劇場公開日 2024年2月9日

「胃がもたれないお茶漬けの味」夜明けのすべて コショワイさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0胃がもたれないお茶漬けの味

2024年2月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1 傍目からは健康そうに見えても、心と体の不調を抱える男女が自分なりに歩んでいく様を描く人間ドラマ

2 粗筋はつぎのようなところ
  月経前のいらいらが起因する病気により変人と思われる上白石とパニック障害を抱え無気力に見られがちな北村が主人公。上白石が転職していた小さな会社に北村が大企業から一時的に移り同僚となる。些細なことからふたりの関係は険悪となるが互いの病気を知ったことから助け合っていく。そして・・・。

3   本作は、粗筋の内容が主軸となるが、サイドスト-リとも言うべき会社内でのお仕事映画の側面もある。そしてこのことで作品に厚みと温かさが加わった。2人が勤めている会社の社長と北村が勤めていた会社の元上司は肉親を自殺でなくしている。このことで弱者に対する眼差しが優しい。病気のある二人に対しては、あくまでも普通に接しながら能力を発揮できるようバックアップしている。同僚達も気を掛け手を指しのべてくれる。こうした関係性は、最後まで一貫している。

4 映画のテンポはほぼ同じリズムを刻み、各シーンは恬淡にして深堀りすることはなく、切りの良いところで次に繋いでいく。三宅は感情に訴えることをせず、全体的にさらりとした演出で物語を紡ぎ、見る者に安らぎを与える映画にした。

5 上白石と北村の普通っぽさと最初のおずおずもぞもぞした関係性が次第に変わっていく様と光石研の渋い存在感が好印象

6 意地悪かもしれないが、心の中では「北村がいた社員のメンタルヘルスを大事にする会社は物語だけの世界。現実世界では病気を理解 されず、不当に扱われてしまうのではないか」と思ってしまう。

コショワイ