夜明けのすべてのレビュー・感想・評価
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傍に誰かが居なくても生きて行けるって思い、心の奥底に光が射すのを感じた!
連休もあっという間だったねぇ。(もっと休ませろぉ (;^ω^) )
メッチャ道路が車で渋滞の中 今日は「夜明けのすべて」を観に行った。
本作はドキュメンタリ-ドラマですね。人の心に抱く感情を上手く引き出し自然な演出させてます。その辺りは監督の前作”ケイコ 目を澄ませて”に続き見事と感じます。原作は瀬尾さんですが本とは内容が違うそうですね。
この2者のファンの方が多く来られている様でしたが、名前を全く伏せた状態でこの映画を上映したら どれ位の人が内容を理解し評価できるのか?それが知りたいのが本音です。来年も同様な作風作品の公開が有るかもですが 確実に飽きられる方向に向くのは間違いないだろうと私は感じています。
前作品のラストカットのケイコが、土手でもう辞めようかと悩んでいる時に負けた対戦相手から励まし挨拶されて グッと頭を持ち上げて土手を駆け上がる。そして夕日の中走って行く様が凄く良かった。あの空気感が本作にも求めたい所が有ったかもです。
全体的には上手く纏めた流れで、本当に自然体の中の内面的な心情表現とセリフ絡みで観ている側にこれでもかって位、静かな心の波が幾度となく来るのを感じ得ました。
★夜明けのすべて★上映119分
著者:瀬尾まいこさん(”そして、バトンは渡された”)
監督:三宅唱さん(”ケイコ 目を澄ませて”)
(MC)
山添孝俊(パニック障害、主人公男):(役:松村北斗さん)
藤沢美紗(PMS(月経前症候群)主人公女:(役:上白石萌音さん)
藤沢倫子(美沙の母):(役:りょうさん)
辻本憲彦(姉亡くす 山添の旧職場上司):(役:渋川清彦さん)
栗田和夫(栗田科学社長 弟亡くす):(役:光石研さん)
会社女子社員:(役:久保田磨希さん)
PMS(月経前症候群)、PD(パニック障害)を持つ二人の関係性と、社長や元上司の持つ身内死去による心の闇。そしてそれらを理解している会社の同僚社員の温かさ。それら総てを包み込んでいる 星空の下、夜明け前の最も暗い時の流れを感じます。
プラレタリュ-ムイベントの最後に、藤沢が読み上げる社長の弟さんが残した手帳の手記。星空の夜が好きでずっとこのままでいたいという思い。やがて明ける夜。その時が一番暗く感じると・・・。
心の奥底に抱えた闇を抜ける勇気、そしてその後の自身の生き方を説いている様に感じます。
なぜ弟や姉は死んでしまったのか。どうして彼女は海外に去っていったのか。せっかく気に掛けてくれた同僚は何故故郷に戻ったのか。最初は嫌だった職場に 今では残ろうという思い。
総ての方が抱えている心の夜に、その夜明けが 穏やかに来ますように。
そう思える温かい映画でした。
(PS:久保田磨希さん~ご活躍期待してますよ)
気になる方は、今の内に劇場へ!!
夜が暗いとはかぎらない
非常に優しい作品。
ただ、逆に優しすぎてメイン2人の“救い”へのコントラストが無くなってしまった部分もある。
藤沢が退職した会社含め、メイン2人にキツく当たる人間が出てこない。
序盤に山添が軽く愚痴ったくらいか。
栗田科学では恐らく周知されているのだろうが、そのへんも明示されないから少しモヤモヤした。
萌音さんが見せる自然体のおっとり感と、“スイッチ”が入った時のギャップは見事。
松村北斗も徐々に角が落ちてゆく変化を上手く体現していた。
エンドロールで見せるごくごく平凡で日常的な雰囲気が、全役者から感じられて心地よい。
ただ、モノローグに頼った導入や、文字でのパニック障害の解説などの表現は少々残念。
特定のシーンのためだけに用意されたようなキャラがいたのも勿体無い。
(付き添い係的な藤沢の友人や、ロンドン行きが決まってそのままフェイドアウトした山添彼女など)
黒人の息子なども、この作品にはノイズでしかないと思う。
渋川清彦や光石研もよかったが、個人的には久保田磨希演じる住川さんが好き。
手土産受け取った際の、「気を使わないでいい、でもここの大福好きだから嬉しい」は最高の対応。
同様の悩みを抱える方への肯定や、一定の癒しにはなるが、映画としてはやや物足りない。
人間がますます好きになる秀作です!
ストーリーは、激しい起伏やドラマチックなシーンはありません。松村と上白石も恋愛関係には発展しません。それでも見終わった時、改めて淡々と生きている人間が好きになる秀作だと思いました。松村はパニック障害です。上白石はPMS(月経前症候群)です。この二つの病気は、医学者が名付けたものですが、極論を言って仕舞えば、人間であれば部分的に持ち合わせているものかもしれません。ただこの症状が強い人たちがその病名で呼ばれるのでしょう。ですので、ある意味その人の個性であると言えるかもしれません。しかし、その病気のために辛い日々が続く事を考えると、ただ個性であると済ますことはできません。そんな時の解決方法はなんでしょうか。ひとえに他人を許すこと、自分を許すこと、そして自分を尊敬することだと私には思えました。多くの精神的な疾患は、劣等感が生み出している場合が多いと聞きますが、そんな時こそ自分を許すべきなのでしょう。「そんな自分で良いんだよ!」と。この作品の中では、亡くなった人間への執着を手放す大切さも訴えていますが、この場合も故人に執着する自分を許してあげたらどんなにか幸せかと思いました。人間は過去の因果を持って生まれてきて、悪い因果は消さなければなりません。それを消して幸せになって行くことが、誰しもに課せられた定めかもしれません。泥沼の中から、美しい花を咲かせる蓮花のように、人間は病気や試練や困難を乗り越えた先には、一際美しい花を咲かせられます。そんな一生を誰もが持っていると信じます。明けない闇はないと作品の中でも言われていますが、誰もが幸せになれる種子を持っているはずです。作品の中で淡々と生きる二人が、美しい花を咲かせていく姿に感銘しました。
追記 地球や太陽や星の話がとても素敵でした。
大人にこそ観てほしい
普段レビューは見るだけなのにこれは語らずにはいられなかった。
実際の病気の人のブログの言葉「生きるのがつらい。でも死にたいわけじゃない」
これがずっと観ている最中胸に刺さってた。
ひと月に数日症状あるだけだろって思われがちなPMS、死ぬわけじゃないけど死にそうになるパニック障害。2人の闇、夜明け前。交流していく過程、表情の変化、会話。
上白石萌音の爆発と落ち込み、松村北斗の虚無感、焦燥感、苦しみ。このふたりは今後日本を代表する俳優になるだろうし、この作品は2人の代表作の一つになるだろう。
登場人物全てにグッとくるセリフや表情があり、全編通して優しさが漂う映画。
彼らのファンは若い方が多いと思うけれど、これは25歳以上の方により観てほしい。皆がちょっとずつできる事はある、優しくなりたくなる映画。
ずっと余韻が残って心がまぁるくなる映画
どの人にも抱えてる何かがあって、そこに想いを馳せながら山添くん藤沢さんと一緒に私も心を緩めていった感じでした。激情をあらわにしたりドラマ的な盛り上がりをさせず表情や声色、行動の変化が心に迫って泣けました。
山添くんがじわじわと目の力を取り戻して心が柔らかくなっていく過程が自然で「気がついたらこんな顔で山添くん笑ってる…!」と私もニコニコしながら涙が。
自分の中にある厄介で手に負えないものをお互い理解しあっている。互いがしんどいなと感じてる時にさっと手を差し伸べる。心許せる関係。だけど恋愛ではない。
おそらく山添くんと藤沢さんが一緒にいた期間は半年くらいではないか。その短い間の出来事はきっと2人とも一生忘れないだろう。
自分のことを理解してくれる人がいる。
それだけで人は支えになるしあったかい気持ちになれる。
三宅監督の言う「余白」を何度も見て味わいたい。
発作を起こして会社を早退する山添くんの心もとない歩き方に松村北斗の役への潜りの深さを感じ、食べ残しのポテトチップを筒ごとかき込む上白石萌音は山添くんに心を開いている藤沢さんそのもの。
この若い2人の演技力のもの凄さ、そして共演の光石研、渋川清彦をはじめとした俳優陣が皆素晴らしかった。
ラスト近くの山添くんが「栗田科学に残ります」と言ったシーンで辻本さんと同じタイミングで泣いた。きっと私もあの世界のどこかにいて、同じように励ましたり励まされたりしているんだろうな…。
心を癒しに何度も映画館に足を運びたいと思います。ずっと余韻が残って心がまぁるくなる。こんな素敵な映画、なかなかないです。
夜明けのすべてとは言えるか?
最初、藤沢さんが主役でPMSに悩む彼女の話と思っていた。
そして山添さんと知りあい、パニック障害の彼と仕事をこなす為に相手の病状を理解して一緒に病気に向かい合う。
山添さんは藤沢さんの病状を理解して、相手を助けてあげて少しでも互いに力になる。
そして山添さんは彼女がロンドンへ転勤して、藤沢さんも田舎に介護しに帰ったとしても、彼の病状は夜明け前の手がかりを掴んで将来は明るい。というのを松村北斗さんの最初の頃の顔と最後の顔の表情の違いですべてを物語っています。だから途中から二人が主役で、最後は山添さんが主役になっていました。
けれど、私生活、仕事場、親兄弟など、まだまだ彼山添さんにはいろいろな出来事がすべて良くなるってわからないまま不完全燃焼する話でした。
上白石萌音さんの演技は良かった。松村北斗さんの演技も良かった。話は広がる話でなかったので、感動とかはしなかった。
考えさせられるかといってもどうしようという衝動もなかった。
何か訴求してくるのを映画に求めている自分にはモノ足りない作品でした。
原作とは全く違う話。
公開を楽しみにしており、小説を読んでから行きました。
小説を読んでいる間、心が震える瞬間がいくつかあったのですが、そこは全く映像化されていませんでした。
設定も変えられており、あくまで映画用になっているのかなと。
栗田金属という社名から栗田科学に。夜明けのすべてというタイトルの伏線を回収するためにプラネタリウムを持ってきたのか…?
好きだった倉庫でのシーンや、草むしりのシーンも別のものに変えられていてショックでした。
まず小説の方が元上司との距離感がリアルで共感できていましたが、今でも付き合いがある描写。
おまけに上司も暗い過去を抱えているという余計な設定…この辺からもう観るのがつまらなくなってしまいました。
大好きなお守りのシーンもただ藤沢さんがポストに入れるだけで、それに対してのアクションは全くなし。
それなら神社に行くシーンはいらないのでは?
自転車も、藤沢さんが押し付けたことになっていましたが実際は違います。そこに至るまでの過程が良かったのに、全く違うものになっていました。
おまけに母親が病気で退職するという設定も…
映画用に書き換えられててすごくガッカリしました。
原作を読んだ際、本当に松村北斗と上白石萌音がぴったりだと思いました。
実際2人の演技を見て、藤沢さんも山添くんも素なのかと思うくらい自然で引き込まれました。
症状が出るシーンは2人ともうますぎて、過呼吸のシーンに関してはこちらも引っ張られそうでした。
キャスティングがよかっただけに、脚本と設定がとても残念です………
原作を読んでいなければ、こういう話として受け入れられ楽しめたと思います。
別物のお話だと思えば、面白かったんではないでしょうか。
心が温まりました
早くも今年一番と感じることができる作品に出会えました。
三宅監督の作品はケイコ〜から見始めましたが、登場人物を俯敗で見せるのがとても心地よい作品作りをされる方だと感じてます。本作も登場人物の表情を映すというよりは、その時その場所で起こっていることを切る取ることで、しっかりと物語を紡いでらっしゃるなと思います。
題材としては藤沢さん山添くんそれぞれが抱えてる病に注目される方が多いかもしれませんが、症状というよりは病と共存しながら生活する人々の共存を描かれていて、そういうものを押し付けるような形は一切なかったです。とは言っても、自身がPMS持ちで友人がパニック障害を抱えてる身としては、苛立ちやパニック発作のシーンもとてもリアルに感じ、役者がちゃんと学んで芝居に取り入れたことが伝わってきました。
プラネタリウムの締めの言葉や、山添くんのラストの語りは、言わずもがな心に温もりを与えてくれましたが、個人的には栗田科学冒頭の藤沢さんが大福を買ってきた時に久保田磨希さん演じる先輩が掛けた言葉がとても優しいフォローで、なんてことないシーンなのに刺さりすぎて泣いてしまいました。
上映期間が終われば、サブスク配や円盤化はされると思いますが、ぜひ劇場で観て優しさに包まれて欲しい作品です。
キャラの解像度が高いようで低い。それが人生ですか????ん?
原作未読。不安障害を抱える身として何か共感できる部分はないかと思い視聴。PMSとパニック障害に翻弄されるふたり、グリーフケアの会に参加する社長と元上司、の割に掘り下げられない登場人物たちの背景に少し物足りなさを覚えたが、綺麗な映画。
PMSにあそこまで苦しめられてたら、いくら家族に血栓症がいたってピルを処方してくれないものなのか。ピルがダメだからと精神安定剤を処方されていたが、パニック障害が発作を起こした時に服用するような薬をPMS患者に一発目に処方するものなのだろうか。そっちの専門家ではないので単なる疑問だが。(主人公2人を引き合わせるキーポイントとして使いたかったのは分かる)私だったら、仕事中に眠ってしまうほどの薬なら先生に再度処方しなおしてもらうけどなぁ。そもそも、最初の辞職するまでのストーリーを急ぎ足にする必要はあったのか?
また、月に一回必ずヒステリックになる、というのも中々生理に対する解像度が低いのではないかと思った。ものすごく単純すぎる。映画として分かりやすいようにしているのだろうけど女って、PMSって、そんな単純なものではないはずだ。あ、今月はなんか平気^^みたいな演出一個でもあったらめちゃめちゃおもしろかったのにな。
主人公1人くらい背景とストーリーをもっと深掘りしてほしかった。
ただ、お友達に謝りLINE考えてるシーンの「俺パニック障害なんで(笑)」のくだりは妙にリアルで心にチクっときた。パニック障害もPMSも、受け取る人からしたら言い訳にしか聞こえないこともあるだろうし、逆に過保護にされることもあるだろうし、難しいね。
人の温かみ、繋がりに焦点を当てたせいか、細かいところにツッコミどころ、気になるところ満載で主人公たちに対する没入感はそこまでだった。
主演2人、他の俳優陣にあそこまでの演技力がなかったら、なかなかの駄作になってたのではないだろうか。なんだか奥にすごく濃いミソが固まってるのにうわずみだけ飲まされてる感覚。だが、それが人生なのだ。みたいなメッセージを込めた作品なのだろうか。みんな何かを抱えながら生きている^_^みたいな映画なんだろうか。
映像的にあの放送部の子達が撮った映像を見せられてる体なのだろうか。
パニック障害ではないからなんとも言えないが、気持ちがいっぱいいっぱいになった時帽子を被ったり、2人で読書してる時、「あとがき」のページまで読んだら本を閉じたり、終盤になって初めて会社のみんなの朝の挨拶が聞けたり、細かな演出はすごく気を使っているのは良かった。
「PMSとパニック障害って比べものにならなくないですか。」みたいなセリフもよかった。生きづらい、なにかを抱えてても比較になるものではないし、そこで一回対立があってもおもしろかっただろうな。でも、開口一番パニック障害ですか?とか、あ、僕PMSに興味あるだけなんで。とかなんかこう節々にモヤつく部分がある。
まあ、あの世界の2人が良ければいいんだけど。
と思わせてくれるくらい現実味のある世界観。なんだけどなんだか足りない、物足りないなぁ。
救われました
藤沢さんのPMS対策として作中で出てきた方法のどれも、私自身試したり、取り入れたり、失敗したりと、とても共感するもので、映画を見ながらどこか藤沢さんが”私”に思えてなりませんでした。症状の度合いや種類は千差万別で、藤沢さんとは違う症状を持つけれど、たしかにそこにはPMSに悩む”私”がいて、これからは、誰にも話せないまま孤独に症状に耐えているのではないと思うことができて嬉しかったです。
山添くんが「お互い」に違和感を覚えるシーンでは、病気が違えば症状も違い、できることできないことも違う、同じ病名だとしてもその症状は個人によって全く違う、今苦しみ悩んでいるときに他者からひとまとめに頑張ろうと括られて、ひっかかる心情が痛いほどよく分かりました。一方で藤沢さんの言う「お互い頑張ろう」も間違っていない言葉だと感じます。山添くんが藤沢さんと話すようになっても、「お互い」の件を藤沢さんに謝罪しないでいてくれて、どちらの意見・感情が正しくてどちらが間違っているかを決めない作品で個人的にすごく良かったと思いました。
山添くんの表情が晴れやかなものになっていったり食べ物を美味しいと言ったりしても、最後まで電車や飲食店の屋内に入る描写はなく、藤沢さんのPMSもなくなるわけでもない。エンドロールのその後もそれぞれ抱えて暮らしていく一人と一人がいる。
自分自身は大きな世界のなかの小さな一人であることはこれからも変わらないですが、手元に温かくて優しい光をポンと乗せてもらえた気がしました。
自分でも信じられないくらい泣けた
最初に泣いてしまったのは、ずっとカーディガン姿だった山添が栗田科学というジャンパーを羽織った場面。
そして、涙が止まらなくなったのは、渋川清彦演じる山添の元上司が、山添の言葉を聞いて顔を歪ませるカフェでの場面。元部下が自分の居場所を見つけたことを泣いて喜んでくれる元上司って…。
自分でも「疲れてたんかなぁ」とも思うが、信じられないくらい泣けた。
「ケアすることはケアされること」とは言われるが、映画に登場する誰もが、そんな風に大上段に構えて誰かをケアしてはいない。
むしろ、ケアしたかったのに、それに気がつけずに今も悔いを残している人たちが登場する。
発作に苦しむ藤沢や山添に対して、彼らの振る舞い方の自然さに救われる。
そして、藤沢や山添を面倒くさがる奴らも、勝手にアウティングする輩も出てこないことがありがたい。実際の世界の中には、そうした行為をする者も山ほどいるだろうが、そんな行動はいずれ消え去るべきもので、この映画の中では雑音にしかならないので必要ない。そのきっぱりとした演出がいい。
栗田科学のような会社のあり方は、本当に理想的だなぁとしみじみ思うが、それも、弟の自死を経験している社長の「日常的に人を大切にする振る舞い」が社員をそうさせているのだろう。
(追記:2回目を鑑賞して、栗田科学には「人にやさしく 自分にもやさしく」というポスターが貼られていることも確認。社訓も「想像する心 創造する力」で、なるほどと思わされる)
それにつけても、「知る」ことの大事さもよく伝わってきた。藤沢も山添も、互いの病気について知ったことで、わずかでも相手を助けられるようになり、ひいては、それぞれ自分の病気とも向き合えるようになったのだと思う。
山添が自転車を漕ぎ出す場面、そして、日陰の登り坂で自転車を降りて押す場面を見て、自分の病気との向き合い方を身につけてきたんだなあと感慨深かった。(ママチャリに追い抜かされても穏やかな山添、ナイス!)
話は少し変わるが、今回は、妻と一緒に鑑賞して、同じ場面でも、こんなに捉え方が違うのかという経験をした。
一つ目は、山添の部屋で、藤沢が残ったポテチをガァーっと口を開けて流し込むカット。
自分は「男の部屋でもこうした気を使わない振る舞いができる関係性だよっていう表現かな?」という捉え方をしたのだが、妻は「あぁ、あんなに食欲が抑えられないって、もうすぐPMSが発症するなぁ…」と思って見ていたらしい。
二つ目は、藤沢が、日曜日に車を洗いに出社するカット。
自分は「前回の発作の時に、山添に教えられた事が、コーピングレパートリーの一つとして、ちゃんと身についたんじゃん! これって、メンタルクリニックで否定されてた認知行動療法じゃないの?」などと思っていたのだが、妻に言わせると「生理が来る時って、急に色んな物をきれいにしたくなったりするんだよ。お風呂磨きしたくなったりさ。生理が来るとぐったりして動けなくなっちゃうから、本能的にそうなってるからかもしれないけど。それにね、ケアすることでケアされるって、物に対してもそうだからね。丁寧に洗濯物を畳んだり、整頓したりって、相手が物だけど、自分もケアされるんだから」とのこと。
…何も言い返せませんでした。
いやぁ、自分の知らないことを知るってやっぱり大事。
あと、夜明けをテーマにしているだけあって、光と陰影の対比表現はとても素晴らしかった。
「あのプラネタリウムの外にいる山添の顔の陰影がさ、太陽に照らされている地球や月みたいでさぁ…」「あの自転車を降りた坂道は日陰になっていてさ」などと熱く語っていたら、妻に「よくそんなこと考えながら観ていて、号泣できるねぇ」と呆れられてしまった。
けど、自転車に乗る山添の顔に光が当たったり、時折陰になったりっていうのが、山添の人生を表しているようで、そういう所もよかったのだから仕方がない。
けど、そういう所を語り過ぎるのがうざいのだろうなということもよくわかる。ごめんなさい。
最後に出演者について。
藤沢の友人役に、ドラマ「silent」で、主人公の紬の友人役を演じた藤間爽子、山添の恋人役に、「朝がくるとむなしくなる」の芋生悠、自助グループのリーダー役に、「さよならほやマン」の漫画家役の呉城久美など、以前に観た作品で好きだった役者が次々と出演していたのもうれしかった。
現時点で、本年度ベスト作品。
(ホントは、2回目は、コメンタリーを聞きたかったのだが、なぜかUDCASTがちゃんと起動せず、聞けなかった。同じ様な人いますか? 原因不明で困ってます…)
個を見つめる
私もPMSとまではいかずとも(そもそも諦めて診断を受けたことがない)生理前は偏頭痛と微熱に悩まされている。また、息子が軽度の発達障害と自閉症で、たぶん私自身も。今でこそ病名がつくけれど、20年30年前は、その生きづらさがただの甘えだと片付けられていた。
映画の中で藤沢さんが「病気にもランクがあるか、PMSなんてまだまだだよね」って。これを聞いて私は憤った。これを聞いてというか、この言葉を言わせた山添君に憤った。何が辛いかなんて人それぞれで、弱い、甘いと言われればそれまでだけど、姿形が違うように、好きな歌が違うように、人が人である限り同じ物を見聞きしても人が10人いれば10通りの感じ方がある。勝手に決めつけないでほしい。と同時にこれを言わせてしまった山添氏も自身の失言を感じ変わるきっかけを作ったように思う。
栗田科学の朴訥な優しさの中で出会った事で二人は救われて、二人の成長で社長も救われて、本当にそれぞれの夜明けがあった。
自分の弱さを受け入れる事、人を思いやる事で少しでも生きやすい世界になればと思える作品だった。出来る事なら、新たな1歩を踏み出した藤沢さんをこの先も見守りたい。
優しい映画、原作を読んでからもう一度観たい
大きく感情を動かされたりするということではないのですが、とにかく丁寧に作られていて、登場人物が皆優しくて温かくて、好きな映画だなと感じました。主演のふたりの塩梅とか空気感がすてきです。個人的にはあっという間すぎて、あと2-3時間あっても観られそう。
ネタバレということではないかもしれませんが、藤沢さんがみかんを食べながら歩いているのがなんだか妙によかった。原作もそうなのかな、と読んでみて、今度は夜観てみたいと思いました。
【"人に優しく、自分に優しく。そして明けない夜はない。”今作はPMSの女性とパニック障害の男性の関係性の変遷を軸に心に哀しみを抱えながらもきちんと生きる人たちの姿を優しい視点で描いた映画である。】
◆感想
・藤沢さん(上白石萌音)はPMSの為に、最初の会社を入社直ぐに辞めざるを得なくなる。だが、5年後に小さな所帯の栗田科学で勤めている。
山添君(松村北斗)は、2年前に発症したパニック障害の為、栗田科学に就職する。電車にも怖くて乗れないからだ。
ー 栗田金属の社長(三石研)や社員たちが、藤沢さんや山添君に接する態度が優しい。社長は仕事熱心だった弟をある日突然亡くし、喪失感を抱えながらも毎日一生懸命に生きている。山添君の元上司(渋川清彦)も同僚を過去、過労死で亡くしている。
故に、社長も元上司もグリーフケアに通っているのだが、今作を観ると心に哀しみを抱えた人ほど、人に優しいのではないかなと思ってしまうのである。-
・藤沢さんはPMSの症状が出ている時に、山添君がいつも飲んでいる炭酸飲料の音が気になると言って、山添君にキツク当たってしまうが、直ぐに謝る。
ー 彼女は、頻繁に会社の人達にお土産を買って来る。PMSの症状が出ない時は、他人に気を使う良い人なのである。-
・山添君は、少しづつ隣席の藤沢さんがPMSの症状が出そうな気配を察し、気分転換の為に洗車をさせる。
ー 山添君も、他人の気持ちが分かる良い人なのである。そして、山添君は彼を気遣う元上司に”今の会社で働きます。”と告げるのである。その言葉を聞いて涙を拭う元上司の姿が沁みる。-
■二人の関係は、恋愛には発展しない。但し、いつもお互いに相手の事を気遣っている。そして影響し合っている。藤沢さんは山添君に自転車をプレゼントし、山添君は藤沢さんが体調不良で早退した時に、その自転車で山添さんの忘れ物(スマホ)を以前藤沢さんが山添君の体調を気遣ってイロイロと買ってくれた時の袋に入れて持って行き、帰りに会社の皆にたい焼きを買って来るのである。藤沢さんのように。
<今作は、PMSの女性とパニック障害の男性の関係性の変遷を軸に、心に哀しみを抱えた人たちが生きる姿を優しい視点で描いた映画なのである。>
地球は動いてる。
PMS(月経前症候群)のせいで月1にくるイライラが抑えられなくなる藤沢(上白石萌音)さんと会社の同僚、山添君(松村北斗)の話。
月1のイライラがくると上司であろうと怒ってしまう藤沢、それもあって会社で居づらくなり転職、その転職先の栗田科学で何かそっけなく愛想なしの山添君と出会うが…ある日、会社で発作をおこす山添君を目にした藤沢さんは、病気は違えど同じく病気で苦しむ山添君に少しだけ歩み寄っていく…。
本作の予告や解説を見ると、パニック障害、PMSとちょっと重たそうなんて思ってたんだけど違った。
とりあえず何か説明しにくいけど雰囲気が終始いい、ここ最近使われてるフィルム?昭和の様な色合いが、この作品に良くあってて心地いい。
恋人ではなく会社の同僚という関係性だったけど、互いへの思いやりの優しさと言動には涙。「友達以上恋人未満」という言葉があるけど、どの辺りにハマるんだろう。
人との関係性やストーリー、フィルムの色といい温かい作品でした。
瀬尾まいこ原作は雰囲気が優しいので全体に好き。 これも例にもれず優...
瀬尾まいこ原作は雰囲気が優しいので全体に好き。
これも例にもれず優しい。
距離感がいい。べったりせず、程よい関係。
藤沢さんと山添くんの距離もそうだけど、栗田科学の人たちの距離感。
職場が優しくて、いい。
誰かを助けることができる、かもしれない。
静かに、淡々と。
劇中に出てくる2つの病気のどちらも体感は無いので正確には分かりませんが、
でも何かのきっかけで酷く落ち込んだりする症状の出る人は見たことがあるので、何かの病気とかを抱えながら生きている人達は居るんだろうな、と思いました。
病名の付く症状であるかどうかに関わらす、劇中の2人のように「自分を理解してくれる人」がいたら幸せだと思います。ちょっと変な自分やちょっと他の人と違う自分も「あなたはこういうとこもあるから無理しなくていいよ」って解ってくれる人。
てっきり主演の2人はそのまま恋人どうしになるのかな?と思ったらそんなに単純な話ではなかったけれど、
恋人になる前に既に「人生の相方」というか。。「自分の理解者」になってる感じは良かったです。理解し合ってても依存はし合っていないというか。ベタベタにくっついていなくても離れていてもそもそも1人ずつちゃんと1人でも生きていける上で絆はあるというか。
原作とかは何も知らないんですが、5年後くらいとかにまた再会して2人は一緒に暮らしていけてたらいいな、と思いました。
ほんわか、静かに過ぎる時間で良き、でした。
日常が淡々と流れていくようなそんな映画
自分が障害者支援の仕事に関わっていることもあり、まだ私自身も過去にPTSDを患ったこともあるため予告編で内容が気になり見てみました。
内容的にはパニック障害とPMSを抱える男女それぞれの生きづらさがありながらもお互いを少しずつ理解し、さらにそこに関わる人や環境が映し出されていき、特に大きな展開や事件が起こることもなく淡々と日常が流れていくような映画に感じました。主人公2人は互いに生きづらさを抱えながらその中で辿り着いた小さな会社はみんな優しく接してくれて受け止めてくれて、以前の会社の上司もそれを見守ってくれて、でもそんな会社の社長や以前の会社の上司も実は過去に大事な人を亡くした大きな悲しみを背負っていて、それぞれみんな何かを抱えながらそれでも少しずつ自分や相手を理解し歩み寄って生きているんだよなーとなんとなくそんなことを思いました。作品の最後的にもわりとぼんやりで2人が結ばれハッピーエンドみたいなわかりやすいものではないけど、なんかたまにはこういう映画見るのもいいよなと思いました。若干、シーン的にこれはアドリブかな?と思うとこが気になりました、松村さんがばっさり髪切られたとことか!まあ、ぜひ見てみてください!
自分ではどうしようもないことを受け入れるということ
キネマ旬報1月号で監督のインタビュー記事を読んだこと、原作者が瀬尾まいこだということで、観ようと決めていた映画。原作小説は未読。公開日2024年2月9日に鑑賞(2024年劇場鑑賞4作目)。
物語は、治療の難しい「上手く付き合っていくしかない病気(症状)」を抱えて生きる若い男女(山添くんと藤沢さん)の交流を軸に穏やかに、ゆっくりと展開していく。藤沢さんと山添くんが出会って、関わるうちにお互いを受け入れて成長していくというストーリーかと想像していたが、どうやらそう単純な話ではないようだと途中で気づく。
2人の周囲には、近親者を自死で亡くした人、介護を必要とする人(藤沢さんの母ら)が登場する。何故そういう人たちが登場したのか?。見終った後しばらく考えていると、タイトルの言葉が浮かんだ。
難治の病、老い、身内の死。自分ではどうしようもないものを抱えて苦しんでいるとき、心で寄り添ってくれる人がいると、そうした受け入れ難いものを受け入れて生きていく大きな力になる。そういうことを原作者と監督は言いたかったんじゃないのかな。
三宅監督のインタビュー記事によると、原作とは舞台設定が異なっているらしい。栗田科学というプラネタリウムを作る会社は原作には登場しないようだ。星の話、宇宙の話が出てくるので、星空が重要な意味を持っているのかと思い、星空がどこで出てくるのかを待っていたのだが、終盤にプラネタリウムの星空がちらっと出ただけ。星空それ自体は、この物語の重要な演出要素ではなかったようだ。
クライマックスの重要な演出要素は、藤沢さんを演じる上白石萌音の語りだった。星空は見せる必要はなかった。彼女の語りで十分だった。ずっと聞いていたくなるような語りだった。
難しい役を演じた松村北斗と上白石萌音の2人の自然な演技は良かったが、個人的には「君の名は。」で聞かせてくれた上白石萌音の声の魅力を再確認させられた作品だった。歌手、声優、ナレーター、朗読。彼女には、そういった声の仕事も、もっとやって欲しい。きっと長く、多くの人を魅了する名優になるはずだ。
もっと暗く重い話だと思っていたが全然ちがった。心が温まり優しい気持ちになる。相手を気づかうような気づかわないような感じの会話が良い。「パーフェクトデイズ」程ではないが日常的な出来事しか起きない。
お互いの病気(?)を知ってからの、相手を気づかうような気づかわないような感じの会話が良い。2人が友達でも恋人でもない関係なのも良い。ただの同僚だ。お互いけっこう言いたいこと言ってるのもいい感じだ
例えば、後半、日曜日の会社内での会話。ちゃんとは覚えてないが、
山添が藤沢に「何かあったらPMSのせいにすればイイから便利だよね」みたいなことを言う。皮肉やイヤミで言ったというよりは、思ったことをそのまま言っただけのように感じた。だから言われた藤沢も気にすることなく、「あっ、そだね今度からそうしよう」みたいな感じで受け流す ( ← 実際はこんなセリフ言ってません)。
藤沢も山添に、「パニック障害ってことで日曜に出勤してる」みたいなセリフを返す(ぜんぜん正確に覚えてません)。
何がどういいのか分析して説明出来ないが、「何か良くネ?」って思った。
あと、終盤の移動プラネタリウムのテントの中で、藤沢が山添と解説文を作った話が良かった。
観賞後、本屋で原作をパラパラっと見たら、映画であったような描写や会話がてんこ盛りで面白そうだった。買ってないけど図書館で予約した。
そして、2人の抱える問題が特に何か解決するわけでもない。
治っわけでも、症状が出なくなったワケでもない。PMSのときの憂うつ、イライラ、怒りは抑えられないし、パニックのときは死の恐怖を味わう。
だけど真っ暗闇に何となく微妙に光明が射したかな~?みたいな感じで終わったのが良かった。
それから、見ているうちに2人がホントに栗田科学の社員のような気がしてきた。
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