「普遍的なケア、宇宙を貫く光(映画の)」夜明けのすべて 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
普遍的なケア、宇宙を貫く光(映画の)
2024年。三宅唱監督。月経前の極度の心身不調を抱える女性と、パニック障害を抱える男性が、小さな教育素材製作会社の同僚になることから、お互いを思いやるようになるまでの様子を描く。症状を抱えたマイノリティ当事者の特殊な話でありながら、恋でも家族でも友情でもない普遍的な「ケア」の形を描いている。
原作小説がありながらさらに映画作品化する意味は、症状が現れる人間の表情の変化や、周囲の人々の様子を、映像として直接的に、かつ、時間経過を含めた文脈の中で、映し出すことにあるだろう。宇宙からの光を子供に説明する教材の製作(プラネタリウムの巡回)が、主人公たちが症状による生きづらさを引き受けていくこと(そしてお互いにケアしあうこと)と自然に重ねられているのも、「光」を扱う映画表現でこそ可能となっている。星々の様子が光によって把握することができるように、主人公たちの様子も様々な光の中で描かれる。もちろん、映画自体、光の投影によって可能になる「光の芸術」なのだから、この作品からは「映画の光は宇宙を貫く光だ」という強烈なメッセージを感じられる。
主人公たち二人の帰宅途中になるトンネルがすばらしい。
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