「目が全てを物語る」マッドマックス フュリオサ regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
目が全てを物語る
アニャ・テイラー=ジョイが若きフュリオサを演じると知った当初こそ、「シャーリーズ・セロンと似てないし、何より線が細すぎるんじゃ…」と違和感を感じた。でも初予告編及び本編を観たら、あの“目力”、ウォーペイントを施した事でより強調されたあの目に持っていかれた。シャーリーズはオスカーにノミネートされなかったが、アニャは十分されてもいい気がする。セリフ量は少ない分、あの目が全てを語っている。
もっとも期待値が高すぎたゆえか、気になる面があったのも事実。シンプルなストーリーでランニングタイムも2時間弱だった前作かつ後日譚の『フューリーロード』に対し、本作は2時間超えかつストーリーも入り組んでいる。前作を観ている人や『マッドマックス』サーガを観ている人への目くばせも、ちょっとあざとく感じなくもなかった。あとこれは内容とは無関係だが、R15+レイティングだった前作よりも、PG12の本作の方が観ていてちょっとキツイ面も。
ただそんなのは些末事で、終始あったのはハラハラドキドキ感。なんといっても影の主人公であるクリス・ヘムズワース扮するディメンタス将軍に尽きる。数台のバイクを馬に見立てて馬車のように操る、勇壮と頭の悪さが渾然一体となった威風堂々ぶりが最高だし、配下の部下達のヒャッハーな中二病センスもイチイチたまらない。とにかく今回も衣装デザインや世界観、小道具の細部に至るまでDIYを凝らしたビジュアルに驚かされたし、ウォータンクを軸にしたカーチェイスバトルも見応え十分。ラストのケリの付け方は神話を重んじるジョージ・ミラーらしさを感じた。
荒木飛呂彦が「もう『ジョジョ』しか描かないし『ジョジョ』しか描けない」と宣言したように、ミラーにも『マッドマックス』道をとことん極めていってほしい。でももし次作がディメンタスの前日譚とかだったらどうしよう。ま、それでも観ちゃうだろうな。