映画レビュー(感想・評価)
これは武士道なのか?
草彅剛、清原果耶、國村隼ら俳優陣の演技はよかったと思うし、中盤までは楽しめたのですが、途中からの展開に納得できなくてちょっと冷めた目で見ていたので、ラストもあまり感動しませんでした。近くの席でスマートウォッチを何度も光らせて、うっとうしかったおばさんが泣いていたのでよけい白けてしまいました・・・
まず最初で、滞納していた家賃を払うためのなけなしのお金を、一時の感情のまま失うダメさ加減にイラっとしましたが、それは一本気な武士のありさまとして受け入れはしました。しかし中盤のある場面からはあまりにも展開がバカバカしくて脚本家に腹が立っていました。いくつかを列挙すると、
①50両のことを確認するために番頭に言われるまま中川大志が草彅に話をしに行くけど、あれだけ一本気の武士に疑いをかけたらどうなるかは火を見るより明らかなのに、大旦那の了承も得ずにノコノコ言いに行くなんてありえないです。しかも街中で。脳みそないんじゃないですか?
②草彅も疑いをかけられただけで、なぜそれを弁償しようとするのか意味が分かりません。しかも愛する娘を女郎屋に預けてまで。そもそも50両返したら、盗んだことを認めることになりませんか?
③草彅が50両を持って行ったときに、中川に冤罪の時は命をもらう約束をしましたが、その時大旦那の命ももらうといい、それを勝手に中川がOKを出したのでずっこけました。いや他人の、それも命の恩人の大旦那の命を何だと思っているのでしょうか?
④女郎屋の小泉今日子は、足抜けしようとした女郎には鬼の扱いをしたのに、自分が気に入っている清原には甘いんですね。てっきり期日を過ぎたのでそこは約束通り女郎にすると思ったのに、あっさり帰すなんて拍子抜けしました。草彅も武士なのに、都合のいい時は約束をたがえてもあっさり受け入れるんですね。
⑤最後に國村と中川がお互いにかばい合う場面も結果が見えちゃってるので、茶番にしか見えませんでした。だってあの状況で映画のタイトルが「碁盤切り」ですよ。誰だってオチは見え見えですよ。見ていて「あー、はいはい予定調和ですよね」と思っちゃいました。
⑥一番腹が立つのは性悪説の塊の番頭ですが、こいつのせいでトラブルが発生しているのに、大旦那はなぜかクビにせずにそばに置いているのが不思議です。ラストの祝言でも音頭を取っているし・・・
⑦あとは碁会所での殺陣の場面ですが、なかなか草彅に刀を渡さないのは、ハラハラさせるためなんでしょうか。ほかのサンピンたちの一人が渡せば簡単なんですがね。
⑧最後に草彅が清廉潔白なだけではだめだと悟り、お金を藩にいた人たちに渡すために旅立つのだと思いますが、そもそもその人たちは草彅のせいで不幸になったのではないのに、なぜか責任を感じているのがよくわからないです。斎藤工が「お前が藩主に直訴したからだ」とか言っていましたが、いや、お前が草彅を陥れるために画策したことが原因だろうと突っ込みを入れてしまいました。
と、いろいろ書いてしまいました。脚本さえちゃんとしていたらもっといい話になったと思うので残念です。
かばこさん・ヒカリさん>
タイトルに「これは武士道なのか?」と書きましたが、脚本家が武士道を自己流に解釈しているとしか感じられなかったんですよね。映像などはよかったし、役者も頑張っていただけに、返す返すも脚本が残念過ぎました。
私も柳田の行動原理が良く分かりません
他人様には過剰に責任感じるのに、娘には身売りさせて自分のツケを払わせてもOK
自分の沽券とか復讐のために娘を苦界に落とすもやむなし、という思考は特に無理です
TRINITYさん> ま~太郎♪さん>
ほとんど批判ばかりのレビューだったので、「自分はひねくれているのかな?」 とか、「楽しんだ人からしたら不快だろうな」という思いもないわけではないのですが、お二人のように「同感」と言ってもらえると、やっぱり同じことを感じた人もいるんだなーと安心できます。本当にご都合主義の脚本なのには驚きますね。
全て同感です
追加させていただきたい
1.斉藤工、腕を切り落とされた瞬間に改心が早すぎの予定調和
2.除夜の鐘なりはじめてるのに良く走って吉原まで間に合ったね、からの直前で扉しめるんかい!
主人公のキャラ崩壊したご都合主義満載にイライラとまりませんでした
イクミナさん・大吉さん>
切腹のくだりは、私も見ていて一瞬意味が分からず頭の中が「????」となりました。誰も脚本に対して意見って言わないものなのでしょうか? そういう部分では監督や俳優陣一同のプロ意識を疑ってしまいます。
わたしは、草薙が復讐の旅に出かけようと、家を出たところで、中川に声をかけられ五十両を盗んだ嫌疑をかけられ、一晩自分の家で寝て、 切腹しようとするところで????となりました。監督も主役もスタッフも、おかしいと思わなかったのかしら?
冒頭から店賃を滞納したり、それをお絹が嘘をついて誤魔化したり、まったく清廉潔白じゃない。
それで誇りだなんだ言われても…ですよね。
その割に胴元に対して簡単に土下座してみせたり、主人公の信条が分かりません。
番頭が、名乗り出るどころか気配を消してるのが本当に不快でした。
結局言及すらされないし、あれで落着とされても納得できないです。
Route193さん>
はい、江戸時代だからとか、武士だからとかということで、急に腑に落ちないような展開にされても困ってしまいます。感情移入していたのに、一気に感情の幽体離脱をしてしまう感覚です。
タブローさん>
そうですよね。「雨あがる」など、派手なアクションよりも人情的な内容を重視する時代劇もいいものですが、その分脚本がしっかりしていないと、急に現実離れしてしまい、冷めてしまいますね。
大吉さん>
その通りですね。単に本懐を遂げたことの報告をしに行っただけで、それで娘が心から喜ぶとでも思っているんでしょうか? いや女郎屋の女将よりも、父親のほうが鬼です。