「原作の根幹を変えて何がしたかった?」夜明けのすべて 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
原作の根幹を変えて何がしたかった?
映画の公開は、
ワタクシが映画から遠ざかっていた時だったので、
全然知らなかった。
こないだ観た「旅と日々」の三宅監督関連作品、ということで知り、
アマプラで観たんだけれど、
いきなり
雨中のバス停のベンチで動けなくなり、
あげく警察のお世話になっちゃう藤沢さん(上白石萌音)。
そんな場面、原作にあったか?
と思って読み直したけど、やっぱりない。
その後も、原作の設定をかなり変えていて、
たとえば
原作の後半で山添君(松村北斗)が移動手段として見出す自転車は、
映画では最初の方で藤沢さんがプレゼントしちゃうし、
散髪しようと最初に思ったのは
原作では藤沢さんだった(山添君にはその気力はなかった)のに
映画では山添君本人だし、
山添君の前の会社の辻本課長や元カノ千尋も、
映画ではバリバリ出てくるし、
藤沢さんのお母さんは
体が不自由になっちゃうし、
社員の子供の中学生が
ドキュメンタリ撮影のためのインタビューをしてるし、
その他諸々、
変わってないところを探した方が早いくらい。
そしてその改変が、上手くない。
* * *
中でもいちばん違うのが、藤沢さんの転職。
これはアカンでしょ。
物語の根幹に関わりますって。
この物語のキモは、
PMSの藤沢さんとパニック障害の山添君が
栗田さんの会社(社名も変えてた)に居場所を見つける話だったはず。
辞めちゃったら、その根幹が崩れる。
崩して何を描きたかったのか、問いたい。
藤沢さんと山添君のキャラも、
原作のユニークさ、面白さがかなり削られてて、
その分、つまらなくなってる。
果たしてこれは監督の意向なのか、
もしかしたら企画・プロデュースのお方がホリプロ映像事業部、
というのが関係してるんじゃないか、
という気がするのは、まったくの憶測山勘であります。
