「アーサーが可哀そうすぎて…。」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ ゆうじんさんの映画レビュー(感想・評価)
アーサーが可哀そうすぎて…。
暗いなりに不思議とカタルシスがあり、そこが怖いところでもあった前作ですが、続編のこちらは前作以上に暗い。「何見せられたんだろう…」という鬱状態になる映画でした。
前作が悲惨な境遇の男がダークヒーローにのし上がる話なら、こちらはダークヒーローが悲惨な境遇の男に戻る話。ミュージカル仕立てで、お祭り騒ぎのような場面が随所に挟まれている分、現実に戻った時の落差がえぐい。ラストシーン付近で、「歌はもういい」というセリフがありましたが、視聴しているこっちの気分がまさにそれ。
ジョーカーから逃げようとしても逃げようとしても、逃げられず、最後はあっけなく殺されてしまうところからの、「これが人生」と歌い上げるアップ調のミュージックとエンドロール。自分の人生から逃げず、チャレンジを促すような明るい歌詞が、ストーリーに対する皮肉っぽく聞こえて本当にしんどかった。アーサーのような境遇だと、チャレンジもできない、人生に立ち向かうこともできないと思うので…。
夢と虚構、現実がまじりあうストーリー構成は悪くないと思ったのですが、支援の手を伸ばしてくれた人がいるにもかかわらず、大衆にそそのかされるようにジョーカー像にしがみついたあげく、結局耐え切れなくなって味方が誰もいなくなってしまうアーサーがひたすら可哀そうな映画でした。旧作の証言してくれた同僚があいかわらず素直ないい人で、唯一の癒しだったかも。
※話はやや脱線するけど、Xシリーズのパールなんかは、異常性まるごと愛してくれるパートナーと添い遂げているので、周りがジョーカーしか見てくれなかったアーサーと比べれば割と幸せな生涯だったんだなと思った。