ヤマドンガのレビュー・感想・評価
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閻魔相手に地獄の国取りだ。 歌・踊り・ラブコメ・ギャグ・アクション・メタネタと、なんでもありすぎて何にも覚えていられない💦
金の事しか頭にない盗人ラジャの、現世と地獄を股にかけて繰り広げられる大騒動と運命の恋を描いたファンタジー・ラブコメディ。
監督/脚本は後にインド映画界を代表する巨匠となるS・S・ラージャマウリ。
「へのつっぱりはいらんですよ」と同じくらい意味はわからんがすごい自信を感じる言葉、”ヤマドンガ”。
我々日本人には全く馴染みのないワードだが、映画を観ているとなんとなくどういう意味なのかわかってくる。
”ヤマ”=地獄の支配者、「閻魔」の語源。
”ドンガ”=盗賊。
つまり”ヤマドンガ”は「閻魔大王をカモにする盗賊」みたいな意。この不思議なタイトル、実は作品の内容をスパッと言い表しているのです。
主人公ラジャを演じるのはN・T・R・ラオ・ジュニア。世界的大ヒットを飛ばしたラージャマウリ監督作品『RRR』(2022)で、主人公の1人・ビームを演じた方ですね。
ラジャの性格はビームとは正反対で、金の事しか頭にない軽薄な泥棒である。しかし、虎から変身するという登場シーンや水の中から飛び出すアクションなど、ラジャからはビームを連想させる要素がチラホラと見受けられる。
そういえばビームの相棒・ラーマを演じたラーム・チャランが主演しているラージャマウリ監督作品『マガディーラ 勇者転生』(2009)では、チャラン兄貴は爆発を背負いながらアクションを繰り広げていた。
ラーマは火、ビームは水というキャラ属性、これは過去作品からの引用であることが、この2作品を見るとよくわかります。『RRR』脳になってしまった同士の皆様には、これらの作品は是非観ていただきたい。
”香港ジャッキー映画×『ビルとテッドの地獄旅行』(1991)”。
これが本作を最も端的に説明する言葉のように思う。
アクションとコメディの塩梅は完全にジャッキーリスペクトだし、地獄のおとぼけ具合は『ビルとテッド』を観ているかのようである。
それらアクション×ギャグ要素に加え、この映画にはザ・インド映画といった感じの娯楽要素がとにかく詰まりに詰まっている。
歌・踊り・ラブコメ・ギャグ・メタ・バトル・ファンタジー…etc。それらが3時間ぶっ通しで繰り広げられるのだから、だんだん頭がボーッとしてきて、終いにはもうなにが何やら訳がわからなくなっている💦カロリー高すぎで気絶寸前🌀🌀🌀
このサービス精神こそがインド映画スピリッツという事なのだろうが、印映画素人には正直キツいっっ!!あまりにも次から次へといろんな事が起こりすぎて、逆に見終わった後は何も覚えていない。
一見トンデモ映画な『バーフバリ』(2015〜2017)や『RRR』がいかに真っ当な劇映画なのか、本作を観ればよくわかると思う。
面白いのはラジャによる地獄の国取り描写。てっきりバトルやアクションで閻魔大王をやっつけるのかと思いきや、まさかの国民総選挙!🗳️
「私が閻魔大王になった暁には、独裁政治を廃止し身分やカーストによる差別を根絶します!!」とぶち上げるラジャの演説は中々に熱い。ちょっとチャップリンの『独裁者』(1940)を意識している感じ。
なんか既視感があるな、と思ってしばし考え込んだのだが、そういえばこう言う展開ってかなり「こち亀」っぽい。そう思って観ていると、だんだんとラジャが両さんに見えてくる。見た目も性格もそっくり。
実写版「こち亀」だと思って鑑賞すると、意外と飲み込みやすいかも。
この地獄総選挙、劣勢になったラジャの下に突然祖父が現れ、会場のテンションがぶち上がるという展開がある。
ここ、唐突すぎて何が何やらって感じなんだけど、なんだかメタネタの匂いがする…。
ということでちょっと調べてみると、N・T・R・ラオ・ジュニアのお爺さんというのは相当の大物だという事が発覚。
お爺さんのN・T・R・ラオさん(1923〜1996)は、インド映画史上最高の俳優の一人としてその名があげられるほどの名優であり、インド南東部にあるアーンドラ・プラデーシュ州(州都はIT都市として有名なハイデラバード)の州首相を3期も務めた凄いお方。
本作公開時は既に故人であったため、アーカイブとCGを駆使して作中に登場させたようです。
ラジャが初登場した時、画面にパチンコかと思うほどにデカデカと「N・T・R」と表示された事を疑問に思っていたのだが、これはJr.自身がスターであるということ以前に、NTRの名がインドにおいては特別なものであるということだったんですね🤔
N・T・R・ラオ・シニアのことを知っていれば、あの場面で唐突にエルヴィス・プレスリーみたいな爺さんが登場してきた意味がわかる。
というか、ラオ・Jr.が選挙に出馬するという展開自体がメタネタであることに気づける。
この辺りのことはインド国内以外ではなかなか通用しないネタでしょうね。今みたいにインド映画が国際的に評価されると思っていなかったからこそのドメスティックな内輪ネタ。そういう空気感が味わえる、中々貴重な一本だったように思います。
あ、そうそう。
もう一つ述べておきたいのは、登場する女性たちの美しさ✨
ラージャマウリ監督作品に出てくる女優はみんなとびきりの美女ばかりだが、今作はそのなかでも飛び抜けていたかも。
特に、金貸しの女性ラクシュミを演じていたマムタ・モハンダスさんはちょっと異次元の美しさ。作中でも絶世の美女として扱われていましたが、それにも納得の美貌の持ち主です😍
もしかしたら世界で一番美しいかも。なんでもっと有名になっていないんだ?
とまぁ事程左様に、見どころがない映画ではない…というか見どころしかない映画である。ただこれだけ見どころだらけだと、どこを見れば良いのかよくわからん。
一気に観るとしんどいので、たっぷり休憩をとりながら、2日に分けて観るくらいの感じが吉なのかも。
なにはともあれ、ラージャマウリ監督作品なんだから鑑賞はマスト。
2023年8月現在、多分どこのサブスクでも配信されていないし国内版のソフトも発売されていない。鑑賞チャンスに恵まれれば、それを絶対に逃してはいけませんよ!!
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