劇場公開日 2024年10月11日

「中々いい映画」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ 荒川ラリーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0中々いい映画

2025年2月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

私はアメコミファンではないので、ジョーカーというキャラに特別な思い入れはありませんし、アメコミに関する十分な知識も持ち合わせてはおりません。しかし、そのような門外漢でも、前作はシリアスなドラマとして十分楽しむことができ、満足のいく映画体験ができました。こうした前作の思い出が頭のかたすみにあったので、今作の情報が解禁されたときには、公開日を今か今かと待ちわび、期待に胸を躍らせておりました。
結論から言うと、とてもいい映画だったと思います。社会のどん底にくすぶって男が、憎悪という負のパワーを原動力にのし上がっていくという、前作のピカレスクロマン的な趣きから一転して、今作では、自身の作りだしたジョーカーという虚像が、他者を愛することによって皮肉にも崩れ去っていくという、まるで合わせ鏡のような構造になっています。ですので、両作合わせてみると、アーサーという一人の人間の栄光と転落が、悲喜劇としてうまくまとめ上げられていると感じました。またミュージカルという特殊な物語の構造も、彼が頭の中に思い描いた虚実入り乱れた世界観が、映像として大変面白く視覚化されていたと思います。
ただ、前作がどん底から上へ上へとのし上がっていく熱い物語であったのに対して、今作は、頂点から下へ下へと転がり落ちていく物語になっています。ですので、後半に進むにつれて、どうしてもジョーカーのキャラとしての面白さがぼやけ、盛り上がりに欠ける展開になってしまったように思えます。
とは言え、そもそも前作とは趣向を異にした作品ですので、単純に比較することはできません。この映画はこの映画でいいところがたくさんありましたし、なにより、こうしたチャレンジングな作品は、劇場公開のリアルタイムで見てこそ、賛否の評価含めて楽しめるものだと思います。ですので、私としては大変満足のできた作品です。

荒川ラリー