劇場公開日 2023年6月16日

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「観たい度○鑑賞後の満足度△ 現代ではどうしても流血とアクションが必要らしい。だが其よりも残念なのは、マーロウものを読んだ後に去来する寂寥感と何よりもマーロウの孤高さが決定的に欠けていること。」探偵マーロウ もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0観たい度○鑑賞後の満足度△ 現代ではどうしても流血とアクションが必要らしい。だが其よりも残念なのは、マーロウものを読んだ後に去来する寂寥感と何よりもマーロウの孤高さが決定的に欠けていること。

2023年6月16日
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鑑賞方法:映画館

①私の愛するアガサ・クリスティの作品(『オリエント急行の殺人』)を”実に馬鹿馬鹿しい“と思いっきりぶったぎってくれたレイモンド・チャンドラー。
でも私、そんなレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウものも大好きです。少し前に『プレイバック』を読み終わって、これで短編集以外は全長編を読了。
②で、そのチャンドラー原作ではないマーロウもの。別の作家が書いたものが原作らしいけど、その原作は『長いお別れ』の続編らしいから1950年代が背景の筈だが、映画化に際しては時代背景を『チャイナタウン』と同じ1930年代にしている。
はてさて如何なるフィリップ・マーロウ像、如何なるハードボイルドミステリー映画になるかと、興味半分、心配半分にて鑑賞。
②リーアム・ニーソンは柄としてはマーロウに相応しくないこともない。原作にマーロウは「背が高い」と書いてあるから。
ただ、30年代のマーロウにしては年取りすぎ。
それに所々マーロウらしさがみられるシーンもあるが全体的に見てやはり似て非なるもの。
走ったりするシーンも年齢が出てちょっと痛々しい。
③ダイアン・クルーガーはキレイだが30年代ハードボイルドミステリーのファム・ファタール役には不似合いであった。角度によってはちょっとキャロル・ロンバートに似てるところもあったが。
④そういう意味では母親役のジェシカ・ラングが若ければピッタリだったかも知れない。
まあ、彼女のキャスティング自体がある種のオマージュではあるのだが。
⑤ハリウッド製ハードボイルド映画へのオマージュがあちこちに散りばめられているのを見るのは楽しい。
それが本作の魅力とまで成っていないのが残念。
特に『チャイナタウン』へのオマージュはあまりに露骨過ぎて笑っちゃうくらい。
ハンソン役にジョン・ヒューストンの息子のダニー・ヒューストンをキャスティングしているところとか。
ニコの収集品の中に“マルタの鷹”があったりとか、その他諸々。
⑥監督はニール・ジョーダンなので演出には安定感があるし、前半の緩やかに事件の核心に迫ってゆくところはハードボイルド映画として悪くないけれども、後半はマーロウものファンとしてはちょっとビックリの展開(原作もそうらしいけど)。
事件の真相も暴いてみると、結局金と権力と野心絡みの事件で、それへの社会批判的な視点と、事件に巻き込まれた人間達への冷徹だけれども寄り添うようなマーロウの視線が欠けているのも物足りない。
⑦ミステリーファン、オールド・ハリウッド映画ファンとしては、もっと酔わせて欲しかった。
追記:アラン・カミングはつまらない役。こんな役引き受けなきゃ良いのに。

もーさん
pipiさんのコメント
2023年6月17日

改めて再考してみましたが、肝心の「孤高さ、寂寥感」はラスト改変の為に失われた、と思いました。
その部分については、原作の「とんでもラスト」の方がハードボイルドの系譜を受け継いではいたわけです。(「長いお別れ」を台無しにしたってだけで、ストーリー展開としては悪くはなかったかもです。続編にせず完全なオリジナルストーリーにすれば良かったのかも)

アラン・カミングについても、本作のラスト改変が「つまらない役」にしてしまいました。
原作通りなら「カメオ出演」みたいな扱いに出来たかもしれないです。

ヒロインと親子ほども歳が離れていては「赤信号で停車していたら偶然に車数台の玉突き事故に巻き込まれた」みたいなストーリーにしかならないですね。
脚本に無理があったとの結論に至り0.5下方修正しましたー。

pipi
pipiさんのコメント
2023年6月17日

そうなんですよねー。
たしかに、もーさんさんの仰る通りで、もう少し描き方があったんじゃないか?って思いはあります。
期待が大きかった分余計にですよね。

リーアムとジェシカが25年前に本作を演ってくれたならまるで違った名作になった事でしょう。もちろんジェシカがヒロインで。

後半はびっくり展開でしたが、原作はまた「全然違うびっくり展開」です。「長いお別れ」を台無しにするレベルの。だからラストは本作の方がまだマシかも(苦笑)

pipi