配信開始日 2023年3月17日

「ロンドンじゃないよ」ボストン・キラー 消えた絞殺魔 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ロンドンじゃないよ

2023年6月12日
PCから投稿

着衣や街並みや車など時代考証が精妙だった。記者の葛藤や逡巡が描かれ、スポットライトやゾディアックを思わせた。話題になっているShe saidもそうだがこの分野(記者目線の事件簿)は秀作が多い。本作も手堅いつくりだった。
が、おとなしい印象。こぢんまりとまとまった。

個人的なポイントはナイトレイのせいでボストンがロンドンにしか見えないことw。半分冗談だが半分本気で、ナイトレイ=イギリスのイメージが固着しているので、それが街を変えてしまうのだった。そういうエレガンスをもっている人だ。

共演はGBアフターライフに出ていたキャリークーン。姐御役だがナイトレイといると米英競演のように見えた。
男性陣はクリスクーパーはじめいぶし銀ぞろい。
かならず変人や病者を充てられる江頭似のDavid Dastmalchianも容疑者をやっていた。値千金なクセ顔。(奥方Evelyn Leighはすごい別嬪さんです。)

絞殺魔の事件簿であると同時に60年代初頭の性格差を語る映画でもあった。
現代社会では差別に相当する「女だてら」という言葉が使えなくなったが、この映画は早暁な時代に女性記者が女だてらに殺人事件を追う様子が描かれている。かつての女性にとって、すべての総合職においてそれを突き詰めることは挑戦だった。

クーンは42でキーラナイトレイは40だがキャリアはナイトレイのほうがずっと長い。
そろそろ中年期だが、しっとりした深窓の佳人みたいな役が多かったので、気どったセレブを想像していたが、インタビュー動画などで見る素は、饒舌でゲラ笑いするおばちゃんのような人だ。そっちの素なかんじのナイトレイが見たいと思っている。

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津次郎