「「政治ネタ」の取り込み方は巧みだが、「推理もの」としては肩透かしを食う」おまえの罪を自白しろ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「政治ネタ」の取り込み方は巧みだが、「推理もの」としては肩透かしを食う
政治家による利益誘導や政治家同士の足の引っ張り合い(しかも同じ政党内!)など、いかにもありそうな感じの「政治ネタ」を誘拐事件に巧みに取り込んでいる前半は、なかなか面白い。荒川とか、上尾とか、戸田とか、実際の地名が出てくるところも、やけに生々しい。
しかし、でっち上げの記者会見でおびき出された真犯人が明らかになると、それまでの話がほとんど伏線として活かされていないことに呆気にとられる。
もしかしたら、橋の建設地の変更ではなく、過去の談合事件のもみ消しの方が、誘拐犯の動機に深く関わっているのではないかと考察していたのだが、そもそも犯人を予想するような「推理もの」でなく、後出しジャンケンのような展開に肩透かしを食う。
当初、期待していたような「政治の暗部をえぐり出す」とか「巨悪を暴く」とかといったスケールの大きな話でもなく、勧善懲悪のカタルシスもない。
何よりも、最初から、(周囲のマンションから見られる可能性の低い)雨の日の夜に、河川敷に埋めた遺体を掘り起こしていれば、わざわざ誘拐事件を起こす必要もなかったのではないかと、犯人達の間抜けさが気になってしまった。
結局、ラストは、主人公が二世議員になるという、日本の政治の現状を容認しているかのような結末で、物足りなさを感じざるを得ない。
しかも、彼は、日本の政治を良くしたいという高い志を持っている訳ではなさそうだし、それどころか、辞めていく総理から新しい総理になんなく乗り換えるような、したたかな処世術の持ち主なのである。
狡猾で権謀術数に長けた彼は、父親以上に悪い政治家になるような予感しかなく、日本の未来に希望が感じられないエンディングには、どこか後味の悪さが残った。