バービーのレビュー・感想・評価
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〈私〉至上主義ではバービーの鬱は治らない
本作をみてジェンダー不平等の現実を感知して、エンパワーメントされた経験は何にも代え難い。これほど多くの人々に観賞された事実も大きな意義があると思う。
しかし本作をみて、現代の問題が的確に描写されて、万事解決とされるならそれは困る。少なくとも私は本作をフェミニズム映画とは言えない。そうしてしまったらアニエス・ヴァルダやケリー・ライカートの仕事を、そして今も闘っている人々を無視することになってしまうから。
「バービーが女性の地位を向上させた」
私はバービーランドをオルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』のようにすばらしいディストピア世界とみたから、上述のセリフも大いなる皮肉だと思っている。もちろんそうであって、女性の地位を向上させたのはバービーといった「人形」ではなく、現実に闘った「人」である。
フェミニズムの「運動」が洗われている。バービーランドでは定型のバービーと同等にアフリカン系やアジア系、肥満体型や車いすのバービーが存在している。もちろん彼女らが同等に存在していることはすばらしいことだ。しかし浅はかな多様性とも思ってしまう。まさか自明に存在していたとでも言うのだろうか。バービーを産み出したマテル社の企業努力とも?そして彼女らの間には同じ「女性」だから何も問題がないとでも?
そんなわけがない。定型以外のバービーが存在できるようになったのは、アフリカン系のフェミニストの運動の成果だし、障害者運動やボディー・ポジティブの運動も起こったからだ。そして現在は同じ「女性」でも人種や階級、宗教、世代、障害などの差異の尊重と連帯が問題になっている。それは「インターセクショナリティ」という概念で記述され、今なお議論されていることである。
もうひとつバービーランドがディストピア世界と思うことがある。
それはケンが現実世界でホモ・ソーシャルを学び、「Kengdam」という王国をつくるが、バービーらが闘って元の世界を取り戻したとき、ケンのアイデンティティーを回復するためにバービーが放つ言葉である。
「ケンはケン」「自分でいることが幸せ」
〈私〉は〈私〉であって、〈私〉であることは幸せ。グロテクスだと思う。〈私〉であることの根拠が〈私〉でしかないことに。この自己参照。関係するのは〈私〉だけ。それは男といった他者や母といった役割、仕事によるアイデンティティー獲得からの解放にも思えるが、とても残酷だ。〈私〉を構成するのは何なの?もし〈私〉に何もなければ、または根拠を摩耗したら何を参照することになるの?
バービーの鬱は治らない。バービーランドを取り戻したとしても、この「〈私〉至上主義」からは解放されない。むしろその果てで〈私〉が死ぬ。バービーのプライベート空間であるハウスは、別のバービーに開かれていてー悪く言えば相互監視だー、バービーである〈私〉とバービーである〈あなた〉の境界はなくなる。みんな名前がバービーなのだから。
〈私〉はバービーであって、〈あなた〉もバービーである。〈私〉であることは〈あなた〉であることであって、それは幸せ。
私は気が狂うと思う。
気を狂わせないためには「ダブルシンク」をしなくてはいけない。グロリアのスピーチで語られた現在の女性の状況のように。ジョージ・オーウェルの『1984年』のように。でも「ダブルシンク」は鬱を治さない。
スピーチ=言論が洗脳を解くためには重要だ。けれどもうケンとの闘い方で「バカなふり」とかやめてほしい。いつの時代の誰のフェミニズムの闘い方ですか。そしてバービーが仕事でアイデンティティーを獲得するふりをして、産婦人科に行く結末も。もっと闘いは切実だ。それこそ法の逸脱が必要だし、死と触れあっている。だからケンたちの「ごっこ遊び」の闘いで終わらせてはいけないんです。
私たちはバービーランドをみて、ジェンダー不平等の現況を感知しなくてはいけない。と同時にバービーランドではない別の仕方の世界を創造/想像しなくてはいけない。その「ダブルシンク」が求められている。そしてそれを現実に反映させる運動が。そこまでの射程があるなら本作はアカデミー賞の作品賞に相応しいし、グレタ・ガーウィグが監督賞にノミネートされていないことは抗議してしかるべきだ。
ただ私はそもそもファーストシーンで人形を宙に投げることからアヴァンクレジットに繋げる仕方があまりにもダサいと思っているから、複雑な心境にいる。
アホになれれば楽しいはずが、フェミニズム要素で我に返る
マテル社公認映画でありながらいわば自虐的描写てんこ盛りなのはさすがハリウッド映画。廃盤バービーへのツッコミや男だらけの役員メンバー、一人ずつ壁で囲われて閉鎖的なオフィス空間。
なんだかゆるーく行き来できてしまう、現実世界とバービーランド。陽キャが過ぎてどこかシュールなバービーランドの住人たち。この辺はB級すれすれのノリというか、根底に流れるフェミニズム的テーマがなければ完全にB級と言ってしまいたい雰囲気だ。
世界のピンク塗料を枯渇させた、ガーリーにむせかえるようなバービーランドのセットはなかなかの見応え。バービースタイルでないと着こなせないようなファッションを次々びしっと決めてみせるマーゴット・ロビーはさすがの美しさ。ある意味狂気じみたケンというキャラを徹底的にやり切るライアン・ゴズリングも見どころだ。
こういうノリの映画は深く考えずに見られればアホになれて楽しいのだが、これだけフェミニズム色が濃いと、あれこれ考えてしまわざるを得ない。
(この辺さまざまな見方があるかとは思いますが、私個人が素直に感じたことです)
まず感じたのは、バービーランドにおけるケンたち男性の立ち位置は、現実世界における(少し古い時代の)女性の立ち位置をそっくり表象しているということだ。バービーに比べるとはるかに個性に欠け(ると見做され)、バービーランドという社会においてはバービーの付属物としか見られず、軽視される存在。
物語の中で、人間の世界に行って男性が活躍する姿を見たケンは、バービーランドに人間界の男性観(マチズモ限定)を持ち込む。そしてバービーランドの憲法を変えようとするが、バービーに煽られ男性同士の対立にかまけているうち憲法改正を阻止される。憲法改正は出来なかったが、バービーの「ケンはケン」と個性を認めるかのような言葉に満足する。さらにバービーは「ケンたちもそのうち力をつけるでしょう」(だっけ?)みたいなことを言い放つ……
それでいいのか?
フェミニズムは男女同権主義に立脚するはずだが、バービーはケンたちと共同で新たな憲法を制定したりはしない。彼らを(バービーランドの)法的には元の社会的に劣後した立場に戻し、バービーがケンに個人的ガス抜きをしただけで解決扱い。
これが男女逆ならば炎上案件になりそうだ。
純粋にバービーランドの中のケンだけを見れば、生まれながらに女尊男卑の世界の弱者なのに、本作のケンに対する扱いは、現実の男性優位社会へのカウンターになっている。
そもそもバービーの世界観の起源自体が、女児向けの玩具という性質上女性優位なので、男性の存在が空気にならざるを得ないという側面はある。男の人形に凝ってみたところでマジョリティには売れないということなのかもしれない。
だとしても、目覚めたケンの描写が現実世界の男性への偏見に満ちている様子には少々うんざりした。私自身はそういうことに人一倍神経質というわけではないつもりだが、多様性を押し付け……もとい標榜するポリコレの聖地アメリカの作品が、特定の属性(男性)を「現実界の男といえばマチズモ、馬、『ゴッド・ファーザー』を語りたがる」などと一括りにする、そのダブルバインドぶりにちょっと白けたのだ。
今の時代に女性の主体性や多様性を描くのに、そうやって他の属性を雑にまとめて貶める必要があるのだろうか。
終盤でグロリアが羅列する”女性を縛る不自由さ”の内容に、女性特有の問題ではなさそうなものが混じっていたり、頭脳労働的な職業とウェイティングスタッフのような職業の扱いに軽重が見られたりと、ケンの扱いで首を傾げたことをきっかけに他の重箱の隅も気になり出してしまった。
頭バービーなノリと、嫌でも目に入る定型のフェミニズム的メッセージのギャップを行き来して、思った以上に脳みそが忙しくなる映画だった。
パロディーなのでお気楽に
のっけから、かの有名な名作映画のパロディーからスタート。そして赤ん坊の人形を叩き壊すシーンからして、ああ、この映画見て怒っちゃ負けなんだな、と思いました。みんな、「2001年宇宙の旅」は知っているのでしょうか。
性差別とか男社会に女性軽視の問題とか、よくある議題の真面目なテーマが紛糾しそうですが、ありがちな話だと聞き流して、まっピンク色のビジュアルを素直に楽しむ、ポップコーン映画として見れば良いかと思います。そもそも人形遊びなんてしたこと無いし、リカちゃんならともかく、バービー人形なんてしらないけど、お祭り騒ぎの映像を気楽に楽しむだけなら、バラエティーな映画として十分役割を果たしているかと。
でもわずかに見せるリアルな美しさを魅せるシーンもあって、そこまでふざけた映画でもなかったと思います。バービー創始者を登場させるところは流石。
でも、スタッフロールに入る前の本物のバービー人形達はちょっとしたホラー。最初に魅せられなくて良かったw 音楽とか、スタッフロールのピンクのフォントも素敵ですね。やっぱり最後まで席を立たずに見てしまった。
みんな違ってそれでいい、の裏と表。
監督としてのグレタ・ガーウィグがこれだけのバジェットの大作映画の準備が整っていたかは、正直微妙だったかもと思う。美術や衣装のクオリティに比べて映像が充分にハネてないように感じてしまったからだ。作品から感じた面白みは、映像よりもコンセプトだったり多層に織り込まれた皮肉やユーモア混じりの問題提起だったりのほうが勝っていて、終盤になるほどセリフに頼りすぎではないかとも思う。
しかし間違いなく刺激的で、いろいろ考えさせられる作品ではあり、しかもこの映画について語られている言説がぞれぞれ微妙にベクトルが違っていて、観る側の価値観や先入観をあぶり出すような仕掛けになっている。この映画のどこに感じ入ったり、ひっかかったり、わがことのように感じたりするのか、結局は自分と向き合うハメになるのは、劇中のバービーやケンともシンクロする。
素晴らしいと思ったのは、クソバカ集団であるケンたちの代表としてライアン・ゴズリングとシム・リウが対決するバカげたミュージカルシーンで、戦ってるうちに通じ合ってしまうまでがわずか一曲の中で表現されていたこと。あの場面が古典ミュージカル『オクラホマ!』の「ドリームバレエ」の引用であることはグレタ・ガーウィグも明かしているが、「ドリームバレエ」のシーンは心の迷いからひとりの人間のアイデンティティが分裂する様を描いていて、いわばこの映画のケンたちも同じアイデンティティから生まれたバリエーションにすぎないと言える。
それはバービーたちも一緒で、マーゴット・ロビーの定番バービーだけが、バリエーションのひとつであることを捨てて有限の命を持つ人間になろうと決意する。正直、人間ってそんなにいいものか?と思ってしまうし、誰もが違っていてそれでいいというメッセージ性に100%ポジティブに共鳴できるわけでもないのだが、人生の次の段階に進むためにアイデンティティの根底から揺らぐような変化を受け入れなくてはならない局面が訪れるというのは心底その通りだと思うし、この映画の表向きの明るさとは裏腹に、選択には常に伴う辛さと哀しみを作品から感じられたことが自分にとっての一番の魅力だった。
同じように感じた人がどれだけいるかも知らないし、それが自分ひとりだったところで構わない。そういうことを伝えている映画でもあると思っている。
女性なら共感だらけ
観る前からフェミ路線と知ってはいたので、そこまで抵抗なく観られた。ケンがくそださファションに身を包むのも笑えたくらい。
ルッキズムやら性差別のあれこれ、潤滑になるよう女性たちが配慮していることにほぼ気の付いてないメンズたち。
現実世界だってイラつくわけだけれど、アメリカでもそうなんだなと妙な親近感を覚えた。
とはいえ女性男性どちらかが正しいってオチではなく、歩み寄って妥協点を探るのにはホッとする展開。
女子が夢の世界から出ると婦人科検診なのか~生々しいな。自分のボディに自分で責任と意志を持つということなんだろうな。
バービーについて学べた
女性の社会進出を肯定しながらも、行き過ぎた女性優位社会に問題定義があり、とどのつまり、社会的には男も女も無く個人の能力を認めながら自分らしく!という理解が正しいか。
行き過ぎた昨今のダイバーシティを説くものでないのが良い。個人的には「君があっての僕なんだ」で居たいのだが甘えが過ぎるのか?🤨
映像技術や世界観が斬新。
何だかんだそこそこ楽しめた。
とりあえず、フェミニズム作品と言われてるし、もちろん制作側もそのつもりで作ってるんだけど、結局フェミニズムに限ったことではなく社会的弱者にスポットライトを当てていて、取り上げられてるのが女性のことだけではない。
明言されてはいないが、恐らく障害者や同性愛者など、社会運営の中心=若くて健康な男性以外の「はみ出し者」扱いされる男性や、社会のおかしさに気付いて反発する男性、「男らしさ」(アメリカでは特に筋肉)に悩む男性の苦しさも描かれている。
ここまで深堀りした作品あったか?というくらいゴリゴリのフェミニズム作品とも言えるけど、中でもアメリカで近年問題にされている「有害な男性らしさ(男はこうあるべきとする世間からの押し付けや無意識の思い込み)」への焦点がかなり強い気もします。
見た目は華やかで楽しげだけど、テーマはかなり現実的で重い。
女性差別を取り上げた作品で、しかも女性の地位が低いことすら理解できない人も多い日本では絶対ウケないだろうと思ってたけど、予想通りの評価(2024年現在★3.4)。
内容をほとんど理解できないまま、認めたくない現実を突き付けられてキレてる人も多そう。
また、演出としても、映画っぽい部分と舞台調(何もかも大袈裟)の部分とが混じり合っているので、苦手な人は苦手だと思います。バービーランド(ケンダム)のシーンなんか特に、大人がマジになってやってるお遊戯会の空気。
加えてコテコテのアメリカンコメディ(何もかも大袈裟)が入ってくるので、フェミニズム作品じゃなかったとしても、日本ではある程度評価が低くなりそうな作風。最後の方なんかもう何だコレ?コメディというより意味不明すぎて笑えます。
ミュージカル?コント?まじで何なんだよコレ???
でも、そういうのが好きな人は楽しめると思いますし、テーマがハッキリしているから、そこを「よく表現したな!」と評価できる人もいると思います。
あとは圧倒的に美術点。色にかなりこだわって作ったそうですが、色使いが素晴らしいのは間違いない。
自分はバービー人形とは縁もゆかりも無い生活をしていたけど(多分実物を見たことすらない)、作中で説明があるのでチンプンカンプンってことにはなりません。
バービー人形が大好きだった人達(今も好きな人達も)は、小ネタも拾えてより楽しく見られるのでは。
主演のマーゴット・ロビーがいつもよりやや老けて見えるのに、スタイルはバービー人形そのもの(不自然に綺麗)なのも、よくできている。この設定だったら顔もCGでピッカピカに整えそうなもんだけど、多分わざとなんでしょう。
今回が「やや老けて見える」のではなく、通常がこれで、他の映画に出る時はよっぽど塗りたくられてるんだろうな。他の俳優もそう。プライベートの写真(メイク室での1枚とか)を見ると、男女共に思ってたより老けてるなぁと感じる。でもそれは逆に、映画や雑誌、人目につくものなら何でも、今の時代は若々しく、シミや皺を消し、時にはCGで胸を大きくされたり贅肉を消されたり筋肉質にされたりして、作り込み過ぎてるせいで落差が激しくなっているだけ。
他の映画で俳優の肌の質感やボディの皺が気になったことはほぼないが、本作ではあえてバービー人形=「不自然な美しさ」に対抗して、人間の自然な状態に近い部分を残したのではないかと思います。この話の流れでピッカピカじゃ不自然ですよね。
その他、表現が結構細かくて、序盤のケンVSケンのケンカ(おっと…)の時、横からアイスを差し出されて「アイスは後」と押し退ける時、手とアイスが当たったはずなのに、プラスチックが当たったようなコンッという軽快な音がする。
その後バービー家でのパーティーシーンでも、様々なドレスを着て踊るバービー達を見ながら、ケンは何も言わないが、隣のケンの服をチラッと見て嫌そうな顔をする。
バービー人形はあくまで「女の子のため」に「女の子の理想」として作られた遊び道具であり、ケンはあくまで「おまけ」で、アイデンティティはなく、関心を持たれないために服のバリエーションもほとんどない(だからバービーの気を引くこともできないとケンは思ってる)、ということなんでしょう。
バービーもバービーで、実は「女の子の(目指すべき)理想像」を押し付けられているだけで、アイデンティティはない。毎日やることは決まっていて、永遠にそれを「し続けなければいけない」。そういう存在だから。
それに疑問を持った途端、空は飛べなくなるし、常につま先立ちだったバービーの足が直角になったりと、何もかもうまくいかなくなる。
バービーランドは夢の国。現実は見ない。見ない方が幸せ…らしい。
現実逃避をしていた人が現実に気付くと、今まで夢を見て良い気分でいれば良かったものが、そうもいかなくなる。
自分の実力がなければ他人の助けだけではどうにもならなくなるし、自分を成長させようという気がなければ置いていかれる。夢を見ている間に世間に取り残され、自分で自分を成長させる術もわからず、負のスパイラルにハマって堕落していくというのが、わかりやすく表現されている。
バービーが人間界で男にお尻を叩かれるシーンも、現実にアメリカであった事件。
生放送中、リポーターの女性のお尻を後ろから走ってきた男がニタニタ笑いながら叩き、大炎上した。後にこの男は会社もクビになったとか。アホだなあ。
女性の憧れ=男性の理想の女性像(が行き過ぎたバージョン)であるスタイル抜群のバービーが、人間界でずっとセクハラされ続けるのもリアル。
こんな下品な奴本当にいるのかと思っていた時期が自分にもあったけど…若い頃たまたま美人の女友達と街を歩いていた時、少し離れるとすぐ変な男に絡まれていて、でも友達の対応も馴れたもんで、何だか可哀想になった。
男同士でつるんでいては見えない世界があり、それを見ないまま作ったのが今の社会なんだなと。
ライアン・ゴズリングのライバル役としてシム・リウが起用されていたけど、彼はコロナ禍でのアジア人差別に対して色々な人が「差別良くない」「自分も受けたことある」「本当に悲しい」みたいな無難なコメントをしているなか、唯一女性に対する差別に言及していた。
「アジア人同士でも『男は性的対象として見られないが、女は性的に見られているから女の方が得をしてる』などと言う男がいるが、ありえない。女性も白人が定義したアジア系の女性らしさ(=娼婦)のイメージに苦しめられている」とハッキリ男女の受ける差別の形が違うことや、アジア人女性が受けやすい差別について言及し、きちんと自分の意見を持っていた。
何となく時代の流れを見て、好感度を上げるために「差別はダメだと思いまーす」程度なら誰でも言える。
今まで良かったことが時代の流れでダメになったのではなく、昔からダメだったのに罰がないからやり放題だったことに世間が気づき始めた、というだけのことを、理解している人が意外と少ないが、シム・リウの発言を見ると、しっかり世間を見ようと努力し考えている人だなと思ったし、本作の出演者が発表された時、だから彼が起用されたんだろうと思った。
上に書いた「有害な男らしさ」についても発言されており、普段からよく人を見ているのか、本作でも無知なフリをするバービーに「上から目線で教えてやる」ケンの演技が板についてます。
また、マーゴット演じるバービーの「私は冒険系じゃない、定番のバービー」という台詞も面白い。自分は「普通」だから、何もできない。そういうタイプじゃないからしない。困難を自分で何とかするなんて私には無理、我慢してた方がマシ。自信がない人は大抵こういう考え方をするし、女性は特に自信を持てないようにされてきた。
まさにこういう考えから、フェミニズムに反発する女性も多いのでは。今まで受けてきたのと同じ仕打ちには耐えられるが、その仕打ちを無くそうとするフェミニストのせいで女性全体が逆恨みされ矢面に立たされるのは許せない。数十年後、そのフェミニストのおかげで得た権利や立場は、当たり前のように自分のものにするにも関わらず。「時代の変化」などと言いながら。
時間が経てば自然と変わるかのように言われるが、世の中は勝手には変わらない。誰かの努力と犠牲で変わってきた。
夫が死んだら妻も連帯で殺されたのも、嫁いだ先で夫の父親に「味見」されるのも、女を政治に参加させない法律も、誰かが声を上げ、時に殺される人もいながら、それでも努力したから無くなった。
本作では決して女性をただの被害者のように描くのではなく、また女性だけが被害を受けているように描いてもいないのがまた素晴らしい。
男性には男性社会のしがらみがあり、囚われている「男性らしさ」があり、女性側も男性のことを理解する必要があることをしっかりと描いている。
フェミニズムは女性の権利だけを守るものではなく、フェミニズムを突き詰めれば結局、女性と同じように男性に押し付けられてきた社会的な概念があり、互いに縛られている偏見や無意識の差別意識を皆がなくさなければ、本当の「人権」などどこにもないということをきちんと理解している人が作ったことがよくわかります。
逆に言えば、ここまで人権や偏見、差別に関して深堀りしたことにより、そういった知識がフワーっとしかない人、フェミニズムを勘違いしている人には、言いたいことがほとんど伝わってない可能性が高いのが残念なところ。
ちなみに本作、アカデミー賞で監督や主演のマーゴットはノミネートすらされず、何故かケン役のライアン・ゴズリングだけがノミネート。これにライアンがドン引きするという笑えない話があります。
本作で伝えたかったことがまるで伝わってねーじゃん、と不快な表情を隠しもしなかったライアン、こりゃ株が上がるね。
まぁ、個人的にもエンタメというより教科書的な価値の高い作品だと思うので、面白くないという人が多くても仕方ないとは思います。が、アカデミー賞は過去にも当然真面目な社会問題を扱った、面白みは全くない作品を受賞させてきているし、むしろヒーローもののような完全エンタメ作を滅多に受賞させない方向性から見ても、こういった「教科書的」作品こそ注目してそうなもんだし、注目されればそれだけノミネートの可能性も高くなりそうなもんだが。
マーゴット・ロビーの演技力だけでいうなら、確かに「良すぎる」演技を見せ付けた作品はもっと他にあるとは思う。ただ、あれだけ注目されていた作品にも関わらずノミネートすらされないのは、本作の演技に特別何か問題があったのか?
監督も、こういった作品はそもそも作られること自体稀であり、かつこのテーマで作るにあたり男性俳優を集めるだけでも大変だったろう。
こんなに現在の社会問題をわかりやすく、データを元に緻密に作り上げた作品は現状、他にないと思うし、大抵こういうテーマだと感情に訴えるだけの作品になりがちななか、安易にその道に逃げなかったかなりの功労者だと思うけど、何故ノミネートすらされなかったのか気になるなあ。
エンタメの皮を被ったシリアス映画…でもなく、そもそもエンタメの皮を被ってもない、普通にシリアスで重いテーマの作品なので、間違いなくバービーで遊ぶような小さい子供向けではないです。少なくとも小学校高学年か中学生以上かな。
子供でも、女の子だからという理由で嫌な思いをしたことがある子、そういう女の子を見た、話を聞いたことがある男の子なら、子供でも理解できると思います。
仮に親御さんで、説教臭いポリコレ映画なんて子供には見せたくない!と思っているなら、大間違い。
これからの世界を生きていく子供達が、加害者にも被害者にもならずに生きていくために、必ず必要な知識と目線です。それを自分が気に入らないから見せない、というのは、子供のことを本気で考えているとは言えないかなと。
もちろん、子供が楽しめるかどうかは別なので、退屈なら押し付ける必要はありません。個人的にもスゲー面白いかと言われたら………なので(え?)。
ただ、途中に出てくる急な「新作の鬱なバービーだよ!」が地味に笑える。
どちらに感情移入・共感しても結局…
ケンたち側にムカついても、ケン側をかわいそうと思っても
結局リアル世界の女性の立場による事になり
かといって、後半のバービーたち側に酷い!と思っても
結局リアル世界ではそれを男性がやってきたことになり…
頭の中がぐるぐる回り続けます
無敵の人予備軍の人が観たらパニックに陥ってしまう……
そんな人たちにこそ引っかかって見てほしいけれど
楽しい映画というより、道徳・倫理・保険・歴史の授業で衝撃的なドキュメンタリーを見たあとの帰り道、その日の夜みたいな
この機会が貰えたことは素晴らしいけれど、明るいのを観たい人は違うかな
ビリー・アイリッシュ「What Was I Made For? 」の唄声に痺れる
2023年製作/114分/G/アメリカ、原題または英題:Barbie、配給:ワーナー・ブラザース映画、劇場公開日:2023年8月11日。
最後、安易に主人公のバービー(マーゴット・ロビー)とケン(ライアン・ゴズリング)の恋愛成就とはしなかった脚本には、拍手とは思った。
物語的には、知的に振る舞い女をウリにしたらいけないし、感情的になってもダメ、強くなくてはいけないがそれを表に出してもいけない、妻母としては勿論仕事もきちんとすべき、みたいなニュアンスで、現代女性の生き辛さを訴えていたのが、家庭を持った娘を持つ父親として、ずいぶんと身につまされた。かつては、お嬢様はお茶入れメインで給料もらえてたらしいし、男たちも仕事と家庭を両立できてなかったのに。
映画に実名で登場して驚かされたが、マテル社は1945年設立でカリフォルニア州エルセグンドに本社を置く米国を代表する玩具メーカー(2023年5.4billion US$)。バービー&ケン人形の他にも、セサミストリートや機関車トーマス関連商品も扱ってるらしい。バービー人形(娘のバーバラにちなんだ)は、創業者の妻ルース・ハンドラー(後に社長、1916〜2002)が、映画にあった様に当時のあかちゃん様の人形とは異なるものとして、考案されたとか。
ミュージカル仕立ては楽しみであったが、多くの曲が自分には今ひとつに感じてしまった(ライアン・ゴスリングがダンスも歌唱も上手かったのには感心させられたが)。主人公のお悩みシーン及びエンドロールで使われた、ビリー・アイリッシュ&フィニアス・オコネルの「What Was I Made For? 」には、内容的にも映画にピタリと嵌り、素晴らしい唄声に心を揺さぶられ、痺れてしまった。
監督グレタ・ガーウィグ、製作デビッド・ハイマン 、マーゴット・ロビー 、トム・アカーリー ロビー・ブレナー、製作総指揮マイケル・シャープ 、ジョージー・マクナマラ、 イノン・クライツ 、コートニー・バレンティ 、トビー・エメリッヒ 、ケイト・アダムス、脚本
グレタ・ガーウィグ 、ノア・バームバック、撮影ロドリゴ・プリエト、美術サラ・グリーンウッド、衣装ジャクリーン・デュラン、編集ニック・ヒューイ、音楽アレクサンドル・デスプラ、音楽監督ジョージ・ドレイコリアス、視覚効果監修グレン・プラット。
出演者
バービーマーゴット・ロビー、ケンライアン・ゴズリング、グロリアアメリカ・フェレーラ、変てこバービーケイト・マッキノン、アランマイケル・セラ、サーシャアリアナ・グリーンブラット、大統領バービーイッサ・レイ、リー・パールマン、マテル社CEOウィル・フェレル、最高裁判事バービーアナ・クルーズ・ケイン、ノーベル物理学賞受賞バービーエマ・マッキー、お医者さんバービーハリ・ネフ、売れっ子作家バービーアレクサンドラ・シップ、ケンキングズリー・ベン=アディル、ケンシム・リウ、ケンンクーティ・ガトワ
ケンスコット・エバンス、マテル社重役ジェイミー・デメトリウ、アーロン・ディンキンスコナー・スウィンデルズ、弁護士バービーシャロン・ルーニー、外交官バービーニコラ・コーグラン、報道記者バービーリトゥ・アリヤ、マーメイドバービーデュア・リパ、ナレーターヘレン・ミレン、ケンジョン・シナ、ミッジエメラルド・フェネル。
バービーランドに現実が入り込むとき
あらすじ:
完璧な毎日が続く“バービーランド”に暮らすバービーたち。けれどある日、突然「死」や「セルライト」など現実的なワードが頭に浮かぶようになり、主人公のバービーはその原因を探るため“リアルワールド”へと旅立つ。そこでは想像とは違う現実が待ち受けており、彼女とともにやってきたケンもその世界の「男性優位社会」に影響されてしまい…?
感想:
バービーランドは、ちょっと奇抜だけど「きっとこういう世界なんだろうな」と思いながら見ていた。ピンクに満ちた日々や、バービーたちの完璧なルーティンも、その中ではちゃんと成立していて、見ていて楽しかった。
男性社会はああいう風刺の仕方になるんだなーと感じたし、それをバービーランドに戻していくのが、またある意味リアリティがあって、でもどこか滑稽でもあって。
ポップで明るい見た目に反して、するどい皮肉が潜んでいて、最後までただのファンタジーとは言いきれない作品だった。
ジャスティスリーグのザックスナイダーカット
ジャスティスリーグのザックスナイダーカットを真剣に見ているような気分になった。
そりゃ男が劣勢な社会で生きてきたケンが現実を知れば絶対そうなるよな、という感想。
こういうテーマで映画を作るのは、今の社会で大切だとは思うだが、作り手のニヤニヤ顔がどうしても浮かんでくる。
結局女性優位の社会を取り戻したかっただけなんじゃないの?って思ってしまった
バービーランドが正しいとは思わないし、
ケンランドも正しいとは思わない。
ケンたちの、「ケンそのものをみて」という主張も分からなくはない。が、それでケンランドを作ってしまうのはよくない。
とはいえ、バービーランドも正しくはなかったことが、現実との差異で証明されたわけで、
バービーランドを取り返したよ、ヤッホー!なんて、ちょっとダメじゃない?と思った。
結果的に、共存しよう!みたいな、現実とは権力が逆になってる!みたいな終わり方をしたが、
要所要所のシーンで見える女性仕草がちょっとむず痒かった。
憲法改正でマーゴット・ロビーバービーは喜んじゃダメでしょ。
もうよくわからなかった。ほんとによくわからなかった。
ギャグなのか?シリアスなのか?
フェミニズムをやりたいのか?バービー人形の物語をやりたいのか?
でも笑えたので万事OK!
息苦しい
残念ながら私にはサッパリ…早々に退屈になってしまった。アイデアは良いと思うし、世界観も凝ってて新鮮だけど、映画として面白いかと聞かれるとうーんて感じ。
アメリカって、早く自立した大人になることを求められたり、可愛いよりセクシーが正義だったり、ステイタスとかヒエラルキーとか、人種、性別、宗教、色々直面しなきゃいけないことが多くて、よけいに「自分が何者か」っていうことに疑問や罪悪感持ちやすいのかな。勝手なイメージだけど。成功すれば大きいけど、ある日突然、容赦なく切られてすぐ無職になるし。
なんか書いてて「アメリカンビューティ」思い出した。なんか息苦しいのよ。
日本の女性って、30過ぎても好きな人はパステルピンクのパフスリーブワンピ着てるし、シルバニアファミリー集めて持ち歩くし(専用の透明なポーチまで100均で売ってる)、可愛いものが好きとか、少女っぽいものをずっと内包してる感覚ってふつうにあるんじゃないかな〜と。私がのほほんと生きてきてしまっただけかもしれない。だから刺さらないのか?(汗)女性だから、見ていて全部身に覚えはあるし、分かるわ〜って頷くところはたくさんありましたが…
現実と向き合って自分を認める作業は確かにしんどいが、映画では独特の窮屈さを感じました。
バービーが泣きじゃくるとこは好き。
まっさらな、ありのままのバービー。抱きしめたくなる表情がとにかく印象的。同時にありのままの自分も抱きしめて全肯定したくなります。
バービーも悩み、ケンも悩む、人生は葛藤の連続・・
1959年にマテル社から発売されたファッションドール、バービーは65年の歴史、当時、日本はアメリカに比べ人件費が安く、繊維産業が盛んで人形本体と衣装とをまとめて発注できるという理由から製造は日本だったそうだ。家内も幼いころ3体持っていたそうだ。
冒頭のバービー人形発売で子供たちが幼児の人形を打ち壊すシーンは「2001年宇宙の旅」の道具に目覚めた人類を彷彿とさせるシーンへのオマージュか、余りにも衝撃的で思わずどんな映画かと身構えてしまったが、バービーランドのファンタジックで美しい世界観には酔いしれました。人間界の男性優位ぶりにケンが刺激を受け女性が上位のバービーランドの乗っ取りを企てるが何とか和解、バービーとケンはロスに戻ったようだが人間なんかにならない方が良かったでしょうにと複雑な心境・・。各賞ノミネートも納得、ほろ苦く美しいファンタジーでした。
先手を打とう
こないだDVDで観ました💿
バービーを演じるマーゴット・ロビーは相変わらず群を抜いた美しさ😀
今回は人間界に戸惑いながら、自分の存在意義を見つめ直す感じでしたね🤔
初めて流す涙も印象的。
本当にぶっちぎりの金髪美人ですが、それだけではない、多彩な表現が出来る女優さんです👍
一番目立つケンにはライアン・ゴズリング🙂
バービーの気を引こうと頑張る彼ですが、基本空回り。
終盤には彼の逆襲とも言うべき展開になり、ワイルドに。
ただそれでもどこか笑える、ドジキャラな面があるのがポイントですな🤔
シム・リウらと踊るダンスシーンのクオリティは見事でした👍
公開当時、かなりの興収を上げたと記憶してますが、終盤に男社会で生きる女性の心情にフォーカスした場面があり、それが共感を呼んだのでしょう🙂
本当は映画館で観たかったのですが、男1人で行くのが小っ恥ずかしくて断念した作品でした😔
とりあえず観れてよかったです🎬
バービーの最後の選択にも、注目ですね👍
バビ即一切、一切即ケン。 ライアン・ゴズリング、あんたこんなに良い役者だったのか!?
バービー人形たちが暮らす国「バービーランド」で巻き起こる大騒動を描いたファンタジー・コメディ。
監督/脚本は『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の、名匠グレタ・ガーウィグ。
脚本に名を連ねるのは『フランシス・ハ』『マリッジ・ストーリー』のノア・バームバック。
騒動の原因である定番タイプのバービーを演じるのは『アバウト・タイム 愛おしい時間について』や『スーサイド・スクワッド』シリーズのマーゴット・ロビー。ロビーは本作の製作も務める。
バービーのボーイフレンド、ケンを演じるのは『きみに読む物語』『ラ・ラ・ランド』の、名優ライアン・ゴズリング。
バービーを生み出した「マテル社」のCEOを演じるのは『ズーランダー』シリーズや『LEGO(R)ムービー』シリーズの、名優ウィル・フェレル。
物理学者バービーを演じるのはドラマ『セックス・エデュケーション』シリーズや『ナイル殺人事件』のエマ・マッキー。
ナレーターを務めるのは『モンスターズ・ユニバーシティ』や『ワイルド・スピード』シリーズの、レジェンド女優デイム・ヘレン・ミレン,DBE。
妊婦の人形、ミッジを演じるのは『リリーのすべて』や『プロミシング・ヤング・ウーマン』(監督/脚本)のエメラルド・フェネル。
👑受賞歴👑
第96回 アカデミー賞…歌曲賞!
第81回 ゴールデングローブ賞…主題歌賞!
第49回 ロサンゼルス映画批評家協会賞…美術賞!
第29回 放送映画批評家協会賞…オリジナル脚本賞/最優秀コメディー賞!✨
1959年にマテル社が発売が開始。今や全世界で親しまれている着せ替え人形「バービー」。販売数は10億体を超えるというのだから、その影響力は計り知れない…まぁただ、日本だと「リカちゃん」というタカラ製着せ替え人形が覇権を握っており、バービーの存在感は薄いのだが。
日本はともかく、世界的なバービー人形の人気は凄まじく、これまでに50本以上のアニメ映画やテレビシリーズが制作されているが、実写化されるのは今回が初めて。
おもちゃの実写化ってそんなん需要あるの?なんて思うところだが、よく考えたら『トランスフォーマー』シリーズ(2007〜)だって原作はおもちゃ。過去には『マスターズ/超空の覇者』(1987)や『G.I.ジョー』(2009)なんてものもあったし、意外とこのジャンルには奥深い世界が広がっているのかもしれない。
全世界興行収入は14億ドル以上。これはコメディ映画として全世界No.1の記録である。さらに、『ハリー・ポッター』(2001〜2011)も『ダークナイト』(2008)も飛び越え、ワーナー・ブラザース史上最大のヒット作となってしまったのだから驚く。
日本ではまるでヒットしなかったのだが、これは前述したように日本ではリカちゃんが圧倒的なシェアを有しているためだろう。邦題をしれっと『リカちゃん』に変更していれば、この国でも大ヒットしていたのかもしれない。
やれフェミニズムだのWOKEだのポリコレだのと外野がグチグチ煩い作品だが、女児用玩具を題材にした映画なのだからそんなにややこしい作品ではない。メッセージ性は強いが、基本的にはバービーで遊ぶ子供も、かつてバービー人形で遊んでいた大人も一緒になって楽しめるストレートにとっても面白いコメディ映画である!!いや、マジで何度も爆笑してしまいました🤣🤣🤣
特に笑わせてもらったのはバービーのボーイフレンド、ケン。バービーの付属品として扱われる悲運のおもちゃである彼だが、『トイ・ストーリー3』(2010)にメインキャラクターとして登場し、その続編となる短編映画『ハワイアン・バケーション』(2011)では主役を務めるなど、近年再評価の機運が高まっている…ような気がする。
そんな彼がついに実写化。しかも演じるのは名優と名高いあのライアン・ゴズリングである。
本作の1番の衝撃は、「ライアン・ゴズリングってこんなに良い役者だったのっ!!?」という事。『ラ・ラ・ランド』(2016)や『ブレードランナー 2049』(2017)、『ファースト・マン』(2018)でどこか影のあるキャラクターを演じていた彼。いぶし銀ではあるが華はねぇよな〜…なんてこれまでは思っていたのだが、今回の好演を見てその印象は180°激変。頭空っぽのバカを、ここまで完璧に演じる事が出来るとは!!もう本当に本人もこういう人なのだとしか思えない。この人の資質はむしろこっち方面の役で生きるのでは?
ライバルのケンを演じた『シャン・チー』(2021)のシム・リウとのコンビネーションも抜群。この人こんなに体が動く役者だったんだ。うーん、デイミアン・チャゼルもマーベルも、役者の使い方を間違えていたんだなぁ。
バービーというタイトルであるが、はっきり言って記憶に残っているのはケンのことがほとんど。もうこんなんタイトルを『ケン』に変更するべきですやん。
家父長制と有害な男らしさのバカバカしさを、こうも見事に画として見せられてしまうと、男として恥ずかしいとかそういうのを通り越してもう爆笑するしかない。マンスプとかギターとか、心当たりがあるかも…。反省しますもうしません😢
グレタ・ガーウィグ監督の前作『ストーリー・オブ・マイライフ』(2019)は大好きな映画なんだけど、そっちは原作が「若草物語」(1868)というだけあってかなり文芸的な作品だった。てっきりそういうアーティな作風を得意とする監督だと思っていたので、これほどまでにはちゃめちゃなギャグコメディで勝負してくるとは思わなかった。しかもそれがちゃんと面白い。この人に撮れない映画はないのか!?
グレタ・ガーウィグの才能、その底知れなさには畏怖の念を抱かざるを得ない。
大変楽しめたのだが、ギャグとシリアスのアンバランスさは気になるところ。
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(2020)や『プロミシング・ヤング・ウーマン』など、マーゴット・ロビーはフェミニズム要素を色濃く反映させた作品をこれまでもプロデュースしてきている。そんなロビーとガーウィグ監督が手を結んだのだから、当然ながら本作も男女の格差や性差別に深く切り込んだ内容となっている。
そもそも、バービー人形を実写映画化しておいてガールズ・エンパワーメントを打ち出さないなんて事はあり得ないのでそこは良いのですが、ステートメントの表明があまりにストレートすぎるのはいかがなものか。
顕著なのは後半、男根主義に目覚めたケンによってバービーたちが洗脳されてしまうというシークエンス。展開としてはなかなか悍ましいのだがその描写はとことんバカバカしいという、笑いながら観ていられるシーンで急に「人間界の女性はこんなに苦しんでいるのよ!」とか大真面目にセリフで言われてしまうと「お、おう…」と怯んでしまう。
クライマックスもそうで、ケンvsケンのバカな大戦争の後に「あなたはあなた、私は私」的な正論でお話を纏められても「いやそれはわかってるんですけど…」と冷や水を浴びせられた感じになっちゃう。
忘れてはいけないのは、これはあくまでも「バービー人形」の映画化であるという点。
フェミニズムは大切な事だが、それよりも本作では〈バービー人形で遊ぶ〉とはどういう事なのかを追求するべきなのでは?女の子に”ファシスト”と罵られたバービー人形の存在意義とはなんなのか、そして次の世代にバービー人形を引き継いでいく意味とは、みたいな感じのおもちゃ論をもっと強く提示して欲しかった。
そういう意味では同じくワーナー・ブラザースが配給している『LEGO(R)ムービー』(2014)の方が、おもちゃとはなんなのかを真摯に追求していた様に思う(ちなみにこの映画、ウィル・フェレルが『バービー』とほとんどおんなじ様な役で出演しているのでまだ観ていない人は要チェック!)。
最後は人間になるというピノキオ的なオチもなんだかなぁ…。
「何にでもなれる!」というメッセージは立派だが、流石に人間は人形になれないし人形は人間になれない。そもそも、人形よりも人間の方が素晴らしいって本当にそうか?死なないし老けないし毎日ハッピーなら人形の方が良いじゃんねぇ?
第一、クライマックスで良いところを持っていったルース・ハンドラーとかいうババァ、脱税の容疑で起訴されてんぞ!信用しちゃならねぇ!!
…と、めちゃくちゃ笑える映画なのだが、少々頭でっかちさを感じてしまう。
登場人物がほぼ全員バービーとケンという、ほとんど禅の様なバカバカしいアイデアは最高なのだから、もっとそういうエキセントリックな方向に振り切って欲しかったのが本音。怒れるバービー軍団が人間界に押しかけ世界を崩壊させ、最終的に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)の男女逆転バージョンが始まるとかだったらもう花丸あげてた。
にしても、パパ活ケンとかコックリングケンとかお腹の胎児を出し入れできるミッジとか、この映画の製作陣以上にマテル社の頭はイカれているよね💫
思いの外メッセージ性強い映画
前情報で原爆風刺だったりフェミ映画と聞いていたので、あまり期待しないで見たが思ったより面白かった。
しかし女児向け玩具の話でここまで重くメッセージ性入れてくるとは思わなかった。
あくまで女児向けの映画ではなく、昔遊んだ大人たちへの映画ということなのかもしれない。
話を分かりやすくするためにやりすぎな感もあるが、女性中心社会→現実の混沌さ→男性中心社会→アイデンティティの大切さといった流れで映画は推移していくが、最初にケンを軽く扱うことで後に上手く男女双方へリスペクトの大切さを説いてると感じた。
結論はアイデンティティの話だし(軽いけど)あまりフェミっぽい香りは感じなかった。
舞台や衣装も人形世界を模してるだけあって派手ながらチープな感じが好印象だった。
タイトルなし(ネタバレ)
バービードールの世界を実写で再現というだけでも危険なのに、ヘタに男女差別の社会性を盛り込んじゃうのは失敗確定演出としか思えない。結果、極端な女社会vs男社会の対比とマーゴットロビーの大袈裟演技で予想通り撃沈。所々にバービー歴代衣装をMV風にカットインする演出がまたC級感を加速させている。『バービーは何者にもなれる存在』という創業者の想いオチも虚しく、近年まれに見るドタバタ映画として、マテル社の栄光の歴史に刻まれてしまったと思われる。バービー世界をアニメ、人間社会を実写にして魔法かけみたいなファンタジーにできなかったのかな~~残念無念。
刺さる人には刺さる
最初は可愛くて楽しくておバカな感じで始まったこの映画。もっとライトな感じかと思いきや、人間世界に行ってからが重い。おバカなキャラやシーン満載なのは変わらないけど、バービーが感じる違和感(異質なものに対しての奇異の目、女性が性的な目で見られること、など)、ケンが現実社会は男性社会でありバービーランドは男性蔑視社会だと気付くこと、男女の対立、男性社会内での抗争など、風刺が効きすぎて私は笑えず。
最後も、結局バービーランドは元通りで、ケンはなりたい職業には就けない。
そして予想外に泣きまくった。
秘書のお母さんの心の内の叫びのシーンで泣き、最後のバービーが生きる道を選択するシーンでも泣き、見終わった後も余韻で泣き…心と顔がグチャグチャ。
秘書のお母さんの言葉は、私がアラフォーのワーママで同じ立場で、日頃から感じてくれてることを言語化してくれたからかな。会社員としても母親としても求められるものが多く、日々忙しく頑張ってるけど、どれも中途半端で、私は自分らしく生きていけてる?私はこれがなりたかった自分?って自問自答してるから。
最後の「あなたは何にでもなれる」ってすごく素敵な言葉。でも、本当は「何にでもなれる可能性はあるけど、なれないこともある。」なんだよね、現実社会では。この映画で足りないなと思ったのは、その事実に気付いた後の救いかな。ただ既にもう色んなテーマが盛り沢山のこの作品に求めすぎでもある。
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