「月経前症候群(PMS)を抱えた若い女性・藤沢さん(上白石萌音)は入...」夜明けのすべて りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
月経前症候群(PMS)を抱えた若い女性・藤沢さん(上白石萌音)は入...
月経前症候群(PMS)を抱えた若い女性・藤沢さん(上白石萌音)は入社しばらくしてオフィスで症状を発症し、処方された薬の影響で大事な会議の準備作業中に眠り込んでしまった。
結果、退職。
転職した先は、東京の郊外にある児童向け科学キットを作っている町工場。
雰囲気もよく、彼女の症状に理解もあるので、もう何年か仕事を続けることが出来ている。
職場の新人・山添くん(松村北斗)は元々大手のメーカーのオフィス勤務だったようで、いまの職場のまったりとした雰囲気にやりがいを見出せないのか、まるでやる気をみせない。
そういうこともあってか、PMSの症状がひどくなった藤沢さんは、怒りを爆発、矛先は山添くんに向けられたのだが、山添くんもパニック障害を抱えていることがわかってきて・・・
といった物語で、藤沢さんと山添くんを中心にして、周囲のひとびととのやりとりを描いています。
悪いひとは出てこない。
同僚もほとんど良いひとばかり。
いいひとばかりだけれど、会社の社長(光石研)も山添くんの元上司(渋川清彦)もなにかしらの事情・心の疵を抱えている。
そういうひとたちだから、相手のことを思いやれるのかもしれない。
大きな出来事は起こらない。
最後に移動式プラネタリムという珍しい装置が登場するぐらいで、小さな天蓋に映し出される星々とそこに重なる藤沢さんのナレーションが美しい。
藤沢さんの読む解説文は、社長の弟が遺した言葉をもとにした天空・宇宙に対する思いが込められたもので、宇宙の尺度からみれば人間なんてちっぽけ。
だけど、ちっぽけで儚いからこそ尊い。
そんな大きく広大な宇宙を小さな小さなテントの内側に映し出している。
そのことが面白い。
全編やさしさに溢れた映画だけれど、その功績はロケーションの魅力に負うところが大きいでしょう。
東京の郊外・城南地区を舞台にしているが、実際のロケ地はそのまんまではない。
いくつかの場所は、設定に近い場所で撮られているようだが。
が、それら複数のロケーションが違和感なくつながれ、まさしく東京の郊外といった雰囲気を出していました。
これは、簡単そうで簡単じゃあないんだよなぁ、と思った次第。