「このお姫様は、生粋の腐女子だったようですねえ」チャレンジャーズ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
このお姫様は、生粋の腐女子だったようですねえ
2024.6.13 字幕 MOVIX京都
2024年のアメリカ映画(131分、PG12)
女性テニスプレイヤーを巡る二人のテニスプレイヤーを描いたラブロマンス映画
監督はルカ・グァダニーノ
脚本はジャスティン・クリツケス
原題の『Challengers』は、劇中に登場するトーナメントの名前をもじったもの
物語の舞台は、アメリカのニューヨーク州ニューロシェル
そこでは全米オープン出場を賭けたトーナメントが行われていて、決勝のカードはアート・ドナルドソン(マイク・ファイスト)と彼の元親友のパトリック・スワイグ(ジョシュ・オコナー)だった
二人の試合を見守るのは、アートの妻であり、パトリックの元カノでもあるタシ(ゼンデイヤ)で、その勝敗の行方には「あること」が隠されていた
彼らの出会いはジュニアの頃で、当時ジュニアの絶対的な王者だったタシに、アートとパトリックは恋焦がれていた
ダメ元で部屋で会わないかと誘ったところに彼女は来て、明日の試合で勝ったほうに電話番号を教える、と挑発する
翌日はジュニアの男子決勝で、当初はアートの祖母を喜ばせるための八百長をするつもりだったが、パトリックは手を抜くことなく、タシの番号をゲットした
アートはセックスしたら合図をしろと言い、それはアートのサーブを真似するというもので、パトリックはそれとなく関係を伝えることになった
それからタシはパトリックと付き合うようになり、もともとコーチ志望だったタシは、あれこれとパトリックに意見を言うようになっていく
だが、パトリックはテニスに口出しされることを嫌い、それが原因で大喧嘩になってしまった
喧嘩別れすることになり、その影響でメンタルがボロボロだったタシは試合中に膝を痛めてしまい、選手生活を断念せざるを得なくなってしまう
そして、その後アートはタシを支え、そして結婚へと至る
タシはアートの専属コーチとなり、二人は二人三脚でツアーを戦っていくことになったのである
映画は、かなり時系列が入れ替わりまくる内容で、あっち行ってこっち行ってを繰り返していく
基本的にはニューロシェルの決勝の間に回想録が入っているだけなのだが、回想録のなかでも何回も微妙な時系列が変化していくので追うのが難しい
ニューロシェルでふたりが対戦することになったのは、自己流で伸び悩んで地を這うパトリックと、選手としてのピークを迎えて成績下降しているアートが同じようなところにいたからだった
その試合に勝って、表舞台に出ようとする目論見があるのだが、アートはこの試合を最後にしようと考えていた
だが、タシはこの大会に勝って、もう一度自信を取り戻してほしいという願いがあり、パトリックと駆け引きをすることになる
そして、そこで得た代償というものが、試合の中で暴露される、という流れになっている
このあたりの伏線の回収が面白い映画で、浮気して元恋人と寝る妻に愛想を尽かすアートと、めんどくさくてヤバいから体の関係だけでよいと思っているパトリックが、「タシの押し付け合いをする」という感じになっている
だが、そんなことも露知らず、タシは自分のために二人が戦っていると思い込んでいて、そこで「試合中にトリップしたときに発する言葉:Come On!」と叫んでしまうのである
いずれにせよ、ラストの「Come On!」の意味がわかれば「タチの悪いブラックジョーク」になっていることがわかる内容で、頭の悪いお姫様を揶揄する映画となっていた
このあたりに底意地の悪さが露見しているが、監督の表現としてはとてもマイルドな部類であるように思えた
テニス要素は設定程度になっているが、そこまで難しいシーンはないので、男を翻弄してきた女が逆襲される、というテイストを感じられればOKなのだろう