夜明けのすべてのレビュー・感想・評価
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影もあるはず。
理解しようとすること
原作未読。
評判の良さを見て劇場へ。
先日の「パーフェクトデイズ」と同じ様に、何か大きな出来事があるワケではなく、基本的にはそれぞれの日常が描かれる。
「パーフェクトデイズ」が、健常者の日常に見える毎日も、本人にとってはその「揺らぎ」の中で生きていることを描いたのに対して、本作は世の中には理解されにくい健康の悩みを抱える二人の登場人物が、それでも自分の居場所を手探りするお話…とでも言えるだろうか。
健康に悩みを抱えた方々が、いわゆる「日常」の中で生活していくのは、周りの理解が必要になる。
でも、少なくとも日本では身体の不調は隠して頑張ることが美徳とされてきたし、そもそも本人にとって「打ち明けたくない」悩みである場合も多い。
周りの人間にできることは、まずは「理解しようとすること」なのだろう。
ただ、こういう社会的弱者を描く作品って、必要以上に主人公の周りの酷い現実を強調し、その境遇を背負って本人が苦しむストーリーになってしまいがちだが、この作品はそうではない。
冒頭、本人の独白で細かく病気の説明から始まる主人公の藤沢さんに対して、説明なくただ失礼でやる気無さそうな山添くんを、我々は「コミュ障」としてレッテル貼りをする。
ここで我々観客はやはり「理解」がなければ人は簡単に他人について憶測で判断し、時には大きく傷付けてしまうことを体感する。
この主人公二人は同世代の男女だが、決して「恋愛モノ」に流れないのもありがたい。
天文学をモチーフに「夜があるから広い宇宙を知ることができる」「同じ様に繰り返される天体の動きも、決して同じものはない」といった話が、上白石萌音の柔らかな声で、日々の生活に疲弊してしまった人々に優しく響く。
このプラネタリウムのクダリが本当に素晴らしいワケだけど、聞いた話によると原作はプラネタリウムじゃないとか。
「ウソだろ?」
と驚きを隠せないほど、このラストが秀逸なのだ。
というワケで、原作を読んでみたくなる映画。
ストーリーもさることながら、もう、何しろ役者の皆さんの演技の良さよ。
主人公だけでなく、ここに関わるみんなが、おそらく少なからず何らかの苦しみを抱えている。
それでもお互いを尊重し、お互いの居場所を守っている、そんな「日常」を本当にさりげなく演じている。
ラストは当然「病気の完治」みたいな
ことではなく、それと上手く付き合いながら、生きていく日常の姿。
それにしてもプラネタリウム無しでこの話を終えた原作は、今回映画であの社長の弟が残した「苦しみの中で見いだした微かな希望」を、どう表現してるのか。
気になる。
代弁してくれている様な言葉も、抑えきれない不安も、言葉に出来ずにい...
代弁してくれている様な言葉も、抑えきれない不安も、言葉に出来ずにいる表情も、ものすごく胸に刺さる…不安も苦しさもなくなったわけではないけど少しずつ変化していく表情に自然と涙がでた。優しく温かく笑い会えるすごく素敵な映画でした!
大傑作
あまり映画鑑賞して傑作って言葉使わないけど、夜明けのすべては別。ドラマチックな展開も恋愛にも発展しない。ただ日常を優しく描いているだけなのに、こんなに心が温かくなり余韻に浸れる作品なかなか無い。そして何度も見たくなる。この作品見れば見るほど奥深く丁寧に脚本が練られてるんだなと発見が毎回ある。
特にラスト栗田社長の亡き弟が出てくる場面…どんな理由で亡くなったのかはわからないけど栗田科学、そして宇宙や天体を愛し、ずっとここにいるんだよ…って表現してるみたいでグッときた。
主演の2人はもちろん、彼らをそっと見守る栗田科学の従業員や元上司。このキャストでなければ描ききれなかったであろう温かい空間。
16ミリフィルムの映像やヒーリング的なシンプルな音楽。全てが良かった。
何回でも見たくなる名作だと思う。
人生に寄り添う作品
本作には派手な演出も劇的なシナリオも存在しません。とにかく、丁寧に丁寧に、自分の困難と向き合いながら生きていく人々の姿が描かれています。気分が落ち込んだとき、色々うまくいかないとき、この作品を見たら「とりあえず明日もなんとか生きてみるか」と思わせてくれる気がします。公開中は何度もスクリーンでこの作品の温かさに触れたいです。
主演の松村さんと上白石さんの、心の機微を繊細に表現した演技はただただ素晴らしいですし、二人を見守る方々の温かさ(特に光石研さん、久保田磨希さん、渋川清彦さん)に何度も涙腺を刺激されました。
きっとわたしの人生になくてはならない作品になると思います。
みんな抱えて、生きている
生きるのは当たり前じゃない
人は第一印象と違うんだってセリフがすべてのように思える。
主演の二人は障害があり生きづらさを感じても社会に生きてどうにかしようと思ってあそこにたどり着き暮らしている。そんな職場の人たちも社長は弟を自死でなくされ、他の人たちもなにか事情がありそう。第一印象通りではないなにかが。
気遣いしながら向き合って補いあう、今の社会には無くなったような人と人との掛け合いがとてもあたたかくしみて自然と涙が出た。
懐かしくも的確な画角が演出の妙だと思う。
主演の二人はすごい演技。パニック障害とPMS患者が見るものの胸を刺すようだ。
そして辻本役の渋川さんは泣けた。
まさに第一印象を裏切る温かさ。これまでの役の印象も手伝ってこの映画一番の落涙演技。プラネタリウム会社に残ると告げられたときの涙は美しい。奥さんが出てこないのも含めて人はそれぞれ何かを抱えて生きているし支えになりたいと考えているんだね。
自分自身の事もあって、山添パートが身に沁みた。
山添の彼女はもっと寄り添いたかったろうに…
ロンドン行きを告げたあの夜はどんな思いだったのだろうと想像するに泣けてくる。
同僚の人たちもどんな思いでプラネタリウムを見に来たのだろうか。
二人のそれぞれの選択後平和な雰囲気で世界で映画は終わる。これから先も平和に夜が来て明けて朝が来る、そんな毎日を過ごして欲しい。この映画に出会えて自分の世界も広がった。感謝。
誰かのために出来ること
地味ですが良心的な作品でした
同情はしない
カメラは登場人物の意志や行動に向けられる。
しんどい部分、
つらい状況よりも、
フォーカスされるのは意志と行動。
同情はしない。
積極的とはいえないが強い意志、
消極的ではない小さな行動にピントは絞られる。
ヘアーカット、洗車のシーンは、少しズレた意志と行動を、
ユーモアで包む。
本人たちは、
互いのトリセツを発見したように良かれと思ってマッハ50で駆け抜けて、
ダウントリム90で沈みゆく、、、
自分たちはそんなタイプの人ではなかったのに、いつのまにか半歩踏み出していた、、。
絵作りも全カット、
全力で全パートが取り組んでいるのだろう。
カメラのフレーム内は、
基本的に人物の上下左右、
奥の奥まで空間を作り、
その空間には、
富士山、電車、ニワトリ、電灯、飲み物、コンセントの位置、クッションの置き方、本等美術装飾が密度の濃い飾りを仕込み、効果音、音楽も適材適所、素晴らしい。
全体的にポジティブな言動、
OK、
そのままでいい、
ありがとう、、、、
唯一NGを出すのはダンくん、
おもしろすぎる。
率直さにハッとさせられ、
無邪気さにニヤっとさせられる。
それらを集約して、
時空を超えて照らされる光は・・・
そして夜明けが来る。
【蛇足】
満席になってるのが嬉しい。
一見、何も起こってないような、静かな逸品が確かな眼力の人たちの間で話題になっているのだろう。
料理が美味しい理由は、
味の素、グルタミン酸ナトリウム、
化学式は書けない、
が、
おもしろさのうまみ、
感動の理由は何⁈
全カット、静止画で、
化学式風に、
何が凄いか説明したい!
(もちろん、的はずれのズレてる説明)
洗車のシーン、
洗剤が蠢く窓越しの人物、
カサヴェテスのグロリアの、
車内に弾丸を撃ち込む、
窓越しのグロリアみたいだった。
アポロ13より、スペースカウボーイより、
気になった。
前作についてはyoutubeで16㍉の苦言まで話してまーす!
♪月が空に張り付いてらー、
銀紙の星が揺れてらー、
誰もがポケットの中に孤独を隠し持ってるー♪
北極星を道標に。
予告の感じから勝手に心に問題を抱える男女の恋愛映画と思っていたので、この展開は予想外。目には見えない病のことを分かりやすい表現で掘り下げていて重くなり過ぎず、かと言って決して簡単でもなくとても考えさせられる内容でした。
家庭用のプラネタリウムを作っている社員数人の小さな会社で働く、長年PMSに悩まされている藤沢さんと2年前にパニック障害の診断を受けた山添君。突然キレ出したり、発作を起こしたりする二人を周りの社員さん達が大袈裟にしたりせず、寄り添って支える。そんな日々がまるで当然の事のように淡々と描かれている。
人と人とが何かしらの繋がりや関わりを持って社会生活は成り立っているのに、世界がこの小さな会社のようになるまで道程はまだまだ遠いと感じた。でも出来る事はある。私も近くで苦しい思いをしている人がいたら、理解する事、知る事から始めてみようと思った。
エンドロールの最後までブレることなく、そしてなんといっても上白石萌音と松村北斗が自然体でめちゃくちゃ良かった。
これも難しいな
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PMSの萌音とパニック障害の松村。会社の先輩後輩の間柄。
互いの前で症状が出たことがあり、心の病気を持つ者同士、
少しずつ理解し合うようになって行く。
同じプロジェクトを担当し、ぶつかることもあったが、
互いの家を行き来するような、特別な関係になる。
とはいえ恋愛関係ではない、何とも不思議な仲。
松村には彼女がいたが、海外に転勤になってしまった。
その後の描写はないが、おそらく自然消滅したんだろう。
やがてプロジェクトは見事成功、萌音は母の介護のため退職。
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2人の主人公を取り巻く登場人物がみんな優しい。
病気に対してしっかり理解してくれるいい人達だった。
おれは彼らほど重い病気はないが、HSPではあるので、
彼らの気持ちや辛さが少しは分かる気がする。
しっかり自分と向き合って、強く生きて欲しい。
ということで共感はできるし全く退屈などせんのやが、
でも何を伝えたい映画なのかが良く分からない。
色んな出来事が、悪く言えばダラダラと描写されるだけ。
これといった目的もなく淡々と進み、オチも特に無い。
この感覚、少し前にも感じたとこなんよな。
そう、「PERFECT DAYS」を見た時と同じ気持ち。
映画って本当に難しい、そう感じさせられる映画だった。
それにしてもタイトルが謎。「夜明けの全て」って何?
本編を見たら分かるかと思ったが、やっぱ分かんねーw
優しい気持ちになりました
病気が原因で周囲と繰り返しトラブルになる人、そういう人は今自分の周りにはいないけれど、寄り添うことが必要な人は身近にいる。
観終わった後で自分にも出来ることがあるはず、きちんと向き合わなきゃと思わされました。
素敵な映画を観ることが出来て感謝です。
胃がもたれないお茶漬けの味
1 傍目からは健康そうに見えても、心と体の不調を抱える男女が自分なりに歩んでいく様を描く人間ドラマ
2 粗筋はつぎのようなところ
月経前のいらいらが起因する病気により変人と思われる上白石とパニック障害を抱え無気力に見られがちな北村が主人公。上白石が転職していた小さな会社に北村が大企業から一時的に移り同僚となる。些細なことからふたりの関係は険悪となるが互いの病気を知ったことから助け合っていく。そして・・・。
3 本作は、粗筋の内容が主軸となるが、サイドスト-リとも言うべき会社内でのお仕事映画の側面もある。そしてこのことで作品に厚みと温かさが加わった。2人が勤めている会社の社長と北村が勤めていた会社の元上司は肉親を自殺でなくしている。このことで弱者に対する眼差しが優しい。病気のある二人に対しては、あくまでも普通に接しながら能力を発揮できるようバックアップしている。同僚達も気を掛け手を指しのべてくれる。こうした関係性は、最後まで一貫している。
4 映画のテンポはほぼ同じリズムを刻み、各シーンは恬淡にして深堀りすることはなく、切りの良いところで次に繋いでいく。三宅は感情に訴えることをせず、全体的にさらりとした演出で物語を紡ぎ、見る者に安らぎを与える映画にした。
5 上白石と北村の普通っぽさと最初のおずおずもぞもぞした関係性が次第に変わっていく様と光石研の渋い存在感が好印象
6 意地悪かもしれないが、心の中では「北村がいた社員のメンタルヘルスを大事にする会社は物語だけの世界。現実世界では病気を理解 されず、不当に扱われてしまうのではないか」と思ってしまう。
心暖まる映画です。
優しい世界
みんな
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