「静かに凄い映画」夜明けのすべて mac-inさんの映画レビュー(感想・評価)
静かに凄い映画
静かに凄い映画。
見ながら幸福感が段々と馴染むように沁みてくる。
この監督の前作「ケイコ 目を澄ませて」では結構尖ったものを感じたけど、今回はとても巧みで引き込まれる。
上手に盛り上げて、ラストシーンも秀逸。とても普通で。その普通さが泣ける。
前作と同様に16ミリフィルム撮影。監督は、その質感が好きなのだろう。デジタルカメラの硬い鮮明な映像と違い、16ミリは、解像度が高すぎない、被写体と少し距離があるような、あまり語りすぎない映像が好きなのかもしれない。リアル感だったり、第三者的な距離感のある感じや、空気が写っているようなところが。
とても自然なのに、作り込みの凄さを感じる。色々と仕掛けている。それを「あたかも」でなく、さりげなく。観客に気づかれなくてもいいようなある意味奥ゆかしさ。
映画は、語りすぎない方が上手く行くことが多い。語りすぎると本質がボケてしまう。
カメラも無闇に動かすのでなく、どっしりと構えている。するとフレームの中で人間が活き活きと動きだす。
とても映画的な高揚感がある。この映画には、溝口健二も相米慎二もいるよな~と思いました。
<原作を読んでから2回目鑑賞>
原作にあったクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」の話がなかったり(版権の問題だと思う)細かい点が違うけど、一番驚くのは、クライマックスは映画のオリジナルだということ(原作には全くない)。
あのプラネタリウムの話は、とても丁寧に伏線(亡くなった社長の弟の語りのテープなど)を作り、とても自然に、原作にあったのかと思えるぐらい原作の意図を的確に「言葉」に変えて、上白石萌音のナレーションと映像で映画的なスペクタクルを演出して、映画的な深みを与えている。
mac-inさま
丁寧なコメント返信、ありがとうございました😊
まだビギナーレベルですが、私のレビューにもコメントいただけるとうれしいので、よろしくお願いします。
こちらのコメントの一部でも、構いません😅
ひなさま、共感、コメントありがとうございます。
>この作品の映像・演出・脚本…について、恐らくこれ以上深く斬り込んで掘り下げたレビューは、他に無いと思いました。
お褒めいただきありがとうございます。
私もこの映画が大好きで、昨年のダントツのベストワンでした(2位を大きく引き離して)。
今年の2月からこちらにレビューを書き始めましたが、それまで、個人ブログや、映画の仲間内の掲示板に映画の感想を書いていたのを、こちらに上げ直していました。
この映画について好きな映画だったので、個人ブログに何度か書いていました。こちらにアップするのに今まで書いたのをまとめ直して今日アップいたしました。
素晴らしい映画だったので原作も読みました。映画の雰囲気そのままで原作もとても感動しました。
ただ、プラネタリウムのシーンが原作にないことに驚きました。
これこそこの映画のキモといえるシーンだったので。
三宅唱監督の凄さを改めて感じました。
長々と書きましたが、今後ともよろしくお願いします。
※私のコメントより
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映画館で鑑賞できて良かったです。私も再上映を待ち続けて、11月にミニシアターで観ました。「プラネタリウム」は映画館で観たい、という予感がしたからです。
実はこの映画の原作には、プラネタリウムは登場しません。映画を先に観て、プラネタリウム抜きでこの物語はどうなるんだろう?というレビューも数件見かけました。
公開当時に原作ファンから賛否があり、改悪と叩かれていましたが、三宅唱監督は今まで一切言い訳をしていません。原作に登場する映画『ボヘミアン・ラプソディ』が、権利関係で劇中劇として使用出来なかったという事情は、調べ続けてやっと分かりました。
2/20のキネマ旬報の表彰式で、賞の歴史と重さで緊張している松村北斗くんを振り返りながら、三宅監督がスピーチで会場を笑わせていました。「昨日『ファーストキス』を観てきました!主演俳優に会えてうれしいです!」、ほっくんを笑顔にさせていました。
三宅監督は格闘家のような強面ですが、さりげなく繊細な優しさの持ち主です。原作者・俳優・スタッフから信頼され慕われて、『夜明けのすべて』のような作品を撮れたんだろうな、とまた暖かくなりました。
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mac-inさま
>静かに凄い映画。
>とても自然なのに、作り込みの凄さを感じる。色々と仕掛けている。それを「あたかも」でなく、さりげなく。観客に気づかれなくてもいいようなある意味奥ゆかしさ。
この作品の映像・演出・脚本…について、恐らくこれ以上深く斬り込んで掘り下げたレビューは、他に無いと思いました。
公開当時の熱が冷めた頃に、こういうレビューに出会えると、このサイトのユーザーで良かったと思う瞬間です。
実はこの作品のレビューが、映画.comのために初めて書いたレビューだったので、ほぼ編集せずに大切にしていました。
他のレビュアーさんとのコメントで、プラネタリウムとキネマ旬報表彰式について答えた内容をコメント欄にアップしたので、こちらにもコピペします。