劇場公開日 2024年2月9日

「エンドロールの動線の美しさ」夜明けのすべて Tonさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0エンドロールの動線の美しさ

2025年4月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

松村北斗くんは正直今まであまり気にしていなかった。それが、1sr kissでの彼の演技を観て良いなと思い、レビュー評価が高い夜明けのすべてを観ておけば良かったな、と思っていたところ、フォローしている方から再上映の情報をいただき、先日鑑賞しました(有難うございました!)。その後、かなり忙しくやっとレビューを投稿できる時間が取れました。

主人公達はそれぞれに病気を抱え、辛い時間を過ごしているはずなのに、見た目のストーリーは淡々と流れていく。自分の世界が狭くなってしまう苦しみ。もっと色々な選択肢があったはずなのに。もっと色々な事ができたはずなのに。それでも生きていかなければいけない。2人はそれぞれに自分の道を見出して、それぞれの道を歩いていく。
上白石萌音は徐々に仕事の選択肢が狭まっていく過程を。松村北斗はバックキャスティングで、今の状態になった過程や彼の病気の状態を映し出している。2人へのアプローチの違いが良いコントラストをもたらして、そのままだとテアトル新宿系になりそうな雰囲気や淡々と流れていくストーリーに明るさや変化を与えて飽きさせない。
ハッとしたのは、松村くんの、「自分の病気はどうにもならないかも知れないけれど、藤沢さんの事は助けられることもある」と言う言葉。自分が健常でなくてもできる事があり、その対象が他者だという事。辛さや苦しみを知っているから、気付く事ができる。優しくできる。それも人間の本質の一つだと思う。

人間関係も流れていく。だけれど、その時大切だった人を思い返して、良い出会いだった、と振り返る事ができるのは幸せだ。通り過ぎていく人と人。その中で交わるその点が、立体になり、また次に進んでいく。そのようなオブジェクトをしっかりと幾つか持つ事ができたなら、人生は充分だったと言えるのではないだろうか。

エンドロールのお昼休みの風景は良かった。何気ない日常の風景だが、これまでの過程を観てきたから感じるその大切さと愛おしさ。皆が流れていく動線がきれいだった。

あ、散髪のシーンは思わず吹き出して笑ってしまいました。笑

良い作品でした。

Ton
ひなさんのコメント
2025年5月8日

Tonさま
コメント返信ありがとうございます。

プラネタリウムとキネ旬表彰式は、レビューではなくコメント欄で触れてあったので、長目ですがここにコピペしておきます。

✎____________

映画館で鑑賞できて良かったです。私も再上映を待ち続けて、11月にミニシアターで観ました。「プラネタリウム」は映画館で観たい、という予感がしたからです。

実はこの映画の原作には、プラネタリウムは登場しません。映画を先に観て、プラネタリウム抜きでこの物語はどうなるんだろう?というレビューも数件見かけました。

公開当時に原作ファンから賛否があり、改悪と叩かれていましたが、三宅唱監督は今まで一切言い訳をしていません。原作に登場する映画『ボヘミアン・ラプソディ』が、権利関係で劇中劇として使用出来なかったという事情は、調べ続けてやっと分かりました。

2/20のキネマ旬報の表彰式で、賞の歴史と重さで緊張している松村北斗くんを振り返りながら、三宅監督がスピーチで会場を笑わせていました。「昨日『ファーストキス』を観てきました!主演俳優に会えてうれしいです!」、ほっくんを笑顔にさせていました。

三宅監督は格闘家のような強面ですが、さりげなく繊細な優しさの持ち主です。原作者・俳優・スタッフから信頼され慕われて、『夜明けのすべて』のような作品を撮れたんだろうな、とまた暖かくなりました。

✎____________

ひな
Tonさんのコメント
2025年5月6日

原作はまだ未読なので、読んでみてから映画を思い返すと新しい気付きがありそうです。プラネタリウムはそういう事なんですね。
YouTubeも観てみます。
ひなさんが、この作品を大切に思っている事が伝わってきましたが、僕にとっても良い作品になりました。重ねてありがとうございました!

Ton
Tonさんのコメント
2025年5月6日

ひなさん、丁寧にありがとうございます。内容は暗いはずなのに、淡々と見える理由は陽の光や日中を多く映し出している所にあると感じていましたが、北斗くんの表情がそれと共に少しずつ移り変わっていく様を無意識には感じていたものの、はっきりとは認識していませんでした。確かに。そう思いました。

Ton
ひなさんのコメント
2025年5月5日

Tonさま
ステキなレビューです、お待ちした甲斐がありました😃

>エンドロールのお昼休みの風景は良かった。何気ない日常の風景だが、これまでの過程を観てきたから感じるその大切さと愛おしさ。皆が流れていく動線がきれいだった。

北斗くんの表情は、月が満ちていくように、光が差す部分が少しずつ増えて行くのですが、公園の自転車では木漏れ日だったのが、エンドロールではお日様の下で自転車に乗っていました😊

>あ、散髪のシーンは思わず吹き出して笑ってしまいました。笑

北斗くんが伸ばした髪を、萌音ちやんが実際に切り過ぎてしまったので、北斗くんは本当にお腹が痛くなる程笑い転げていたそうです😅

『ファーストキス』のコメント欄で、あれこれ触れてしまったのですが…

もうご存知かもしれませんが、原作にはプラネタリウムは登場しないんです。映画館で観て欲しかった理由は、自然光の演出とプラネタリウムという大道具でした。

もう一つは、栗田科学の事務所のカレンダーです。映画の公開日の2024年2月9日を通り過ぎて3月9日のイベント開催を告知するという、さりげなく未来を表現する小道具でした。

5部門受賞したキネマ旬報表彰式のアーカイブが、YouTubeで配信されています。松村北斗さん・三宅唱監督・井上プロデューサー、3人のスピーチはオススメなので、お時間があれば是非!😉

ひな
PR U-NEXTで本編を観る