「春はピンク、ピンクは虹スペクトラム。本当は誰もがはざまを生きている」はざまに生きる、春 いも煮さんの映画レビュー(感想・評価)
春はピンク、ピンクは虹スペクトラム。本当は誰もがはざまを生きている
カウンセラーをやっている友達に言わせると芸能界なんてアスぺ(アスペルガー症候群)の人ばかり。グレーゾーンが多いのよ、とのこと。(マジか?!)
つまり人より抜きん出て世に認められ、人気を得るというのは “フツー“ ではダメなのだ。
映画コンテスト“感動シネマアワード”にて大賞を受賞した本作は主演の宮沢氷魚ありきで作られた。だからこそ彼の魅力が隅々まで感じられる。
はざま(グレーゾーン)には生きていない屋内透は青ばかりを好む発達障害を抱える画家。
映画冒頭で公共施設(マンション?)の壁にいきなり群青のペンキを手の縁でハートのような形に塗りたくり「光を閉じ込めた」と笑顔の透にはまったく周囲の困惑が見えていない。
こういうのあるあるなんだろうなぁ、と思わせる。確かに彼の壁画はとても素敵に映るけど。
一方で建物の管理人がやってきて「許可もなく困る」と言われて頭を下げる小向春は一見、ちょっと気が弱い雑誌編集者。
だが、物語が進行するにつれて「はざま」に居るのは透ではなく、この春なのでは?と疑念が湧いてくる。
屋内透が障がい者手帳を出して割引で施設に入れることを春に告げる場面で初めて春は透がグレーゾーン(はざまの人)ではないことを知る。
自分の左側に人がいないとダメという徹底的なこだわりを持つ春。そして、同棲中の恋人がいるにもかかわらず当たり前のように朝帰りをする春。ここでも春は透に夢中になり過ぎるあまり現実が見えてない状態だ。
帰宅して初めてそこにいる恋人に気づいたかのよう。
つまりグレーゾーンは春自身。
または「自分は “フツー“ と思ってる観客」に問われるわけ。その “フツー“ とはどこに線引きがあるのかと。
葛監督は実体験をもとにこの作品を書いたとのこと。ご自身が恋をした相手が発達障害を抱えていて、その真っ直ぐなところに惹かれる反面きっと辛いこともあったのだろうと憶測する。
春の持つイメージ色のピンクは物理学ではまさに存在しない不確かな色(赤と紫のはざま=虹色スペクトル)なのだ。
終盤、美しく咲いた桜のピンクはあいまいでもなんでも良いではないか、広い心で受け止めあって行こうよ、という象徴に私には見えた。
宮沢氷魚くんが「エゴイスト」についで透明感キラキラで上手くって、画も美しくってそれだけで見てられるので4.0です!