劇場公開日 2023年10月20日

「中島健人の巧演が光る骨太政治サスペンス」おまえの罪を自白しろ みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0中島健人の巧演が光る骨太政治サスペンス

2023年10月24日
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鑑賞方法:映画館

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知的

予告編で予想した作品ではなかった。迫力とスピード感溢れる面白い骨太政治サスペンスだった。ある政治家の孫娘誘拐事件を主軸に、建前と本音、虚々実々の駆け引き、権力闘争、サバイバル戦、騙し合い、等々の権謀術策がもつれ合い、絡み合いながら、展開されていく物語は、生々しく、赤裸々で、人間の業を剥き出しにしているが、臥竜点睛を欠いた終盤が惜しまれる力作である。

政治家家系の宇田家の次男・晄司(中島健人)は、設立した会社が倒産し父親の国会議員・清次郎(堤真一)の秘書となったが、悶々とした日々を過ごしていた。そんなある日、長女・麻由子(池田エライザ)の幼い娘が誘拐される。犯人の要求は身代金ではなく、記者会見を開いて清次郎の罪を告白しろというものだった。それは現政権を揺るがすほどの大きな政治スキャンダルであり、権力の座に固執する清次郎は告白を拒否しようとする。晄司は、幼子の命を救うため、罪の裏に隠された真実を暴き出そうと奔走していく・・・。

晄司は、当初、政治の世界で、権力の厚い壁に阻まれながらも、懸命に真実を究明しようとする。正義感を貫いて一心不乱に権力と戦っていく。しかし、彼は、次第に権力構造を熟知し、戦い方を変えていく。強かな政治家に変貌していく。権謀術策を駆使して相手を凋落していく。最初は幼子の命を救うという純粋な気持ちが、自らが権力構造のなかで、のし上がっていくという野望を持つ気持ちに変わっていく。純粋な理想を持った若い政治家が、権力構造に何度も跳ね返され、次第に、理想が野望に変わっていくように。

終盤。誘拐事件は解決するが、犯人、動機は、普通の犯罪ドラマになってしまう。それまでの骨太政治サスペンスという作風が消えてしまう。ラストは、失脚した父親の跡を継ぎ国会議員となり、国会で質問する晄司の野望に満ちた眼差しに凄味を感じたナイスエンドだっただけに惜しまれる終盤だった。

全編を通して首尾一貫した作風で描いて欲しかった。

みかずき
光陽さんのコメント
2023年10月29日

この映画、サスペンス要素や家族物語などいくつかの要素があったと思いますが、僕もみかずきさん同様主人公の野望の物語としての視点で観るのが一番面白いと思いました。

光陽
おじゃるさんのコメント
2023年10月28日

みかずきさん、共感&コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、社会派政治サスペンスとして最後まで描き切ってほしかったです。そうすれば、次男の野望編としておもしろそうな続編が期待できそうなのに…。残念です。

おじゃる
Bacchusさんのコメント
2023年10月27日

コメントありがとうございます。

私はサスペンスになると辻褄が気になってしまい、是々非々ではなく非ばかりになってしまいますので、寧ろつまらない見方をしていると自分では思っています。
残念ながら直せませんけどw

Bacchus
グレシャムの法則さんのコメント
2023年10月25日

確かに、次男の成長(野心的な政治家になることが成長といえるのかどうかはおいておきます)を軸に見たほうが深みのある作品になりますね。
次男の資質を見抜いた父親の眼力とその片鱗を端的に示す次男のエピソード、嫉妬に駆られる長男との絡み、などを膨らませて2時間の作品にすれば、犯人のショボい点もあまり悪目立ちしなくて済んだように感じました。

グレシャムの法則
ゆきさんのコメント
2023年10月25日

どうしましょ。。予告より、フライヤーより、みかずきさんのレビューの方が面白かったです(°▽°)
私は、犯人の動機がそれ?!自業自得では?!とがっかりだったし、もっとハラハラする展開を期待していたので、少し残念に思いました。

ゆき