「伝説マッチョオヤジと闇クズ男と戦乙女」ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い vanquishさんの映画レビュー(感想・評価)
伝説マッチョオヤジと闇クズ男と戦乙女
槌手王ヘルムの存在が際立って面白くマッチョな王であることが
ローハン統治に有利であることが分かるのだ。
この世界、家臣をワンパンで撲殺してしまう王は仕方がなかったのだろう。
より強い王が求められていたし、暴力で物事を解決するのがこの世界のやり方だった。
しかし、それは時として自分にも向けられて来ることは歴史の趨勢が示している。
槌手王ヘルムは死に場所を求めていたから弁慶の仁王立ちで絶命してしまった。
そんな王の最期は英雄的であることを求められていたのだから我々の感覚で語る
ことが不毛だろう。
そんなこんなでヘルム王から全権委譲されてしまった王女ヘラは外部との
連絡を取るため大鷲とのコンタクトを思いつく訳だ。
ヘラがピッケルとアイゼンで氷壁を登る姿は現代的だ。
自然に対する鋭い観察眼と言い伝えを信じる謙虚さが状況の打開を生み出した。
騎士道のかけらもないウルフとの決闘に花嫁姿で臨むヘラに
無粋な事を云うウルフはだからモテないのだよ。
このウルフという人物どうやったらこんな残忍で卑怯な性格になるんだ。
幼少期のウルフとは大分違う闇クズ男になってしまった。
恋愛は格差がありすぎると成立しない。ウルフは闇に落ちヘラは高潔だった。
下半身がムチムチ成熟で叡智なヘラにウルフが求婚するのは間違っていないよ
普通の感覚ならヘラを手に入れることに固執するはずがウルフは拗らせている
馬の表現に愛情が感じられて良い。ヘラの愛馬が敵から飼い葉を貰うのが可愛い
今まで愛馬を駆けて幸せに暮らしていたヘラにとって、男達は災いの種で
しかないと思えるほど人生を変えられてしまった。
父親を失い、兄二人も失い、仇の幼馴染みも殺さなければならなかった。
冷静に考えると凄まじい人生で、良くも悪くも王の娘として生まれて来てしまった
現代的な女性の苦悩を描いているような気がする
やたら強い侍女のオルウィンが盾の乙女で実質彼女に育てられたヘラがただの
可憐な姫君になるはずもなく解決策を模索する様子が好印象
最後は侍女のオルウィンと旅に出るのも現代的で自由な女性像を示している
原作は読んでいないが、名もない姫君をよくここまで話を膨らませて作ったと思う。
神山監督の描く強い女性というのは不思議な魅力を持っている。
脚本が多少難ありでも、また観たいと思わせる現代的な強さを描いているからかもしれない。