「スポ根脳の行き着く先。」チャレンジャーズ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
スポ根脳の行き着く先。
映画に夢中になる人生を生きてきて、何度かふと、自分の人生が映画みたいだったら映画なんて必要なのだろうか?と思ったことがある。映画を物語と言い換えてもいい。この映画のタシも、なんなら自分がスポ根もの超カッコいい主人公であると信じて生きてきたのに、不慮の事故と負傷で主人公を降りざるをえず、半ば無意識のうちにファイヤー&アイスの二人に「てめえらが最高の物語を見せろ!」と要求してしまっている。そんなのは他人のわがままであって、ファイヤー&アイスの二人はそこまでの器でもなければ、むしろタシの観客となるべきだったのに、タシの期待に翻弄されて右往左往することになる。これをラブストーリーだと言われるとピンとこないが一種の三角関係ではある。とにかくスポ根マンガのクライマックスの試合とか、ケンシロウとラオウの最終対決とか、そういうものに燃える人たちが主人公の役を押し付け合ったあげく、当人たちの思惑を越えてなんかやたらと燃える試合が実現してしまったわけで、ケンシロウとラオウとユリアとか、上杉兄弟と朝倉南とか、竜児と菊と剣崎とか、いろんなものにもなぞらえられる気がする。そんなスポ根的宿命の対決萌えで一本の映画ができる!と思った脚本家は、おそらくスポーツそのものよりスポ根に熱狂する心理について描いているのだと思うし、バカみたいに大仰なルカ・グァダニーノの演出もその思惑にピッタリである。まあ、ゴールはそこになるよねという話ではあるので、その先に想像の及ばない境地まで連れ出してくれたらさらにすごい傑作になった気がするが、そもそもそういう趣旨ではないというか、ないものねだりというものわかってはおります。